令和元年12月「2019年を振り返って」

◆2019年を振り返って

・即位の礼と奈良の深い関わり 奈良にゆかりの歌が大嘗祭で多く歌われる
・大英博物館での仏像展示が大盛況を収める
・バスターミナルのオープンや奈良県コンベンションセンターが完成間近であるなど、大宮通りプロジェクトが着実に進んだ
・工場誘致件数が上位で推移、誘致が経済基盤の強化と民間資本の蓄積につながる
・東アジア地方政府会合が10年目を迎え、国際交流がさらに進展
・大水害や首里城火災、耐震問題を受け、各種防災対策の取組を早急に進めたい
・スポーツ環境の整備や地域包括ケアシステム構築が健康寿命を延ばすことに繋がった(奈良県は10年間でがんの死亡率が最も下がった県)

◎即位の礼と奈良の関わり

知事写真 今年を振り返ると、大きな出来事といえば、即位の礼だと思います。奈良県とゆかりが深い儀式だということがよくわかりました。とりわけ、「大嘗祭」は一世に一度行われる極めて重要な皇位継承儀式で、第40代天武天皇が飛鳥浄御原宮で即位の儀をなされた673年に行われ、歴代天皇の即位後、必ず行われることが皇室の伝統となったとされています。
 その「大嘗祭」では、奈良にゆかりのある歌が歌われています。第15代応神天皇が吉野宮へ行幸された折、国栖(くず)の人々がお酒を醸して献上した時に歌った、「国栖の古風(くずのいにしえぶり)」という歌です。応神天皇の時代の歌が大嘗祭の暗闇の中で歌われているのです。他にも、大饗の儀でも奈良にゆかりのある2つの歌が奏されました。日本にとっての出来事が奈良に意味があること、これは奈良県にとってとても大きなことだったと思います。

◎観光振興の推進

tiji 奈良の持っている資源を利用して発展させようと、文化の振興だけにとどまらず、それを観光振興につなげる活動をしました。例えば、大英博物館に仏像など、奈良を代表する社寺の名宝を展示しました。初めての試みでしたが、大成功だったと思います。特別展は2つの展示室で行われましたが、のべ約16万人が訪れられたということです。奈良の文化財が、世界中から訪れた方々にご覧いただけたのは大変喜ばしいことです。
 4月にはバスターミナルがオープンし、来年には奈良県コンベンションセンターが完成予定です。また、平城宮跡の第一次大極殿院南門が復原工事中で、朱雀門ひろばの東側の計画を検討中です。バスターミナルのある奈良公園、奈良県コンベンションセンター、朱雀門前という、大宮通りの3つの拠点について現在整備が進んでおり、その1つが今年完成し、もう1つが来年春完成するという動きになっています。南門は立柱式を行い、そのとき4本の柱を立てましたが、現在では18本の柱が立ち、2階まで復原工事は進んでいます。南門が完成することはすごいことだと思います。
 他にも、JWマリオット・ホテル奈良をはじめ、様々な民間のホテルが建ってきたり、奈良監獄がホテル化する動きもあります。高畑のホテルも来年春開業となるので、奈良の観光資本の形成において、大きな動きが続いていると思います。
 

◎道路整備と工場誘致による経済振興

 一般国道168号十津川道路が開通し、一般国道168号長殿道路と京奈和自動車道大和北道路の工事も始まりました。道路の整備が進むと工場誘致も進むと思いますので、奈良にとって道路の整備が進むことはとても大きなことです。
 工場誘致だけで経済の振興が上手くいくわけではないですが、誘致件数のランキングは上位で推移していますし、これが積み重なってくると奈良の経済基盤の強化、民間資本の蓄積になることは間違いありません。それが雇用の場を生み、所得を生み、税源の涵養になると思っています。

 

◎国際交流の進展

知事 東アジア地方政府会合が今年で10年目を迎えました。来年はインドネシア・西ジャワ州のバンドンで開かれることになっておりますが、東アジア地方政府会合は、東アジアの様々な国の方が来られて勉強会をするというとても平和的な集まりで、続けられるのは大変ありがたいことです。奈良が最も東アジアからの恩恵を受けた歴史があり、その歴史を思い出し、感謝の気持ちを込めて開催しています。これからの東アジアの発展に寄与できれば嬉しいです。
 他にも、中国の清華大学と、包括交流に関する覚書を締結しました。国際交流は、たくさんの事を教えてもらえる機会をもたらし、県政の刺激にもなるので、とても大事なことだと思っています。
 国際交流から発展したことで言えば、スイスにならって森林環境管理制度を作ろうとしています。3~4年がかりですが、条例化まできたというのは大きなことだと思います。

◎防災対策の取組
 ここ2年ほど、各地の水害がひどかったです。幸いにも奈良では河川堤防の決壊はありませんでしたが、水害の被害があった地域と同じ量の雨が大和平野に降れば、確実に決壊していたと思います。とても恐ろしいことです。河川堤防の決壊を防ぐには、堤防強化と水を流すというだけでは限界があります。大和川は構造的に亀の瀬が狭まっており、流しても下流があふれてしまうので、貯める対策を始めました。今年の大水害は、支川の水が本流に流れずにあふれて起こったものもありました。少し前から支川の水を貯める貯留施設を整備しようと内水対策を緊急に始めたばかりで、まだ田原本町で工事に着工したばかりですが、どんどん進めていき、早く貯留施設を完成させたいと思います。最近の雨の量は半端ではないので、より深く大きなものを掘らなければいけません。そのようなグレードアップも心掛けていこうと思います。
 首里城火災の件を受け、奈良でも文化財の防火対策をしっかりしようということになってきました。(仮)文化財防火対策推進条例を作り、どのように防火対策をしていくかという方策を確立していきたいと思います。
県立高校の耐震問題に端を発し、例えば文化会館などの県有施設の耐震も問題になり、県有施設の耐震化に本格的に取り組むきっかけになった年だと思っています。

◎スポーツ振興と包括ケアを通じた健康促進
マラソン 今年の奈良マラソンは10周年の記念大会でした。「あったかいマラソン」だと言われ、人気が高い大会なので、このような評判を落とさないように続けられたらと思います。
 それとともに、県民の皆さんがスポーツをしやすいような環境整備をしていきたいと思います。マラソン大会を開催すると、大会出場に向けて日頃からマラソンをしようという人が増えていて、それもマラソンの1つの効果だと思います。
 このように、スポーツ環境の整備は健康につながり、ひいては健康寿命を延ばすことに繋がると思います。健康寿命を延ばすのはとても大きなことです。数字でしか見えませんが、奈良県はこの10年間でがんの死亡率が全国で一番下がった県です。がんの話になると医療の対応も大きいですが、健康寿命を延ばせるかどうかは、地域ごとの包括ケアのシステムを上手く作れるかどうかにかかっていると思います。今までは後れを取っていましたが、奈良県はそれが進んできている県だと思います。