平成30年4月「奈良県総合医療センターの開院について」

◆「奈良県総合医療センターの開院について」
 
 【ポイント】
 ポイント
◎急性期医療体制整備のきっかけ 痛ましい事故を受けて

 今から12年前、妊婦救急搬送事案が起こりました。この不幸な事故により、周産期医療が奈良県の課題であると認識しました。
 県にとって、周産期医療は大事な分野だということで勉強を始めると、県の医療、とりわけ周産期の救急医療が全体的に遅れているということがわかってきました。このため、公立病院で急性期の対応ができるようにすることが一つの目標、念願になりました。


illust◎病院移転 平松町から六条山へ
 当時は、急性期の医療体制の整備と並行して、古くなった県立奈良病院の建て替えについても検討を行っていました。建て替え計画については、現地で建て替えるのか、移転して建て替えるのかという議論をしていました。
 場所が見つからないため、移転建て替えが難しいと考えていたのですが、六条山の県所有の土地を活用する案が出てきて、航空写真を見ても、県立奈良病院と近く、移転建て替えも容易と思われました。移転する距離が短い場合、現地建て替えよりも移転建て替えの方が経費が安く、工期も短縮されることから、県立奈良病院を平松町から六条山に移転する方向で検討することとなりました。
 
 
◎立地に恵まれた新病院
知事

県立奈良病院の移転を進めるにあたって、未買収の用地がありましたが、病院を作ることを説明し、地権者の納得を得られるよう働きかけて用地買収を進めました。用地買収が進んだことにより、石木城線などの病院周辺の道路整備や、病院敷地内にトンネルを作ることによる通過交通対策も進み、大和中央道との結びつきも上手くいくようになりました。また、病院は丘の上に建っており、眺めが良く、大変環境に恵まれた良い立地となっています。

断らない病院:ER型を目指して

 新たな病院については、急性期の医療体制を整備するという課題がありましたので、「ER型」、つまり、「急性期医療を断らない病院」を目指すことになっています。民間の病院であれば、「断らない」ことをなかなか標榜できないため、公立病院の「断らない=ER型を目指す」という方針は大変重要となります。これが公立病院の基本機能の中心になると思います。
 また、南奈良総合医療センターも「断らない」、「南和の医療は南和で守る」という姿勢を打ち出しています。それに加え、南奈良総合医療センター、奈良県総合医療センター、県立医科大学附属病院の県立系の三病院でヘリポートを整備し、ドクターヘリの運航を開始したことにより、安心感が非常に増したと思います。先に述べた周産期医療の事故をきっかけに、奈良県の救急医療体制は進歩しました。断らずに救急搬送を受け入れた割合(率)も随分良くなってきたと思います。急性期の医療については大きな役割を果たせるようになりました。

◎身近な高度医療と地域包括ケアの充実

illust 新しい総合医療センターでは、急性期医療だけでなく、がんなどの高度医療もさらに充実させ、高度医療の分野を広げ、血液内科や乳腺外科といった新たな医療分野を今後展開していくことになります。
  また、病院の機能として、病気が治っても後遺症があることにより生活が不便になることから、リハビリの強化も重要となります。また、包括ケアと呼ばれる介護と医療がうまく接続して出来るだけ寝たきりにならないように生活していただくという分野も重要となってきます。
  地域で医療を展開する必要が出てくることもあるのですが、大規模な病院と中規模な病院では展開の方法が異なります。中規模の病院と連携し、在宅になってもいざというときはすぐに運び込まれることや、体調維持に向けた様々なアドバイスが届く仕組みを地域で作ろうという流れになってきています。
 奈良県総合医療センターには、このような地域包括ケアの中心的な役割を果たすことも期待しています。そのためには、民間の病院や施設との連携の強化、市町村との協力も必要になってきます。
 
◎医師の育成と奈良県地域医療に望むもの知事

 医療の目標を決めて、その中心となる病院が出来ることで、良い医師が集まって来る病院になると思います。地域で必要とされる医療の提供と、医師を育てることを総合医療センターで行います。  
  病院に良い医師が集まることにより、良い医療の展開を進め、県民の期待に応えていきたいと思います。奈良県総合医療センターの開院により、地域の医療がどのように展開していくかが非常に楽しみです。