令和3年10月「奈良県南部・東部振興基本計画」について

 「奈良県南部・東部振興基本計画」について

 (本インタビューは令和3年9月21日(火曜日)に行ったものです。)


ポイント:   
  1. テーマ設定、拠点づくり、結節、インフラ整備の4つの方法で、計画の抜本的な強化を目指す。
  2. 医療・森林・雇用・観光・スポーツ・防災といった様々なテーマで取組を実施。
  3. 失敗を恐れず、成功をバネにして取組を進めていく。

 

 

「テーマを決め」、「拠点を形成し」、「拠点を結節し」、「インフラを整備する」という取組を進める

 奈良県南部・東部振興基本計画は従来の計画を見直すというよりも、抜本的に強化しようと思い策定いたしました。これをもとに、南部・東部の振興条例の制定も検討し始めています。今まではやることを羅列して置いていくような感じでしたが、1つの体系としてどうすべきかということになると思っています。やり方としては、(1)南部・東部振興のテーマを決める、(2)テーマに沿った拠点をつくる、(3)拠点を結節する、(4)テーマに沿ったインフラをつくる、この4つで進めていこうと思っています。

 

 この方法の成功例としては、医療があります。拠点として南奈良総合医療センターをつくり、拠点の結節として五條病院、吉野病院との病院間結節を実現しました。

 今後は、医療・健康の視点で地域の診療所間結節が必要です。さらに、それに加えて介護も含めた地域包括ケアシステムとして、訪問看護や訪問介護を行うためのラヒホイタヤの制度をつくろうと考えています。例えば、規制緩和が必要ですが、健康診断のデータをお医者さんに送って、オンライン診察してもらう。オンライン診察で処方箋が出たら、ラヒホイタヤが調剤薬局に行って薬を買ってきてあげるというようなシステムができないかと考えています。また、ラヒホイタヤの機能を介護や生活保護、障がい者支援の分野など、福祉の事業へも広げていきたいです。

 医療、介護と福祉があると大体生活は安心できますので、あとは便利になる生活支援というテーマがあります。これもラヒホイタヤが直接、あるいはCOOPのような生活支援部隊と連結することが考えられます。市役所には窓口がたくさんありますが、反対に、ラヒホイタヤが住民のところに行って窓口機能を担い、相談ごとがあればそれを持ち帰って、カンファレンスにかけて総合的支援をどうするか検討するような、その家族の悩み事は全部、ラヒホイタヤを通じて解決できるような仕組みを考えています。

 このように、医療から始まり、介護、福祉、生活支援というところまでだんだんテリトリーが広がってきています。

 

 もう1つの事例としては、フォレスターなどの森林環境管理制度をつくりました。これは、南部の森林を民有林で儲かったら整備するというのではなく、まずは防災のために整備する必要があり、林業として経済的なことができたらそれにこしたことはないというやり方にすると、公的な役目が入ってくるので、南部で大きな面積を占める森林の環境管理は条例をつくって行いました。

 

 

南部におけるテーマごとの取組

(働く場)

 若者が流出していますから、働く場所をつくろうと思います。これは条例をつくったから達成できるというわけではなく、働く場所そのものをつくる必要があります。働く場所である工場だけでなく、人が来る観光の拠点をつくりたいと思います。

(観光と交流)

 テーマを観光と交流にすると、拠点をつくるとそこだけに行って帰る場合もありますが、それぞれの拠点を結節することで周遊観光につながります。吉野だけでなく南部全体を大きく売り出すことを考え、南部は他の地域も全部行くところがあるというようにしたいと思います。森林と同様、観光も雇用の場をつくることに大きな意味があり、そのためには投資をして環境を整備しなければいけないと思っています。

(スポーツ)

 スポーツをテーマにすると、橿原にスポーツ拠点をつくります。五條や下北山にはスポーツ拠点があるので、それを大きくするというテーマもあります。スポーツは観光ほど結節することはできませんが、スポーツ拠点が南は下北山・五條に、北の方は橿原にもありますといった配置が焦点になってくると思います。

(防災)

 県の力の入れ具合を考えると、大規模広域防災拠点は大きな拠点になります。大規模広域防災拠点では、ゴルフ場を買収して谷に土を埋めて、2000メートルの滑走路をつくろうと考えています。緊急防災・減災事業債というのを、総務大臣からやっていいよとのお話をいただきましたので、来年度から着手できたらと思います。これは奈良県の南部だけではなく県北部、和歌山県や三重県にも大きな影響力のある防災拠点になり、空からの結節ということになろうかと思います。

 

 

 

東部におけるテーマごとの取組

(医療)

 東部と南部では、地理的な位置が異なります。東部は山添などの北の方を含みますので、医療をテーマにすると宇陀や桜井では済生会中和病院と宇陀市立病院が軸になります。それらを拠点にして連携できるかということが検討課題です。また、東部の医療では縦に走る医療圏が視野に入ってきます。両方の病院を軸におき、ラヒホイタヤや包括ケアを行っていこうと思います。

(働く場)

 働く場所をテーマにすると、 名阪国道の針インターに出ることをねらって、県道38号線を中和幹線から延ばして、そこから近い場所に工場立地を整備しませんかという話をしています。これは、京奈和自動車道から少し離れて針の方へ行く物流になると思います。宇陀や桜井からも通えるということになれば、東部での若者の雇用も出てきます。森林の雇用は従来からありますが、物流があると便利さが出てきますので、県道38号線や中和幹線道路を延伸して、横や縦に繋ごうかということを考えています。

(観光)

 また、観光をテーマにすると、宇陀市のまちづくりということは1つのテーマになってきており、榛原駅の南側にそのまちをつくることを検討しています。ホテルや病院などの拠点があれば、宇陀市内各地や南部との結節、中和幹線の西の方との結節、あるいは曽爾・御杖との結節ということになります。曽爾・御杖は屏風岩やみつえ高原牧場というような観光拠点がありますので、曽爾・御杖に来て宇陀市に寄るということが可能になります。そのためにも松山地区に観光拠点をつくる必要がありますが、榛原駅周辺にまちの中心がないとなかなか進まないということになります。

 

 

 

失敗を恐れず、成功をバネにして取組を進めていく

 このように「テーマ」と「結節」といったやり方で南部・東部地域振興の基本的な枠組みをつくろうと思っています。テーマや目標をただ並べるだけではなく、何に力を入れるか。拠点をつくると力を入れる場所が決まってきます。拠点をつくれば人が来ることになるというような思想に進化しようと思っています。

 何事も、やってみないとうまくいくかどうかは分かりません。南部の医療において南奈良総合医療センターを拠点として病院間結節したときも、統合すること自体が他の地域では難しいので良いモデルになったと言われる結果になりましたが、いろいろと助けてもらってスムーズに実行できました。そして、このような良い医療体制がコロナ禍でも活躍してくれています。拠点があると広がる可能性があるという考えが、このように進んできた感じがありますので医療の成功を一つのきっかけ、バネにして進めようかと思っています。森林も、フォレスターを派遣する拠点という意味の拠点になりますし、防災も大規模広域防災拠点をつくってというような、いろんな意味で拠点と結節というパターンが広がってきてます。福祉においても、医療の延長で健康があり、健康があればあとは若者の雇用ということになります。雇用の拠点としては、工場や観光ということになっていきます。そのように拠点という概念で進めるというのは、ここ数年の間、南部・東部地域振興の取組傾向になっていると思います。


 失敗ばかりだとめげてしまいますが、成功の方が多いです。南部でも頑張ればできると思います。五條のような大きな市だけでなく、東吉野のように取り組んでいる市町村も伸びると思います。県がまとめていくことができれば、南部・東部のテーマについては、スタンスが良くなる気がします。失敗もありますが、このようにチャレンジするというのは多少なりとも良いところがあると感じます。これからも、テーマを見つけて続けたいと思います。