令和2年11月「土地利用のあり方とまちづくり」について

◆「土地利用のあり方とまちづくり」について
 (本インタビューは11月5日に行ったものです)


ポイント:   
(1)土地の利用を経済に向け、次の世代の役に立つ、投資に使える土地にしなければいけない。
(2)そのためには、土地利用とまちづくりは一体的に考える
(3)市町村とビジョンを先に作成して、それをマスタープラン化する。
(4)「大和平野中央のまちづくり」は新しいまちづくりのシンボリックなプロジェクトになる。

 

 

 

 

◎土地利用とまちづくりは一体的に考える知事写真
   奈良県の土地利用、まちづくりをどのようにすればいいかということを県で勉強していますが、課題がいくつかあります。
 1つ目の課題は、ベッドタウンとして発展したため、住宅が圧倒的に多い土地柄であることです。土地が商業や工業などの経済活動に使えないことは、経済活動が弱いということであり、雇用が弱いということです。それはベッドタウンの特徴で、若者が逃げて出生率が下がっていくことが顕著に現れているというのが見て取れます。土地の利用を経済に向け、次の世代の役に立つ、投資に使える土地にしなければいけないということは、土地利用から見た課題になっています。
 2つ目の課題は、用地取得が難しいことです。最近聞いた話では、奈良は全国で3番目に入っていると言われるほど、用地取得が難しい場所だということです。
 3つ目の課題は、これからの発展を考えると、土地利用ができないと、“まち”もできないということで、土地利用のあり方とまちづくりを一緒に考えましょうということです。これが現在の課題だと思います。今のままでは、土地の生産性が低く、農地の跡取りがいない、“まち”がうまく展開できない、住宅ばかりで空き家も増えるというように、これまでのまちづくりでしんどかったことがどんどん生じている状況ですので、“まち”のリニューアルをしなければなりません。そうすると、リニューアルのための土地の取得が必要になります。そこで、まちづくりの計画と土地利用の計画を一体的にしようとすると、地元の市町村と一緒に考えるしかありません。地元の市町村と「土地利用ビション」を作って、それをマスタープラン化していきましょうということです。これは大変斬新なアイデアです。 
 今まではマスタープランに基づきゾーニングして、その中でどのように用途区域を決めるかという順番でしたが、奈良県のまちづくりを見てみると、ゾーニングどおりに土地取得ができないことを反映して、うまくいかなかった面がありました。
 土地取得とまちづくりを一体化すると、土地取得ができるときにはまちづくりができ、まちづくりの案のとおり土地取得ができる可能性も高いので、マスタープラン、ゾーニング、土地取得の順ではなく、用地取得と地区計画を中心にして、“まち”を考えていきましょうと転換をしているところです。

 

 

 

 

◎大和平野中央の“まち”づくり

 そうすると、地区ごとの実情に合った用地施策とまちづくりのアイデアが出てくる可能性があります。新しい大きなアイデアとして、大和平野中央のまちづくりの例で言いますと、農地は高収益の農地に転換しましょう、農地の区画整理事業みたいなイメージで特定農業振興ゾーンを整備しましょう、住宅地に生活に必要なサービス、例えば買い物機能を持ってきましょう。これらは用地があってのことですので、まちづくりのビジョンと用地取得を一緒にしましょうということです。
 その中で、県が大きな事業として展開できるのは、この地区においては、国体用のスポーツ施設や、県立大学の工学部の設置という新しい投資も考えられます。土地さえ取得できれば、そのような県の投資もできることを提示しています。新しい県の投資を見据えた地区計画ができるかを、地元の田原本町、三宅町、川西町と協議を始めました。これは、新しい手法のシンボリックなプロジェクトになります。
 その他の大きなものでは、京奈和自動車道の整備に伴う工場立地が続いていますが、これをまちづくりと一緒にすると良いまちができる可能性があります。京奈和自動車道の橿原北ICから橿原高田ICまでの区間が繋がると、南の方にも展開が可能になります。これは、若者の雇用をつなぎ留めたいというのが大きな目的となりますので、新しい展開をしていこうと考えています。 
 また、大和平野中央は水はけが悪く、水が溜まりやすい地区で、水が溢れやすい、支川から溢れやすいところがあります。このため、防災対策と洪水対策も一緒にしなければならないことが課題であり、遊水地を作り始めています。
 遊水地にせよ工場立地にせよ、土地の取得が必要ですが、農地を転用するためには、地権者の方の同意が必要になります。この土地取得の困難性が大きなハンディキャップになりますが、奈良が良くなることへの地権者の理解と関係者のビジョンがあることがとても重要です。防災と新しい経済活動の投資を遂行できる地域にしたいというのが、この地域の願いになっています。

 

 


◎“まち”づくりの考え方に対する市町村の受け止め方につい 知事写真

 このような手法はあまり聞いたことがないということで、市町村によっては、マスタープランがあればというところもありますが、一方では、ビジョン(地区計画)と土地利用を考えているところもあります。それがそのままマスタープラン化します。地区計画というモザイクを出してもらえれば、それをマスタープランにしますと申し上げています。
 今まで、市町村は個別の開発許可方式を中心に、この工場の横をちょっと広げて欲しいとか、個別に対応しており、計画性がなかったためバラバラ感がありました。全体としては、“まち”が“まち”らしく見えるように、工場が“まち”とうまく調和するように考えないとビジョンがマスタープラン化できないというふうに、意識が変わってきているように思います。
 今まで皆さんはこの「バラバラ」に困ってきたのです。住工混在の地区では、住宅も進まないし工場も進まない。間にバラバラと空き地があるということになっていました。これからそういった住工混在ゾーンはなくそう、周りにアメニティがある住宅ゾーンには工場はないというように分けていこうと思っています。それが作り方の基本流儀ということになります。昔やったことの反省をしながら、新しい良い“まち”を作っていきたいと思います。