-知事から職員に向けてのメッセージを、県民の皆さまにもご覧いただきます。-
「安全・安心の確保に向けた奈良県の取組」について
(職員向けメールマガジン 平成29年4月20日号掲載)
◎「安全・安心の確保のための奈良県基本計画」について
「日本一安全で安心して暮らせる奈良の実現」に向けて、県と警察が協働して「犯罪抑止」と「交通事故防止」を柱とした「安全・安心の確保のための奈良県基本計画」を平成29年3月に策定しました。
この計画は、安全・安心を脅かす事象の被害に遭いやすい「社会的弱者」に着目した「子供」、「女性」、「高齢者、障害者」、「外国人を始めとした観光客等」を守るという4つのアプローチと、安全・安心を脅かす事象を引き起こす行為あるいはこうした事象が起こりやすい場に着目した「犯罪が発生しやすい『場』」、「道路交通の『場』」、「県民を守るための安全・安心の基盤」という3つのアプローチによって、県内の安全・安心を確保していこうという点が特色として挙げられます。
また、県と警察が協働して本計画を策定したという点にも大きな意義があります。
◎犯罪が発生しやすい「場」から県民を守る
奈良県は、犯罪の発生件数は少ない方だと思います。かつては、近隣の大都市から犯罪者が入り込み、奈良県が「犯罪の場」となってしまったケースもありました。
犯罪の種類も時代とともに大きく様変わりしています。近年は、振り込め詐欺等の特殊詐欺や薬物事犯等の発生を耳にすることが多くなりました。奈良県では起こる可能性は低いと考えられますが、テロの抑止・防止についても検討していく必要があります。
犯罪が起こった場合、警察では犯罪者の検挙に向け捜査が行われ、検挙率100%を目指すこととしていますが、そもそもは犯罪を起こさせないということが重要です。犯罪予防という観点です。犯罪者は、犯罪によるリスクとリターンを分析したうえで、犯罪を行うか否かを決めるという傾向にあります。例えば、お金がありそうでも鍵が何重にもかかっていてセキュリティが堅固な家については、犯罪のリスクが大きくコストがかかるということで、犯罪が断念される可能性が高いと言われています。
また、防犯カメラを設置すると犯罪の検挙につながることに加えて、その場での犯罪も起こりにくくなりますが、その死角では起こされる可能性もあります。犯罪の起こりにくい「場」環境を県と警察で協働して作り上げ、犯罪を起こさせないというのが大きな目標です。
◎道路交通の「場」から県民を守る
次は道路交通の「場」についてです。交通事故を減らすための方策として、道路を改良すること、交差点を改良すること等が挙げられます。
これらは、道路の整備という県の大きな課題ですが、あらゆる道路で交通事故を起こりにくくするというのは並大抵のことではありません。事故が起こりやすい道路の歩道や自転車道を整備するといった、歩行者や自転車を守る施策を優先するとしても、なぜ事故が起こりやすいのかということを分析して整備する必要があります。事故の再発防止に向け、県と警察が協働して地道な努力を積み重ねていくことに大きな意義があります。
◎備えの重要性
地域の安全・安心を考えるうえでは、「備え」を意識することも重要です。
自分には犯罪や事故が起こらないと思い込んでいる人が多いと思うのですが、誰にでも起こる可能性があるものと認識したうえで、備えておく必要があります。あまり心配しすぎるのも良くないのですが、どのように備えるべきか考えておく必要があります。
ソフト(人づくり)とハード(地域・環境づくり)を組み合わせて、効果的に活用する方法を研究していく必要があります。
◎地域コミュニティの重要性
犯罪を起こさせないというような強い意志をもった地域コミュニティの中では、犯罪が起こりにくくなると思います。交通事故の場合も起こそうと思ってされる事故はありませんが、起こる背景には、そこが事故の起きやすい道路環境にあったと言えるかもしれません。地域の備えや地域コミュニティに大きく影響されると思います。
犯罪を予防できる地域は、地域住民の健康の維持や高齢者の見守りが出来ていて、児童虐待があった場合に気付くこと等も出来る地域です。
近年、地域のコミュニティや、家庭内でのコミュニケーションが希薄化してきたと言われていますが、犯罪や事故に対しての備えの意識や、地域コミュニティの基盤となる環境を整えていくことを目標に掲げ、地域から安全・安心を実現していこうと考えています。
◎「日本一安全で安心して暮らせる奈良」の実現に向けて
今回策定した計画では、安全・安心を実現するために、県と警察が協働することに大きな意義があり、加えて県民や事業者の方の協力も不可欠となっています。「社会的弱者」でなくとも、犯罪や交通事故に遭ったりするのですが、より自衛力が低い人たちを守る必要があるため、計画のターゲットを「社会的弱者」に向けていることも特徴です。安全・安心を阻害する「場」についても着目し、ソフト面・ハード面で対策を講じていきたいと考えています。
また、地域コミュニティについては地域差がありますが、これらを高めることによって、地域での犯罪等への自衛力や防衛力を高めることにつながるという認識をますます定着させていく必要があります。今後、計画に掲げられている7つのアプローチや20の推進項目を実施していくことにより、「日本一安全で安心して暮らせる奈良」を実現したいと考えています。