◆「奈良県の国内外の販路拡大の取組」について
【ポイント】
・生産(川上)だけでなく、流通、販売(川下)まで一貫して支援 ブランディングあ
・ジェトロ奈良貿易情報センターの設置について
・東京での「文化」と「食」の魅力発信
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◎地域経済の活性化
地域経済が活性化するためには、地域の中で人、物、金が上手く回ることが大切です。そのためには、企業立地を推進し、それを上手く活用することが重要です。
もっとも、グローバル化が進む現代においては、物や金が地域の中で回るだけでなく、グローバルマーケットにも進出しなければなりません。
これまでの奈良県は、交通の環境があまり良くなかったことから、企業立地があまり進んでおらず、それがグローバルマーケットに進出する上でハンディとなることもありました。しかし、道路環境が整備されたことから、県内における企業立地が進んできています。
◎生産から流通、販売まで 県産品のブランディング推進
経済は生産だけでなく、流通・販売までたどり着かなければ回りません。生産者のための研究開発等の組織はありましたが、流通まで含めた組織はありませんでした。このため、川上(生産)から川下(販売)への流れを作り、一貫した経済活動を振興していくのが県の大きな役割です。
川下での販売支援に関する成功事例として、奈良の木ブランド課が、東京で吉野杉を中心とした県産材を、新しいやり方で売り出したことが挙げられます。最初は不安もありましたが、ずいぶん評判になり進展がありました。地域の産
物のブランド化というブランディングが川上から川下に向かう際の大きな目標であり、県で最も力を入れた分野です。県産品のブランディングを推進するということを「奈良の木ブランド課」という課名にも込めました。
他の成功例として、奈良の柿もあります。東京の大田市場に売り込みに行った際にどのように流通に乗せるかということに苦心しましたが、毎年少しずつ工夫を重ねていくと、それがスムーズに行くようになってきたと実感しています。柿に加えて、大和野菜やイチゴも、ターゲットを決めていろいろなところに売り込んでいます。変わったところでは、大和トウキ等もチャレンジしようとしています。
◎ジェトロ奈良貿易情報センター設置による海外展開への期待
奈良県は今まで、農産物や製品をあまり積極的に海外に売り込みに行っていなかったように思います。そのため、ジェトロ奈良貿易情報センターの設置(※2018年11月開設予定)も随分遅れてしまいました。しかし今後は、海外展開も視野に入れて、ジェトロと一緒に売り込んでいこうと思っています。海外進出する上で、エキスポ展示は基本だとわかってきたので、エキスポ展示や海外展示の予算をしっかり取ろうということになってきました。
海外進出も、小さなギフトショーへの展示から始まったのですが、このように小さなチャレンジを積み重ねることが大事だと実感しています。
海外まで視野に入れるとなると、とにかく汗をかかないといけません。県では汗をかく企業を応援していこうとしていますので、海外展開に熱心な企業を応援する体制を整備する中で、ジェトロに役に立っていただこうと考えています。
◎東京での「文化」と「食」の魅力発信
毎年、大田市場や東京の百貨店等でのイベントに出店していますが、そのような一過性のプロモーションだけでなく、東京展開のためのステーションとして、「ときのもり」をつくりました。
観光を発信することはとても効果がありますが、観光情報と一緒に「食」がおいしいということも発信しなければいけません。奈良は文化財が豊富なことは知られていますが、これをさらに深く掘り下げて文化を発信するだけでなく、奈良に「おいしいものがありますよ」、「良いホテルに泊まることができますよ」、ということも発信していきたいと思っています。おいしいレストランや食材も出てきましたので農産物の振興と一緒に発信が出来ています。
食べ物がおいしいということは実際に来てもらわなければわかりません。「本当にあるの?」との質問に対して、「来てもらえばわかります」と答えても、その人が本当においしいレストランにたどり着けるかわからないので、おいしいものが奈良にあることをデモンストレーションする「ときのもり」では、「くるみの木」オーナーの石村さんの物販や音羽シェフによる奈良の食材を用いたレストラン「シエル エ ソル」があり、定着してきています。
評判が実績を上回ってしまうと、来てもらったらがっかりされるかもしれませんが、逆の場合は、良い意味で期待を裏切る成果があるため、とても良いことです。奈良にもおいしいものがあるということを知ってもらうことは、難しかったのですが、今では実際に、評判を上回るおいしいものがたくさん出てくるようになりました。
「ときのもり」を雑誌でたくさん取り上げてもらったことも大きかったです。宣伝はレストランの売り上げにも関わってくることなので、レベルが高くないと、それが雑誌に載ったとしてもありきたりな印象を与えるだけです。しかし、普通とは違うレベルの高いものを作って、それを広報するという手法によって「ときのもり」はだんだんレベルが高くなってきており、広報の効果はあったと思います。
なお、他県では海外のステーションも作っているところもありますが、奈良ではそこまで活動量が大きくなっていないことと実効性が分からない面もありますので作っていません。
よくある自治体のステーションでは、ふるさと帰りを案内したり、観光PRや物品販売を行っています。物品の販売を通じて県と馴染みになってもらうことがその目的ですが、奈良県の場合は、文化を発信していくことも大事な役割であると考えています。春日大社の式年造替にかかるイベントを発信したところ、観光面でも大きな効果がありました。
これからも、様々なプロモーションを通して「文化」と「食」の魅力を発信し、奈良県の活性化につなげていきたいと思っています。