平成31年2月14日(木曜日)平成31年度奈良県当初予算案・平成30年度2月補正予算案記者会見

司会:
 おはようございます。
 ただいまより平成31年度奈良県当初予算案についての知事記者会見を始めさせていただきます。
 まず、荒井知事より、平成31年度奈良県当初予算案につきまして発表いただきます。
 その後、記者の皆様からご質問をいただきたいと思います。
 それでは、知事、お願いいたします。

 


平成31年度奈良県当初予算案・平成30年度2月補正予算案
《資料》 (新しいウィンドウが開きます。)

知事:
 それでは、「平成31年度予算案の要点」に沿って概略をご説明申し上げます。なお、計数的には、この「平成31年度当初予算案のすがた」というのを引用をさせていただくことがありますので、ご参考にしてください。

 予算案の要点をおめくりいただきたいと思いますが、1ページ目は考え方でございます。ポツの1番目から4番目までは、予算編成の従来からの考え方と類似しております延長です。5番目と6番目は、いわゆる骨格予算ということで書いております。非骨格というのは少ないですけれども、骨格に入れましたのは義務的な経費や当初からの取組が必要な事業でございます。その他の経費については、投資的経費が主でありますけれども、選挙後の6月議会に持ち越すということを考えております。

 2ページ目をお開きください。歳入歳出予算の全体の姿を述べております。この「予算案のすがた」の12ページ目に構造的にわかりやすく出ておりますので、それとあわせてご説明申し上げたいと思います。歳入の予算で、12ページ目の上に同じように書いてございますが、県税、交付税、国庫支出金など、同じ項目でございます。円グラフの構造を見ていただきますとわかりますように、県税あるいは地方消費税清算金などは自主財源と呼ばれるようなものでございます。3分の1ほどございます。地方交付税、また国庫支出金は国からいただくものでございます。県債、これ一緒になっておりますが、県が発行して調達するものでございます。一緒になっておりますというのは、後ほど交付税措置があるという臨時財政対策債もこの県債に含まれております。その歳入の構造を見ますと、3分の1が自主財源、4割近くが国からの交付税、国庫支出金というような奈良県の歳入構造になっております。

 歳出を円グラフで見ていただきますと、多いところは人件費、公債費、これが義務的経費で骨格の中心になるものでございます。それが約半分を占めております。それから、投資的経費は、この一部を非骨格で6月補正に回した部分でございます。補助費等は継続的なものございますので骨格のほうに回ると、そういう構造になっております。

 その中で、前年度との増減分を比較をしたものが、もとの資料に戻っていただきますと2ページでございます。県税の収入は15億円の減少でございます。株式などの市場の影響と思われます。地方譲与税は、国からの財政措置の変更などで12億円増加しております。それから、地方交付税と臨時財政対策債の合計額と書いております。円グラフでは県債の中に入ってしまいますが、臨時財政対策債というのを左のページでは内数で出しております。将来、国が全額返済資金を交付税措置していただく債権でございますので、交付税と同じ扱いでございます。その合計額は26億円減少しております。

 地方財政計画と同様のトレンドといいますのは、臨時財政対策債を少なくして交付税に回そうという、できるだけ交付税で措置しようという国の動きを反映しております。これは各県ともということでございますが、同じような傾向が奈良県でもございますので、交付税と臨時財政対策債の合計額は減少しております。国庫支出金の項目がございますが、68億円の減少でございます。これは補正回しが主なものでございます。2月補正のほうは逆に投資財源が前年よりも増えておりますので、投資が全体として減っていく傾向にはございません。

 歳出でございますが、義務的経費を見ていただきますと、人件費、丸グラフでも人件費が大体3割ぐらいになっておりますが、人件費は8億円の減少です。公債費が9億円の増ということで、義務的経費全体では5億円の増ということになっております。投資的経費は、先ほど申し上げました補正回しなどの影響で54億円の減少でございます。それから一般施策経費は、いろいろ混ざっておりますが、補助費等は5億円の増でございます。県税交付金等が20億円の減少ということでございますが、これは県税収入が減収いたしますと、市町村に回す県税交付金も減少するといったような影響です。対前年度のトレンドについては、以上のようなことです。

 3ページ目を開いていただきますと、左に、一般財源の状況、使途が特定されていない財源という言い方で付記いたしておりますが、ちょっと細かくなっておりますので省略いたします。県債残高は主要な注目事項でございます。上の棒グラフが県債残高総額、その中の黄色い部分が交付税措置のない、将来県税で返さなければいけない県債残高、このように奈良県では区分けをして、その動向を見てきております。双方とも減らすことを心がけてきた金額です。右下にその動向を書いておりますが、県債残高の総額は平成27年度から減少を始めまして、来年度は今年度に比べまして264億円減少いたします。また、上の棒グラフの黄色の部分ですが、交付税措置のない県債残高は、県税の収入で返済しなければいけませんので、将来の県民負担と思えるわけでございますが、それをできるだけ減らそうという努力を10年前からしてまいりました。この10年間で926億円の減少を達成することができる見込みです。31年度は86億円の減少でございます。債権全体については、そのような傾向です。

 4ページ目から、政策の取組に入ります。5ページ目からは健康寿命の項目です。6ページ目は、健康生活、生活習慣予防、それからがん早期発見のような項目です。7ページ目では、スポーツの項目ということでオリンピック・パラリンピック、聖火リレーなどを当初予算に計上しております。

 8ページ目、医療の部分でございますが、救急はよくなってまいりましたので、次は高度医療を手がけようということで高度医療、また急性期高度医療が充実してまいりますと、療養病床などとの連携ということが、地域医療の医療提供体制の取組になっております。今、協議を重ねておりますが、地域医療、それから包括ケアも、これから大事になってきていることを視野に入れ、取組を継続いたします。それから登美学園・筒井寮は、10年近く施設の建替えの検討をしてまいりましたが、いよいよ整備ができるようになってまいりました。

 9ページ目、介護保険、医療保険の分野でございます。地域包括ケアはこれから重要になる取組だと考えております。福祉医療も近年、奈良県の取組が進んでいるように思いますが、来年度は未就学児の医療費助成、現物給付方式の導入が決定しておりますので、その予算でございます。10ページ目、11ページ目は、その項目です。

 13ページ目は、女性の活躍促進の項目でございます。ここに書いてありますような項目は従来から研究して、いろんな取組を続けたいということです。

 14ページ目、防災、犯罪抑止などでございます。従来からの継続が多くございます。右下の新規で、消防団員の加入促進は年度当初からさせていただきたいと思っております。

 15ページ目、きれいな奈良県の取組でございますが、左は近鉄奈良駅周辺の沿道景観の取り組み、これも従来からずっと検討してきておりまして、いよいよ予算化をしようということでございます。彩の庭の促進も従来から進めてきておりますが、来年度は条例も作ろうかという内容です。

 16ページ目、エネルギーの関係でございます。17、18ページは省略いたします。

 20ページ目、産業でございますが、工業ゾーンの取組、従来から御所など用地買収にかかっておりましたが、いよいよ用地買収の目処ができて、今年の夏には判を押してもらえるのではないかというところまで来ております。それから、内外への販路開拓の支援は、首都圏対策、首都圏プロジェクトを進めておりました。効果がありますので、またジェトロの設置とあわせて海外にも展開しようという全体の動きの中での予算でございます。21ページ目、働き方改革は、国の動きよりもやや早目に検討を始めておりましたが、大変奥深い項目ですので、従来からの流れに沿ってさらに進めさせていただきたいという項目になっております。

 22ページ目、教育でございますが、左の上、県立高校の耐震化をずっと計画をしておりましたが、予算計上を引き続きさせていただいて、2022年度までの耐震化の完了を目指しております。左下の県立高校の再編に伴う教育環境の充実という項目を、これまでの流れに沿って上げております。右側の(3)は、公立の小・中学校の空調の緊急支援の特別措置ということで、補正予算で措置いたしましたが、当初予算でも引き続き措置をいたします。県立大学の整備も従来から進んできておりますので、引き続きの整備継続です。

 23ページ、24ページ目は、項目の列挙ですので省略いたします。

 26ページ目、農業でございますが、農地マネジメントについて、従来より取り組んでおります。農地の集約、担い手の配置が基本でございますが、いろいろ進んできている項目がございますので、その予算を計上しております。海外・首都圏への販路拡大は、従来から進めてきております。効果がありますので、その延長をさせていただきたいと思っております。

 27ページ目、県の森林環境税と国からの森林環境譲与税がありますので、その活用ということを当初からさせていただきたいと思っております。それから、木材についても、首都圏への販路拡大はもう数年間やってまいりましたが、やはり効果があります。奈良の木のブランド化が進んでおりますので引き続きということと、また海外へも展開をさせていただきたいと思っております。

 29ページから、観光でございます。30ページは、吉城園、高畑の整備計画をずっと進めてきておりますので、その事業費を計上しております。2020年の春のまち開きを予定しております。奈良公園のバスターミナルが竣工いたしましたので、4月13日オープンの運営予算でございます。それから、(5)になりますが、ホテルを核とした賑わいと交流の拠点を今、建設中でございます。建設工事が山場になりますので、その予算を計上しております。それから、大阪・関西万博の協力の予算も当初から計上しております。

 31ページ目、左は、インバウンドの対策は従来からいろんな分野でとっております。左下になりますが、これは特に消費税アップに対応できたらという願いを込めて、インバウンドの消費を、消費税率の引上げに伴う消費の減少に対応するように、という願いを込めた予算でございます。右上は対外プロモーション、予定が立ってきておりますのでその予算でございます。国際交流も従来からの延長でございます。

 それから、32ページ目、1つは、なら歴史芸術文化村、名前が確定いたしまして今建設が進んでおりますので、その予算でございます。右上の仏像の海外展示は、この秋に大英博物館にまいりますので、それらの予算でございます。(3)の「出雲と大和」は、ここ5年ほど東京国立博物館と島根県と奈良県で検討を進めてきておりますので、その開催の準備の費用でございます。

 36ページ目にまいります。県土マネジメントの推進でございます。左上、道路の整備箇所、箇所だけ列記しておりますが、いずれも重要な道路でございます。それから、まちづくりについて、色々連携協定でやっておりますが、それに対応した投資の予算を計上させていただいております。

 37ページ目、国土強靱化のテーマで予算が国からおりてくる傾向が強くなってきております。奈良県は、もとより県土強靱化の必要な地域でございますので、ここに掲載していますような予算を継続的に上げております。南部・東部の整備、インフラ整備も同じでございます。

 38ページ目、従来からまちづくりの検討も何年もかけてやっておりますが、煮詰まってきているところがございますので、予算計上できるところは計上させていただくということでございます。それから、右下の(3)、県立病院跡地、奈良市平松の整備構想を市が中心になっていろいろやっていただいておりますが、県有地でございますので、県の建物除却、土壌汚染対策の予算を計上させていただいております。

 41ページ目、南部・東部でございます。南部・東部は、来年度も引き続き、手をかえ、品をかえということでございますが、まずは交流の促進、それと定住が少しですけれども進んでいる村もございますので定住の促進、また雇用の創造ということにも引き続き手を入れ続けてさせていただきたいと思っております。

 44ページ目、市町村と協働のまちづくりというプロジェクトでございますが、現在、26市町村と54の地区で包括協定を締結しております。個別の協定にも入ってきております。先日、桜井の大福で県営住宅の起工式をいたしました。いろんな個別の事業まで入ってきておりますし、また、基本計画を策定するという段階に入っているものもありますが、それぞれの進捗に応じて予算を計上し始めております。右上は、市町村振興の貸付金です。今までもしておりますが、市町村が自身で起債を発行されるよりも県の資金を借りるほうが利子代が安い面がございますので、このような貸付金を用意いたしまして利用していただいております。その増額の予算を入れております。それから、(3)は消費税対応について市町村が実施されるものを支援することによって、消費税対応をしようというものでございます。

 ご清聴ありがとうございました。

 

司会:
 それでは、記者の皆様からのご質問を受けさせていただきます。
 質問される方にはマイクをお届けいたしますので、挙手をお願いします。
 なお、その際、社名とお名前をお知らせいただきますよう、お願い申し上げます。
 それでは、よろしくお願いいたします。

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質疑応答

平成31年度奈良県当初予算案・平成30年度2月補正予算案

奈良テレビ:
 2点ございます。まず、内容を見させていただいたんですが、骨格予算とはいえ、やはり5,000億を超えていて、今年度に引き続き規模が大きいのかなという印象を受けました。知事の中で今年度は今までいろんな種まきをされてきた中で、今後の新たな予算をどのように、どれぐらいの長期ビジョンを持って編成されたのかという点を知りたいなと思います。

 そして、いろんな施策がありますが、重きを置いて、ここを力を入れたというような点があれば教えていただきたいなと思います。お願いします。

知事:
 骨格予算ですので、編成中、財政課を中心に厳格骨格予算にしてくださいと、こうお願いをしました。いつも知事査定になりますと、知事が査定で削るというよりも、ナイフは持っていかないで、ハサミとノリを持って、ノリでペタッとくっつける知事査定が多かったんですけれども、今年はあまりありませんでした。ハサミは財政課が持っておりますので、ハサミでチョキチョキと、要求から大分こう切って、5,000億にしたということでありますので、今度の予算編成は私のアイデアはほとんどのっていません。だから6月補正になると、またアイデアをのせた新しい予算が出るかもしれません。だから今度の骨格予算の思いというのも、おっしゃるように、意外と圧縮できないもんだなと、私も同じような感じもしました。えっ、これだけしか圧縮できないのかと。骨格になるとスケルトンと言いますので、もうガラガラになるかと思っていたら全然ガラガラにならなくて、という感じはいたしますが、その円グラフを見ますと半分はもうとにかく支出せないかん。それから、補助も当初から切ったら困るような継続予算がほとんどだということで、主に投資的経費の新規は切るということを骨格と言っているんだなと認識をいたしました。そういう新規はのせておりませんので、新規にのせる思いというものはないわけでございますけれども、継続でこれだけいろんなことが進んでおりますので、その発展を継続するという、骨格性の持った当初の予算でございますので、発展を継続していただきたいということが第一の思いということになると思います。これまで練ってきて予算計上までたどり着いたり、去年あたりから建設費を計上したりという予算がのっているわけでございますので、そのような発展を継続して当初で継続計上させていただいたというような思いです。新規の特色というよりも、発展の継続の願いを込めた予算と私は思います。

 

奈良テレビ:
 具体的なビジョン、いつまで、いつごろまでを描いた発展性というか、2020年は東京オリンピック・パラリンピック、いろんなホテルも開業しますし、2025年は大阪万博も開幕しますが、奈良県としては、この中にどれぐらいの先を見据えての計画、目処というか、目標はありますか。

知事:
 プロジェクト毎ということになると思います。病院も何年になってできるか、大宮通りにできております交流拠点というのも来年の春開業でございますので、ハード的には一段落ということになりますが、あとはソフトの展開、運営の展開になりますので、交流の拠点のプロジェクトは来年の春で一段落と思っております。ただ、宿泊施設やアメニティの整備、観光地としての必要条件の整備というものはまだ続くと思いますので、これは切りがないと思います。継続して、どなたがなられてもやっていただきたいなと思うものです。

 そのいろんなもので、プロジェクトのスパンが長いものと短いものとありますが、万博にしても先は長いですが、今から準備しないといけません。いろんな予算は、その時々に基本構想の調査、基本計画の調査等々準備して、今の県営プール跡地でも、県営プールの移転から始まってますので、もうかれこれ10年かかっています。平城宮跡の整備ももう10年、国営公園化になって始まった事業でございます。形は見えてこなかったですが、やっと形が見えてきた。あれがいつまで続くのかと、国営公園、あそこに大極殿院を完成させるのはいつかという、まだ年次のめども立っていませんが、南門が完成することを楽しみにしておりますけれども、あそこに国営公園として大極殿院を完成させるという意思を国は表明していただいておりますので、とても楽しみです。全体にいろんな長いスパンのものと、もう来年春というようなものと、もう少し先というのもまぜこぜになっておりますけれども、そういうような長い、短い、もっと長いということをそれぞれの段階で予算措置をさせていただきたいというのが、今の県勢発展の願いでございます。

 

NHK:
 国の継続事業として観光拠点の整備を上げていらっしゃったかと思いますけれども、この点では30ページにもありますように、大宮通りのホテルの整備、また高畑町の裁判所の跡地の整備、2020年の春の整備完了だと思いますけれども、当然骨格予算として、手応えについてはどのように感じていらっしゃるのか、その点についてはどうでしょうか。

知事:
 観光施設の整備、ホテルの原点は奈良のホテルの客室数が全国で最下位だということで、各地から揶揄されています。奈良には観光資源がたくさんありますが、宿泊なしで通過型ですねとか言って、この前もパネルで説明していたら、1人当たり消費額が奈良県は極端に少ないですねと、パネラーにわざわざ言われちゃって、そのような性格であることは間違いないです。それをよしとするかどうかは県政全体の判断だと思います。

 私は、宿泊施設の整備で滞在型に変えることができるということでいろいろ走ってまいりました。県営プール跡地のホテル誘致にも。遷都1300年があった時は、一挙に宿泊者が圧倒的に増えた。だから宿泊地があれば来られる。遷都1300年のお祭りはこの平城宮跡中心でありましたけれども、吉野町の旅館も満杯になった。吉野町の金峰山寺の方が、とてもお客さんが増えたと言ってお礼に来られて、4倍も増えたっておっしゃった。そういうイベント効果があるということと、宿泊されるとゆっくりと滞在されるということを実感、実験できたわけであります。

 それと、その宿泊施設のキャパが全国一少ないといって冷やかされる観光地から脱却しようという方向で動いてきているわけでございますけれども、この奈良市内の県有地を利用してホテルを誘致しようということで、県営プールを大和郡山市に移しました。スイムピア、これも大変好調であります。その県営プール跡に森トラストさん、桜井市のご出身ですけれども、森トラストさんが、ふるさとへの恩返しということで、投資を決めていただきました。投資元を求めて東京を本当にほっつき歩いたんですよね。みんな断られました。奈良はリサーチしたこともないとか随分言われて、がっかりしっ放しだったですけれども、森トラストさんは、奈良は見込みがあると。社内の反対を押し切って自分のファンドでやってもいいとまで踏み切っていただいて、結果は日本にない世界のトップクラスのホテルが奈良にできるというところまで来て、かれこれもう10年たったものが実を結ぶかと思うと大変うれしいなと思います。そういうホテルの建設を決めていただいた後にこのインバウンドの波が大きく襲ってきて、大阪万博も始まって、奈良の立地が見直されているというような面もあろうかと思います。

 そのような流れの中で、今までの通過型観光、それから修学旅行型観光といいますか、よく来られるのは修学旅行以来だよとおっしゃられて、いや、毎年来てくださいと、こうお願いするわけです。毎年来る値打ちのあるような観光地にするということ、そのためには、いい宿泊と食事のアメニティが必要だと思います。それはいろんな方から指摘されておりますけれども、奈良県の努力が足らなかったからできなかったという面もあろうかと思っておりますが、県有地を中心にそのような牽引ができて大変うれしいことだと思います。奈良の観光は変わっていくと思っております。

 奈良の観光は、京都と違って、どんどん高いビルを建てるということは厳に今、戒めております。高いビルのほうがホテルとして効率が良いですが、それは規制をしてもらって、そういうことは建てないということは堅持しております。アメニティというのは、外はとても閑静ですが、中はとてもモダン。中が古臭いと今のお客さんはとても泊まられない。中は温水がすぐに出るとか、ICTが整っている、Wi-Fiが整っている等はホテルの必須条件です。外はクラシックで自然の中でたたずむというのがホテルの主流でありますので、奈良はそのようなことができる地域だと思っております。従来型の修学旅行生相手の観光旅館から脱却する機運が醸じてきたと思っております。

 

NHK:
 その検討自体を教えていただきたいんですけれども、30ページへ行きますと、(2)に、先ほどもおっしゃいました高畑町の裁判所跡地の整備、ホテルの事業の整備としてあわせた事業だと思うんですけれども、先日もホテルの着工、開始がありまして、一部の住民から事業への反対が継続していると思いますが、その中でこの整備事業の計画をどのように捉えていらっしゃるのか、ご意見をお聞かせいただきたいと思います。

知事:
 ぜひ報道していただきたいと思いますが、高畑については19の自治会がありまして、16自治会が賛成です。繰り返しますけれども、16の自治会が賛成です。2つの自治会はどちらでもいい。作ってもいいし、作らなくてもいい。1つだけ反対なんです。ぜひ報道してください。1つだけ、それは辰野さんが自治会長をしている自治会が反対しております。条件をつけられて、条件皆クリアして、最後は事業に反対だとおっしゃっているという事情でありますので、事業に反対という人は1つの自治会だと認識をしております。以上です。

 

NHK:
 ありがとうございました。

知事:
 ぜひ報道してくださいね。正確にお願いします。

 

奈良新聞:
 先ほど6月補正で肉付けしていく。新しいアイデアもあるということで、思いとして6月で何億ぐらいの規模で肉付けしていくのかというのを教えてください。

知事:
 6月補正、何も考えてません。4月になって考える地位をいただければ考えると財政当局に言っています。だから私の立場から言うと、選挙で回ると、いろんなことをおっしゃっていただける、これが大きな財産なんです。いろんな角度で、吟味はしないといけませんが、奈良県をよくしたいというので選挙に出るわけですので、そうするとこのようにしろとおっしゃっていただくのは、選挙の期間中の財産だと私は思っています。よく聞いて、それを6月補正以降に反映できるようにネタを探すというつもりのおつき合いをできたらと思っています。皆同じだと思いますけれども、一つのことに取りかかるのではなく、全体から県政をよくするためのネタが選挙期間中は出ると、私はこれまでの経験から思っていますので、全く白紙です。何が出るかわからない、と財政当局には言っております。ぜひアイデアがありましたら、足を引っ張るではなしに、これがいいじゃないかという、いいものをやりなさいと言っていただいても結構です。とるべきものはとりたいと思います。

 

奈良新聞:
 6月に肉付けした場合、相当額が上がると思いますが、昨年は災害とかも当初予算額で、今回はそれを上回ると思いますが、その思いを端的に教えてください。

知事:
 さっき奈良テレビさんがおっしゃった、額が減らないんじゃないかと。これは継続している工事、例えば県営プール跡地は122億になりますが、ずっと継続しており、来年度にピークになります。これは継続でもピークになるので予算額としてはのってしまう。6月補正で新しいアイデアに取りかかる時は、額はほとんどないです。例えばの話ですが、大規模広域防災拠点、2,000メートル滑走路の調査費をつけようなんて、額はほとんどないけれども、とても大きな方向になると思います。そのように小さくても大きな方向を決めることが補正でもできますので、どういう方向になるかは、いろんなことを聞いた上で判断をするということが私の立場になろうかと思っております。額が大きければすごく勢いがあるなということではなく、ずっと継続して、完成が間近だなと思ってもらうところも多いかと思います。

 道路予算もそうです。去年のことですが、京奈和自動車道でも事業化をしたということはとても大きなことです。ただ、事業化をしても、大きな予算がつく前に、用地買収がありますので、その期間はずっと予算的にはあまり出ないんです。用地買収が済んだら一挙に事業費が出るということが道路予算の傾向であります。その予算が増えたからすごく勢いがついたなと、もうかれこれ10年近くそういう継続をしているわけでありますので、そのような傾向が投資的予算には出てくると思います。6月補正は、量で勝負するよりも、方向性をどのようにするか、新機軸が出るかということが一つのポイントになろうかと思います。新機軸の内容は、全く考えていません。いろいろ話を聞いた上で、頭にたまったものから判断していきたいと思っております。

 

奈良新聞:
 最後に、県税収入のところで減少があって、その要因の一部に納税対象者は増えているんですけれども、税収そのものは増えていないというところと、あとふるさと納税の控除額が相当額あるということで、奈良県として対策なり施策なりがあるのかを教えてください。

知事:
 県税収入のトレンドを見ますと、ずっと上がってきております。これは県税収入は経済活性化と裏腹だということと、奈良県の県税収入の特徴は、個人県民税の比率が多く、所得が反映するのが大きいということが特徴だと思います。ほかの県、静岡や浜松、愛知などは、産業が活性化すると雇用が増えたり給料が増えたりして県税収入に反映されるというので、それがとても規模が大きいということが構造です。そのように経済の基盤が拡充すれば、小結、関脇になっていけるという奈良県であります。まだ小さな十両クラスであろうかと思いますけれども。県税の構造として、一つは個人県民税が所得を反映するというのがあります。大阪で所得を得ておられる方が3割近くおられるのが本県のベッドタウンの現象ですので、大阪の経済が悪くなると、県の、県民の所得も減るという構造にあります。

 大阪の経済をじかに調査しておりませんけれども、どちらかというと愛知等に比べて、大阪の経済が多少伸び悩んでいるのかなと思います。給料の額は今、問題になっている勤労・賃金統計の世界でありますけれども、それは大阪の事業所の統計を見ると多少わかる面もあると思います。県税で、まだそこまで調査していませんが、それの反映で多少伸び悩んでいるのかなという感覚を持っています。

 したがって、地場の産業を大きくして力強くして、地場で稼ぐ、法人が稼げるように、法人事業税が全国で一番少ない県でありますので、これは法人の活動が地場でなかったということで、これに躍起になって経済活性化をするということであります。大きな奈良県税構造を力強くしようという試みをずっと続けております。大阪の給料が減ったら税金、県税が減るという構造から脱却しようという試みであります。そのための試みの一つに、企業誘致があります。企業誘致で給料が定着し、製造業の雇用が発生して給料に反映されるまでには随分時間がかかります。この10年間で雇用の増加は、3,000人~4,000人ぐらいです。それでも全体の雇用の数%を企業誘致で達成することができています。これを繰り返しやって県内の産業の力強さとして、この地域で自前で稼いで、法人も稼ぎ、従業員も稼ぎ、それが県税に反映するという、税源涵養の考え方を本当に志してきました。ちょっとずつ兆しはよくなってますが、健康とか医療ほどすぐに結果が出ないもんだなと思っております。

 税収が多少増えてきているのは喜んでおりますけれども、もう少し詳細に見ると、例えば持ち出しのふるさと納税の控除が大きいということがあります。ふるさと納税全体、それに頼るということではなく、多少プラスになればいいかと思います。マイナスになってもふるさと納税をどこにされるかは自由でありますので、あんまり目くじら立てるわけにいかないなという感覚があります。奈良県は、もっと本格的な、本来的な税源涵養をまだまだしなければいけないなというほうが気持ちとしては強いものがございます。その税源構造をできれば力強いものに変えていきたいという願いはずっと持ってきております。その中で多少上向きになってきているのはうれしいなと、そのような感覚でございます。

 

時事通信:
 財政の話が出てきましたので、財政健全という全体のお話を伺いたくて、先ほど税収を上げる取り組みのことがありましたが、歳出面でも義務的経費、補助費等が非常に多く出ていますし、また、税調、財源規模のほうの臨財債の繰り上げ償還を行ってはいると思うんですが、いまだ県債残高は1兆99億円ございまして、また、いわゆる決算では経常収支比率も96.1%と、決して負担率で高いとは言えないと思いますが、そのあたり財政健全化に向けた知事のビジョン、お考えを伺いたいのと、それと今回の骨格予算でどのあたりに反映されているか、具体的なものがあれば教えてください。

知事:
 財政が健全かどうかということや、おっしゃったように将来の財政が危ないかどうかは、将来の公債等の負担比率というようなもので出ます。それと、現在の財政がいいかどうかというのは、経常収支比率で出ます。それが大事な指標だと思っております。1つは、現在の財政指標の経常収支比率でございますが、日本の地方財政は、先ほどの円グラフの構造を見ていただきますとわかりますように、国依存の地方団体がほとんどだと思います。不交付団体になっているようなところは少ないということで、よくできた地方財政の構造だと思います。

 このような中で、今、基金を貯め過ぎるといって批判されたりする国との確執があるわけでありますけれども、地方財政の考え方ですが、何が健全か。私の考え方は、地方はお金を貯めることが目的ではなく、お金を使うことが目的の機関だと思います。お金が入ってこないのに使うというのは、国のように借金を自前でするほど信用はなく、できないのが現実です。地方行政がこのように国に依存しているので、どんどん金を貸すという人は世界中誰もいないというのが現実だと思います。日本の国は借金できるわけでありますが、そのような状況を考えると、地方財政の運営の方針というのは、将来の県民の負担を減らし、将来の利益が発生するように投資が生きるようにするというのが一番の目標、心がけだと思っております。現在の暮らしがいいようにという願いは当然あるわけでございますが、家庭でありましたら、「ちょっと食事代減らすから勉強しろ」というような方針が家庭内で行き渡るわけですけども、地域の政治であっても多数決の政治でありますので、現実の補助費を減らして将来の投資に回すという米百俵の精神は、なかなか強いリーダーシップでないとできないのが現実であります。そしてバランスをとる感覚が必要かと思っています。現在の補助費をできるだけ確保するとともに、無駄な補助費は削っていこうと。「これぐらいでいいんじゃないですか」というくらいの補助費にして、節約したものをできるだけ将来に役立つ投資に回すというのが、国もそうだと思いますが、地方の行財政、行政の心がけるポイントだと思っております。

 そのような中での収支でございますけれども、先ほどの資料で県財政の構造を見ていただきますと、県税収入、国の譲与税等を入れても収入の3分の1でございます。交付税が4割ぐらいというような県財政の構造でございますので、その中でできる範囲のことを、今みたいな財政運営方針をもってできる限りのことをやっていこうというのがせめてものことでございます。

 現在の地方財政の模範生にはなりませんけれども、落第生にはならないようにというのが基本方針でございます。将来「すごい、どうしてこんなことをやったの」と言われるようなことのないように、中庸を保った財政運営というのがよくて、その中で「いい投資をしてきましたね」と言われるのが奈良県政の今の目標でございます。余計な貯金はする必要ないのが日本の地方財政でございますが、必要な基金の積み立ては必要でございます。

 経常収支比率にかかる現実の日々の、年々の財政運営はそういうことであると思いますが、将来の県債残高、将来の負担を減らすというのは努力をしてまいりました。県債残高が1兆円ありますけれども、とりわけ増えたのは、国の交付税依存体質があるという構造からいたしますと、増えた大きな原因、過去をさかのぼってみますと、臨時財政対策債が増えた時期と重なっております。臨時財政対策債が増えることで、それだけではありませんけれども、県債総額が増えてきたという傾向が見てとれます。

 一方、臨時財政対策債以外の、県税で返しなさいという交付税措置のない県債発行を抑制してきました。今、交付税措置のない県債発行はほとんどなくなっています。何らかの交付税措置がある県債を発行するという政策、県債発行ポリシーというふうになってきております。その結果、先ほどの資料の黄色い部分で見ていただきましたように、交付税措置のない県債残高というのは、この10年間で900億ほど減ってまいりました。また、それに手当てをする財源は、県税収入というふうに思いますので、県税収入と、この交付税措置のない県債残高の比率というのを気にしてまいりました。それが過去、平成23年、最高に近い4.3倍でありましたので、この時点でこれを4倍にしようという財政目標を立てました。その後ずっと交付税措置のない県税収入の比率が減ってまいりまして、最近では3倍ぐらいになっております。これは大変いい傾向だと思っております。この3倍を維持するのが当面の目標になるかなと。県債管理が当面の目標になるかなと思っています。

 いろんな今の現実の日々の補助費支出と将来の投資、それとその財政の管理、現年の経常収支の管理と県債管理、その4つをうまく組み合わすというのが、奈良県財政のバランス感覚と申し上げたいと思います。それを財政だけ取り上げて、「これ優秀だな」と言われるのは、あまり褒められたことにならないよと。財政を危うくしないでちゃんとした支出をしてるんだよということは、後世必ず「いいことしたね」と褒められる、というのが日本の地方財政のポイントだと思っております。

 

時事通信:
 ホテルの話題ですが、今回の予算でも継続案件でホテルの誘致が上がっておりますが、ホテルをつくればそれですぐ直ちにお客さんが泊まりに来てくれるかというと、必ずしもそうではないかと思います。仏作って魂入れずということになってしまっては困るので、そういうことにあわせて観光客の流入策が必要だと思いますが、それに対する知事のお考えをお聞きしたいです。今回の予算でも、インバウンド宿泊キャンペーンで1億円とあったと思いますけれども、そのあたりの知事のお考えをお願いします。

知事:
 観光産業は、日本は温泉に恵まれている地域の中心産業であって、雇用も結構サービス業で発生していたわけです。それが旅館なんかが、鬼怒川にしろ三朝にしろ、過剰投資をした旅館は財務がもたなくて買収されたり倒れて、空き旅館が出てきてる地域もあります。だから投資、運営をしっかりしないといけない、観光産業は投資すればいいというものじゃもちろんないわけであります。日本の旅行需要総額は、ずっと安定した平和な時代、バブル経済の時代に、とてもお客が増えて、旅行産業がが伸びると思って投資した人が皆失敗しているわけです。安定した需要に見合った投資は、お客さんは逃がしても、将来ずっと安定した財務になるという傾向が過去の事例で出てきております。

 奈良は、あまり投資をしなかった地域のように思います。その投資がやっとできるようになってきたということであります。その宿泊の投資がないと、観光産業としての収益が上がらないのが実情であります。「奈良はうまくお客を逃がしてくれるな」と近隣の観光産業地から言われているわけでありますので、奈良は奈良で頑張るということでずっと来たわけでありますが、その中でインバウンド観光は大きな観光需要になってきています。これはまた波があると思いますので、このような伸びでいくかどうかはわかりませんが、平和な時代がずっと続くと基盤の需要になってきた。日本は平和ですが、ほかの地域がちょっと多少怖くなってきた。いい観光地がありますが、日本が安全で快適だということで、今、インバウンドの波が来ているように思いますので、これを持続できるところと競争になりますので、競争に勝って吸引できるところが観光が発達して地場産業になると思われます。

 奈良県の中でも伸びているところと伸びていないところがありますが、具体的に言うと悪いですが、吉野山もお客が激減しております。それは、有名だからお客が来ると思っていたのが来なくなったというような観光地であります。今、心を入れかえて観光産業の振興をしておりますということでありますが、旅館のキャパはありますけれども、食や他のアクセス、アメニティが悪かったということでありますので、アメニティの改善に町長はじめ旅館街の方が一生懸命になっております。

 観光地のあり方、吉野町の吉野山と洞川を比べてみますと、洞川はまとまって観光振興をされております。洞川は奈良県の中で2番目に大きな旅館の客室数がある場所であります。吉野町のほうが有名でありますが、洞川のほうが実績が高い。しかも勢いがついているということでありますので、みんなに「洞川を見習おう」というふうに言ってきた経緯があります。

 洞川と吉野町はどこが違うのか。魅力創造のいろんな努力に大分差がある。だからおっしゃったようにキャパを作ることと、魅力を作ることを併せてしないといけないと思います。魅力の中には、食もあります。吉野山へ行ってまずいものを食べたっていうと、どんどん評判が落ちる。恐ろしいことで、いい評判を上げようとして、食もおいしかったよということになると、仏像がいいよということになる。仏像がいいのはわかってますけれども、ほかのことは知られてないので、評判がいい、意外感があるサービスができるというのが観光地の大きな取組。どんどん新しいアトラクションを、小さなイベント等を追加していかないといけない。奈良は社寺がメインのデスティネーションになるんですけれども、社寺をお参りすると、それだけでもう御利益があったって帰られる人が多いというのが社寺観光の一つの特徴ですので、社寺の前でむしろイベントをして、社寺についでに参ってもらうという社寺観光のコンセプトを今、奈良県は提唱しております。社寺観光との折り合いということについては、社寺に参られる観光客を受けようという観光産業のメンタリティーがあったんですが、逆に観光産業がその麓でイベントを起こして楽しんでもらって、ついでにその社寺、こんなに御利益のある社寺が近くにありますよと言うのを奈良県のパターンにしようとしています。

 平城宮跡のお祭りでは、先ほどの金峰山寺の「売り上げ」って言うと変ですが、4倍の人に来ていただきました。それで、イベントをするとお参りに来る人も多いということを発見したわけなんです。お参りに来る人が増えるとか、収入があったというのは非課税措置のある宗教法人ですので統計で出ないんですけども、法人売上統計が出ると確実に奈良県は上がっていると思います、そのようなお礼を言いに来られることもしばしばありますので。すると、それで奈良の観光産業は、地元でイベントをして、食でもイベントでも楽しんでもらおうと。ついでにありがたいお寺、社寺に参ってもらおう、仏像を拝んで帰ってもらおうというコンセプトに切りかえ始めているわけです。

 そういたしますと、楽しんで参ってもらうためのインフラというのは宿泊ということになりますので、料理、宿泊、それとアクセスというのは、顎・足・枕と業界言葉で言いますけども、基本要素になります。基本要素ぐらいは奈良でちゃんとしようというのが今のポリシーの中心になっております。社寺にもいい御利益があればと言ったら失礼に当たりますけれども、社寺から御利益をいただくんではなしに、社寺にもいい御利益が発生するように、我々まちの者が努力しなければいけないということを、イベントをする人に励ませています。

 

毎日新聞:
 2点ほど伺いたいんですが、まず1つは、先ほどのインバウンドの件でありますが、10月の消費税10%の引き上げに対する消費の落ち込みという形で、直接的には景気対策という形で、一つの鍵がインバウンド対策です。Wi-Fiだとかキャッシュレスだとか、そういった施設を導入する経費を応援みたいな形をされておられますが、そういった形で消費税に対するインバウンドでやっていかれるということについての荒井さんの思いなりをお聞かせください。

知事:
 10月の消費税率引上げに向けて、国のほうで消費税が駆け込み需要があって落ち込むということが統計上出るので、みんな消費税を上げづらいということが政治的な判断であったと思います。その均しをする。今、EUなどは最低でも15%の消費税をとっていないと加盟できないわけでありますし、22.5%までいっている国もあります。社会保障の財源に使うというのが先進国の仲間では基本的になっています。日本もそのような傾向があると思います。消費税を現実の同世代扶助ではなく将来扶助に、借金で社会保障をしているという国ですので、余り長くするともたないと私も思います。

 そのときに、消費の落ち込みをなくすには、メンタルな要素が強いのですが、それを税金が上がってから買いなさいよと言ってもなかなかで、税金が上がる前に買ってしまう。またそういうキャンペーンもありますので、落ち込みが余計激しくなってきたという傾向があります。インバウンドでは、そういうこととは関係なしに来られる人もいますので、その消費を上げるために、インバウンドの10月以降の波を利用して消費を助けていただけないかという試みを、これは国の予算もそのような志向でありますので、国の予算も利用できる面が多いということも背景にあります。そのような試みを地方でもできるんじゃないかということが一つの試みであります。

 昔、消費税率が5%から8%に上がるときに、商品券などを撒いたりしました。10月以降使える商品券とか、国のアイデアでその商品券を撒く手伝いをしたことがあります。地方で工夫をして消費の落ち込みが軽減できないかという試みの中で、インバウンドの助けを借りようかということがうまく当たるかどうかわかりませんけども一つの試みで、うまくいけばいいなと思っております。その過程で、国が「そういうことをすれば支援するよ」と言っていただいておりますので、その投資的な要素もあります。そのときの消費喚起の支出の要素もありますけど、投資的な要素もありますので、将来のインバウンド対応にも役立つ面もあろうかということも考えて予算を計上させていただいております。願いは、そのようなことです。

 

毎日新聞:
 わかりました。それからもう一つ、耐震化の話です。耐震化に関して結構検討されてますが、県有施設を95%、平成32年度という目標があったので、それに基づく予算だろうと思うのですが、先日、県庁内で耐震化のチームも発足されましたので、この耐震化に関しての今回の予算にかけられた思いというのを知事にお伺いしたいと思います。

知事:
 まず、教育施設の耐震化というのは、全体に遅れている数字が出ております。もちろん気にしておりましたが、特別養護老人ホームとか障害者施設を優先してというふうに財源を割り振ってきた経緯があります。教育施設本体の耐震化は全体に遅れていましたが、平成32年度までに完了させるというプログラムになってきたという段階の中での高校再編があって、耐震化に注目が余計集まったというような、教育施設についてはそういうことだと思います。

 高校再編があると、従来の耐震化に比べて、耐震性が弱いところがあるのをどうするかという身近なテーマになってきております。生徒さんが、万が一でもそういう弱いところで授業をしたり体育をしてはいけない、ということになりますけれども、もう一つは、どのように弱いのかという知見については私自身は余りよく知らない。最低Is値が低いと、みんなばさっと倒れるのかというような印象がありましたが、有識者に聞いてみると、「Is値が低い場所の倒れ方というのはある程度予測ができる」というふうに判断していただいてきておりますので、これは県有施設の場合になりますけれども、教育施設においても本当に弱くて心配なとこは応急措置で補強しようと。あるいは仮設でやろう、あるいは耐震化をしようというような手当てを、ハードの面ではしていきたいというふうに思っています。

 そのようなやり方について、知見を集め始めたのがごく最近になってきておりますので、その知見を活用して、必要な措置は6月補正で予算をつける気持ちでおります。教育施設についても、もし出てくればそのように思っています。

 県有施設については、先日、文化会館のIs値が出ましたが、当初は文化会館というのは耐震性があるかないかというようなことについて報告を受けました。そのようなレベルの知見でありましたが、「耐震性がないですよ」と言われ、「恐ろしいな」と、「早く耐震性を強化しようよ」というので始めて、どのようにすればいいのかというので、「美術館と一緒にしようよ」というプログラムを始動させたとのことですが、今回Is値のとても低いところがあるとわかったので、今後の使用をどうするのか、補強の順序をどうするのかということを、文化会館、美術館についてもその知見をいただきながら、必要な措置を講じていくというところまで来たということはご承知のことだと思います。

 それで、耐震化全体の思いとか所見というふうなご質問かとも思いますが、そのように県有施設と教育施設では、私の立場が直接的、間接的ということで、ちょっと違うように私自身は思っております。とにかくその耐震性のアテンションが出て、エビデンスが出てくるのは必要です。そのエビデンスがあって対応策を検討して、必要な対応策を講じるというのが私どもの役目でありますので、その有識者の意見に従って予算をつけていくというところまで来て、それがよりきめ細かくなってきたなというふうに思っております。もとより地震というのは、どのような大きな直下型地震というのは、いつどのように襲われるかわかりませんので、県有施設、県有教育施設についてはそのような状況ですけれども、県民の皆さん全体としては、ご自身の住宅も含めて心配なこともあると思いますので、そのときは、直下型が来たときの逃げ方、命の助かり方ということも併せて備えをしていただけたらなというふうにも思います。県有施設についての役割、今の進捗というのは、以上のようなことに思っております。

 

毎日新聞:
 耐震化に関しては教育長に一言伺いたいのですが、教育の予算に関しても、少なくともこの10年間では最大の予算をつけられたと思うのですが、一連の奈良高校をはじめ、耐震化の話が出て、こういう形になってきたと思うのですが、それにかかわらず、お考えをお聞かせ願いたいのと、あと昨年の再編計画、あるいは耐震化に関して県民目線で説明をされていれば、今の時点でこのような混乱もなかったような、大分意識が変わったと思うのですが、いまだうちの支局にも何とかしてほしいというふうな形で、来られたりだとか連絡をされる方もいるのが現実だろうと思います。ですので、県民へ向かった説明というのをきちんとやっていただきたいと思うのですが、県の教育行政が地に落ちてしまった面もあると思うのですが、そこらをどうやって信頼を回復されていかれるのかという点も含めて、考えを聞かせていただけますか。

教育長:
 平成25年から平成29年まで、耐震というものについて、全部をこうするというものは出させていただいてたのですが、それに対する県民の皆さんの理解、あるいは我々がそれを理解する努力をしてこなかったという点がまず1点あろうかと思います。その後で耐震を100%完成するという対応策については、生徒減少が非常に大きく起こりますので、募集人員をどうするかという部分もやはり耐震改修にも影響いたしますので、ああいう高校適正化という形で、計画を100%になるように書かせていただきました。

 ただいまおっしゃいましたように、その適正化と耐震化というものをしっかり説明できていなかった。県民の皆さんはどちらかというとやっぱり耐震化、子供たちの命、安全・安心というものに対する思いというのが非常に強いということは、私も十分理解させていただいております。今まだなお不安に思っておられるということでございますので、しっかりこの予算をつけていただいておりますので、この予算を踏まえてしっかり説明責任を果たしていきたいと思います。

 

毎日新聞:
 続きは、また委員会のほうでお願いします。

 

奈良新聞:
 組織改編のことでお伺いしたい。文化財保存課と文化財保存事務所を教育委員会から知事部局に移管されるんですけども、4月の文化財保存法の改正に伴うものだと思うのですが、これまでも全国に先駆けて取り組まれていますけども、改めてその狙いとかメリットとかをちょっとお聞かせ願えればと思います。

知事:
 「奈良県は、教育委員会よりも知事部局のほうが文化財保存に熱心ですよということがわかると思います」というのが狙いなんです。わかってもらえるようにというのが狙いなんです。文化財の保存はどのようにするかというやり方、考え方が今、分かれてきている。凍結保存、何もさわってはいけないというもの、「放ったらかしが保存だ」という思想があったのが、世界中、手を入れないと保存にならないというようになってきている。教育委員会あるいは日本の文化財保存行政は、凍結保存に偏り過ぎたと私は思っています。活用と相まって保存をするという思想が日本の保存行政になかったというのが、奈良県の私の考え方です。だからその保存というのに力を向けて、むしろ力を入れるというふうに理解していただけるというふうに思っています。世界の潮流は、活用と保存を一緒にやろう、そのほうが保存の意味がわかるよと。分からないで保存する凍結保存というのがどちらかというと奈良の特徴だったかもしれませんが、もう少し活用すると、分かるということが出てくる。

 例えば、奈良文化財研究所が研究をやっております木簡というのはどのように保存されているのか。文化財の調査官は、とにかく見せないで保存する、人に見せないで後ろに隠すといったら悪いけど、そのような傾向があったと思います。それが、最近は出ています。アーカイブズでデジタルでもいいから、本物を見せなくてもいいのだから、書いてあるものを発信してくれよということを叫んでたんですね。やっと最近出るようになってきたのではないか。世界の研究者がそれをデジタルで見て、「ああ、こういうことだった、俺の研究しているのの材料になるよ」と。文化財の第一次資料というのは、ものすごく大事なんですよね。その漢字一つとっても、どうしてこれをどのように使っているのかと。漢字の研究でも使えるわけです。それは考古学の人は漢字の研究までいかないじゃないですか。もっといろんな研究者の人に公開して発信を。文化財は公共財だと私は叫んできたんです。それを教育委員会から脱することによって実現できるかと思って喜んでいます。

 奈良県の文化財保存は、文化財は公共財だという観点で実行したい。その考え方は、活用とあわせると意味がわかるというのと、公共財だから内容を発信しなくてはいけない。今はっきり言えるのはその2つであります。そのような文化財保存行政が、県ができることは大変意味があると私はもう言ってもいいかと思っております。凍結保存の人は「心配だ」という発信をされるが、逆です。凍結保存は大事なものかわからないまま埋めているだけじゃないですか。文化財の扱い方としては失礼じゃないですか。そのぐらいの勢いです。文化財の意味をみんなに見てもらって、「あなたの保存しているのは大変貴重だけど、意味はわかってますか。世界の研究者から言っていただく機会を持ちなさいよ」というのが公共財の考え方であります。そのような考え方は多くの人から賛同を得ていますので多少力強く言ってしまってしまいますけれども、そういうのではない調査官、俺のものだといって後ろに隠す調査官もおられたことは事実であります。自分の研究財ではない。調査官の研究財ではないんだと。世界の公共財だと。世界の研究財だというのが、奈良県文化財保存行政の原点であります。

 

奈良新聞:
 ただ、文化財等に関しては、例えば埋蔵文化財のようなケースがよくあるとは思うのですが、開発と保存の矛盾が生じるケースも多々あるとは思うのです。これまで監視等を担当されてきた事務局が、保存のほうにはもういなくなるということになると、どうしても開発のほうに重きを置かれてしまうのではないかとか、活用するに当たっても、それは活用できる文化財はいいですが、それにそぐわない文化財がどうなるのかというような危惧の声もあるのですが、それについてはいかがでしょうか。

知事:
 誰が言っているんですか。知らない人が言っている。今みたいな言葉を聞いて、「そのとおりやってくれるのか」というふうに言ってもらうとよくわかると思います。埋蔵物は、その場所にしかないので、埋蔵物には記録保存なので、発掘しないという手はない。「発掘しよう、しよう」といって発掘して、それがどのような値打ちがあって、記録保存にするのか、移転保存にするのか、現地保存にするのか。ランクがありますよね。みんなわからない、日本の埋蔵物発掘の現場はその基準がないままにしてきたのではないですか。そういう声は自意識でないのか、自己反省はないのか、と僕は思うぐらい基準がない。基準をちゃんと作ろうということを言って、これはちょっと大きな目標で、正直難しい面もある。埋蔵物の保存の仕方の基準をつくろうと。何が現地、現物保存なのか、何が移転保存なのか。レプリカという保存もあると思います。あるいは記録保存。記録保存、レプリカ保存、現物移転保存、現地現物保存というようなランクが、素人からみてもあると思います。

 現実に現地現物保存というのは、年間50、60やっても、1件あるかないかというようなものなのです。それは、その現地現物の意味が、埋蔵文化財にそれだけの値打ちがあるということ。どのような値打ちなのかとわかってそのようにしないといけない。大事なものを埋め戻しすると壊れてしまいます。記録保存でも大事な保存の仕方だと思います。記録で世界に発信できるというのが一番大事だと思います、埋蔵物についても、なくなっても、こんなものだったということが比較できますので、公共財にとって基本的なことは記録だと思います。埋蔵文化財の保存担当者は、その意味がわかっていれば英文ででも発信をしなくてはいけない立場にあったと思います。それをそういうふうにしたと。この基準をつくる、そのランクの基準をつくる。その保存、発信の公共財としての扱いをどのようにするかということが大事なことだと思います。危惧をしている人は、どのように思って危惧しているのかなと。今までちゃんとやってたのか。そういう人と会話してみたいと思いますけどね。

 

産経新聞:
 さまざまな分野の事業にいろいろな予算がついている中で、特にどの分野に力を向けるかという話なのですが、ホテルとかインバウンドのお話の中で、観光という分野においては、過去の経緯から事業の計画の必要性、将来を見据えた必要性というところでしっかりと予算つけられているなというのがよくわかりました。そのほかには知事として、骨格というふうにされた予算ではありますけれども、しっかりと予算をつけなければいけない、将来、4月以降、誰が知事になっても継続してほしいという分野、具体的な施策を教えてください。

知事:
 事業のずっと過去の流れを見ますと、まず病院。医療の問題が発生して、病院をつくるというのが目標に。直接的な目標ではなかったですけども、急性期について、救急搬送を確保するには、断らない救急医療が要るということに思いがたどり着いて、救急搬送を断らない医療というのは、どうしても公的、公立病院になってしまいますので、大きな投資が要りますので、それで県立系の病院を整備しました。南和の病院がすごく成功したと思います。病院の医療の分野ではそのような波があって、あと残っているのが三室の病院と医大の医育機関、教育部門の移転というふうに大きな波があって、まだ事業としては残っています。

 観光のほうは、もう本当にホテルがなくて人から冷やかされてばっかりなのがぐっと今、上がってきている。さらにこれが奈良の観光地を変える意味があると思います。奈良らしい観光地の形成ということを心がけていくと、とてもいい場所で、いい環境で、いい滞在ができるというふうになってくると思います。そのような波がまだしばらくインバウンドで続くと思います。

 そのほかの波ということでありますが、インフラの中で防災の遊水地というのに取りかかったり、これも大事かと思っております。もう一つは工業ゾーン、特定農業振興ゾーン、あるいは駅前のまちづくりといったような、これもコンセプトを練るというのと、用地買収ですね。まちの人とワークショップをしてテーマを確立していくというのと、必要な用地買収ができるか。奈良の発展の一番の決め手は用地買収だというふうに思い至っています。必要なところで用地買収ができれば、奈良の発展はすごく飛躍的になるというふうに確信をしています。事業の対象ですが、土地が取得できないところにそういうタイプの予算はつきません。国庫もつきません。陳情に行くと、いつも言われるのです。「荒井さん、用地を取得してないところには事業費つきませんからね、つきませんからね」ともう何度も耳がたこになるほど言われて、奈良はそういう場所だということを言われるのがとても悔しいです。どういうふうなまちにするかということを決定して、それに用地の取得があって、事業費をつける。たまたま病院にしろ、ホテルにしろ、県有地が中心でありましたので、用地取得の困難は多少減じておりますが、工業ゾーンとか遊水地、地震・防災についても地面を売ってくれない。もうすごいですよ、本当にすごい。奈良はすごい。

 このような場で言う話ではありませんが。だから、やりたいこと、今までやってないことができるような事業費は目の前に来ており、用地買収があれば事業化できるのになと思います。テーマとしては、観光のほか、防災、それから工業ゾーン、農業ゾーン、それから畜産拠点といったような拠点ですね。それとインフラができたらというふうに思います。

 

産経新聞:
 医療の話ですけれども、観光は今、大きなプロジェクトの山場を迎えるということですが、医療においては、県立病院の話もありましたけれども、大きな事業としては落ちついたというふうに、もう少し在宅医療とか、そういうほうにもう移行しているような時期なのですか。

知事:
 医療は、救急については公的病院の整備が必要でありました。受け皿、最終的な砦があると医療の体制が全然変わってきますので、今変わりつつある調整段階に入っています。これからのことは、医療だけで健康を維持できませんので、介護とか包括ケアといわれる、在宅でいろんな変化があるのを見守ってもらえる、最後は看取りをしてもらえるという包括ケアが全国で一番行き届いたまち、地域になるようにと願っています。

 次の補正予算のような話をしてはいけませんが、先日、南和広域医療企業団の運営会議がありまして、「病院としては大変よくなった、今度は南和全体の包括ケアのシステムを作りたい」と。どこにもそのようなシステムはありませんが、市町村と県が入っている南奈良総合医療センターにおける包括ケアのシステムをつくれたらというふうな兆しが出てきました。医療・介護の分野の大きな夢であります。夢は幾つかありますが、予算の説明にもまだ入っておりませんが、南和の包括ケアシステムというのが大きな夢になってきております。例えばの話ではありますが、医療の延長、急性期高度医療の延長で、高度急性期医療が終わったわけではないし、がん対策などが終わったわけではありませんが、包括ケアまで手を伸ばそうというのが大きな夢であります。

 

朝日新聞:
 たびたびホテルの話とか出ていますが、ちょっとその絡みでの質問です。高畑のホテルですとか、県有施設のホテルを核とした再開発、いろいろこういう大規模な事業が進んできている、山を迎えているところだと思うんですが、こういった大規模な事業に大きな予算を割く必要はないんじゃないかというような声も聞いたことがあります。別にそれが数として多いとか少ないとか、そういうことはわかりませんが、そういった大きな予算を大規模プロジェクトに割くことについて批判の声もある中で、それについて知事はそういう県民の声に対してどのように説明しますか。

知事:
 どのような観点で、誰が「大規模で必要ない」とおっしゃっているのか、また教えていただけませんか。それに耳を傾けたいと思います。それがやはり議論しないといけない意味がある意見かどうかを、また判断しなくてはいけないと思います。ぜひ、「こういう角度で、こういう意見です」と。それの正当性を、あなたの感覚も入れてもいいので。そういう声があるだけでは分析ができませんから、「俺の前にホテルを建てるのは嫌だ」というのも正当な意見かどうか、というのがあると思います。だから我々は全体の利益を考えなくてはいけないというふうに思いますので、奈良の先ほどの特徴で、「俺の前にホテルを建てるの嫌だ、俺の地面を遊水地に使うの嫌だ、しかし高く買ってくれるといいのだが」と。それでは地域が発展しないというのが実感です。今は、その一般論の所論のようにおっしゃいますので、どのように正当性があるのか、朝日新聞さんの意見も踏まえてまた議論させていただけたら。分からないと、「一般的な感想」というわけにいかないじゃないですか。

 

朝日新聞:
 確かに今の話はよくわかったので、それはまた機会があればと思いますが、それをわかった上で、知事として必要であるとか、こういう意味があると思ってまた進めていらっしゃること、力を入れていらっしゃることだと思うんで、そこの部分を教えてもらえますか。

知事:
 一般論でいうと、奈良はその方面の投資がなくて、例えば量的なもの、バラエティもないし、観光産業の基盤を整備してこなかった県だということは同意せざるを得ないです。それが客観資料で、その上に立っての私の判断ということになります。「俺の前に建つのは嫌だ」とかというような意見はいろいろあると思いますけれども、それが、「大規模なものはいけない」というのはどうしてかなと。大規模になる場合もあるし、公共事業でやるのもあるが、ホテルはみんな民設ですよね、それはご存じでしょう。「大規模であっても、民間の投資があったらいけない」とおっしゃっている人なのかな。「大規模な投資はいけない、民間でもいけないんだ」とおっしゃっている人なのかな。公共投資はあまりないのではないですか。それを分析されているんでしょうか。

 

朝日新聞:
 あえて私が知事のその計画について、今ここで批判しているという趣旨ではないのですが、推進したいということであれば、知事が考える意味だとか期待される効果とかがあるというふうに考えていらっしゃることだと思って、その部分を聞けたらなという趣旨で質問しました。

知事:
 曖昧なんですね、一般論で質問されるから。「大規模投資は民間ですか、公共ですか」ということを質問して、その言っている方は「民間もだめだ」といっているのですかということを、議論するのが大事だから、と言っています。公共事業は議会の吟味が要るから、コンベンションとか、ほかでできないものは公共事業でやらざるを得ない。ホテルなどは、県立ホテルとかないでしょう。県営ホテルというのはないでしょう。民間のホテルで県有地を利用するということだけど、駅前でもどんどん建っているのはみんな民間のホテルでしょう。もっと大規模な部屋数でありますが、あれもおかしいでしょうか。だからその人の意見について、朝日新聞が書かれるならぜひ正当性の根拠を言って、その論争について県民の方がわかるような議論してるなというふうに、いつもそう書いておられるように思いますけれども、ぜひそのようにする機会があればというふうに思います。

 

NHK:
 食と農業についてお伺いします。予算案の要点の26ページの(1)、予算案の概要だと95ページの下、NAFICの件ですけれども、平成25年に6次産業として、産業の研修拠点整備基本計画を策定されて、平成28年にNAFICを開校されています。まず、お伺いしておきたいのですが、それは農業の担い手、食の担い手を養成する施設だったと思います。3年になると思いますけれども、まずはその点について寄与されてきたというふうにお考えなのか。食の担い手であるとか、農業の担い手の養成に寄与されてきたというふうにお考えなのか、まずもってお伺いしたいのですが。

知事:
 食と農業を結びつけるというのは、奈良県や他でも始まっていて、外国では随分普通ですが、日本では食はどちらかというと、食の安全は厚生省が持って、食の素材は農林省が持っている。国が分割して行政をしておりました関係があると思いますけれども、分かれていたというのが実情です。それを、農に詳しい食の担い手を養成しようというのが基本コンセプトです。

 卒業生が出始めてますが、大体15名程度までしか、定員20名の予定をいたしましたけれども。立派なところに就職された方もおられますし、地域で食、レストランを起こしておられる方もおられますので、そのような効果はあらわれてきていると思います。農に詳しい食の担い手というのは、現実に奈良でも事業を、曽爾村で最初の1期生で、優等といいますか、クラス委員をされた曽爾村の村長の息子さん、芝田さんが、今、曽爾村でレストランを建設、もう竣工したかな、レストランを地元で開業されるということになっております。これは、このNAFICの目指す担い手のぴったりの方ですね。ぜひ曽爾村で開業されるレストランに、あそこで修業された方がレベルの高いレストランを開業されると流行るように、我々も、また押しかけないといかんなと、そういう考えでおります。

 一つの狙いがそのような形で結実し始めている。1期生でそのようなことであります。1期生でもう一つは、その就職先で、カンテサンスという東京の三つ星、4つか5つしかありませんが、そこに就業が決まった女性がおられます。そのような評価がある、というのが一つ大きな成果だと思います。

 さっき申しましたように、定員割れしているのは残念だと思っております。しかし、その内容については大変評価されているところがあると思います。最近では、これも補正予算以降の対応ですが、スペインのBCC(バスク・クリナリー・センター)、バスク料理学校という300名ほどの生徒がいるところから、「NAFICと協定、連携できないか」という話がありました。前向きに検討したいと思いますが、まだ6月補正以降の話ですが、世界のそういうトップのすごく名の通ったところから名指しで連携の申し込みがあるというふうな施設になってきています。

 あそこの研修施設でオーベルジュとレストランを委託で経営しておりますが、山の上にもかかわらず、大変はやっています。地域振興の拠点として新しい試みだと思います。同じような拠点は、天理のなら歴史芸術文化村のように、芸術をテーマにした拠点、それから今度は、当初の事業予算には出ておりませんが、構想としては卸売市場を再整備して、卸売機能とBtoC(ビーツーシー)の機能を合わせてにぎわいの拠点をつくろうという、これも新しい試みが構想としてあります。NAFICもさらにセミナーハウスをつくって交流の拠点、食の拠点、物産の拠点というふうに考えております。複合性というのが大きな目標であります。これは地方創生の観点から注目を浴びて、地方創生の交付金が適用されることからも、国のほうでもそのような扱いを受けております。天理のならの歴史芸術文化村は、全国で15ある重点「道の駅」の1つに指定されるようになります。その考えの先駆性というのが対象になっております。

 新しい試みは、東京とか大都市から発生するのではなく、地方から発生するという国柄になればと思っておりますが、奈良でもこのように新しい試みには多少抵抗もあると思いますけども、国の中央では大変評価される試みが、奈良県では続々と出てきておりますことを喜んでいます。これは検討しないと事業化、予算化できないわけでありますが、そのような予算化ができるところまで来た事業も増えてきているというのはありがたい、嬉しいことだと思っています。NAFICについてもそのような傾向であると思っております。

 

NHK:
 いろいろお話しいただいた中でも、定員割れという言葉もありました。まずこの事業費が17億円余りかかっていて、今回、新年度予算案でも2億1,100万円、さらにセミナーハウスを今後建築する予定があるということですけれども、実際定員割れが続いている状況で費用対効果をどのように考えているか、17億円も投資されている費用対効果をどのように考えているかということ。また、今いろいろなビジョンを話されておられましたけれども、建設する意味があるのか、そういったところについてもう一度しっかりお考えを聞かせていただきたいんですけれども。

知事:
 ぜひNHKの目で客観的に判断して、放送していただければと思います。「意味は、観念的に言わないで」ということでありますが、その意味を申し上げたいと思います。定員割れとそのセミナーハウスは余り関係ないですね。定員割れは、NAFICのシェフの話でございますので。農業のほうは定員超えになっていますので、ちょっとアンバランスでありますけども、NAFICの定員割れは、それ自身の課題、まだ知られてない課題だと思っています。

 あそこは研修施設で、レストランとか宿泊施設があります。セミナーハウスは山の上に立地を考えていますが、複合性があって、ともにその、共生といいますか、助け合う関係にあると思います。これはアスペンという、アスペンセミナーというのを奈良でしていることをご存じでしょうか。奈良市内のホテルでやっておりますけども、アスペンセミナーをあの山の上でやるのに大変ふさわしいような立地であります。また、ダボスというのはご存じでしょうか。スイスの田舎でやっておりますが、このようなセミナーハウスをつくるので、ダボスのような会議をしたいという引き合いもあります。そのような大きな志の延長に、これはあります。ダボスのようなものは、皆さんできるかどうか、どうでしょうか。そのような構想の延長にセミナーハウスというのが浮かび上がってきているわけであります。レストランがあるというのは、ダボスのような田舎の本当に小さな村で、総理が行くようなセミナーができているわけでありますので、そのような志の効果。その効果のとり方は、よく言われるもうかるかどうかというのよりも、奈良のそういうアスペンとかダボス級の会議ができるという知的な面でのブランド化というのが一つの大きな狙いであります。その効果が、「奈良はよく考えて、そのような程度の高い会議をしているよ」というのが知的なブランド化の狙いであります。

 その効果というのは、経済効果なのかブランド効果なのか、いろいろ幅広いと思いますので、そのセミナーハウスの狙いは、奈良の知的水準が高いよということをブランド化しようという試みも入っているということで、それに呼応していろんなところから、ダボス級の会議もしたらどうかという引き合いもあると。NHKさんも共感されるような方向だと思いますけど。NHKの文化部のほうは共感されるような試みだと私は確信をしておりますけれども、そのようなコンセプトが中に入っている、というような事業でございます。

 

NHK:
 質問というわけではありませんが、ある意味こうであると、フードとセミナーハウスを一回、切り離すべきだというところが冒頭あったかと思いますけれども、平成30年度でNAFICの学生出願状況について、アグリ学科は確かに出願者数は定員を上回っていますけれども、入学者数については定員割れ、17人で割っています。そういう点では全く切り離すという話ではないような気がするのですが、その点はどうなんですか。

知事:
 NAFICの話に戻ったの。

NHK:
 もともとNAFICの質問をさせていただいたかと思いますので、その点について。

知事:
 アグリマネジメント学科は定員を超えていて、出願者が26名。アグリマネジメント学科は、平成28年に始まって、出願が34名のとき、定員20名で入学者数を20名にしました。その次の年は出願36名で21名にしました。今年は24名出願がありましたけど、17名しか来られませんでしたという状況でございます。現在、31年度の出願は26名でありますので、このような状況で割れてないんじゃないかというふうに思ってたわけでありますけども、30年度割れたよということを特記して、切り取り放送されるのも勝手でありますけども、この4年の流れを認識して私の発言があったということも、その認識をしていただきたいと思います。

 

NHK:
 農業についても話しがありましたけど、フード学科のほうについてはどうお考えなのでしょうか。

知事:
 フードクリエイティブ学科は、平成28年が15名の出願で入学者は15名です。平成29年が13名です。平成30年は14名出願があって13名です。20名の定員ですけども、13名の応募、生徒ですので、ずっと3年定員割れが続いているので、まだこのフードクリエイティブ学科というのは余り定着してない。外国のクリナリー、アメリカのニューヨークでは3,000名の学生がいるとか、バスクでも300名いるとかというのを、その学校の形態自身が定着しているわけですが、日本では新しいタイプの学校だと思います。

 最初に申しましたように、フードのシェフを養成しようと。シェフ、調理人の養成というのは、調理学校で技術を教える。平松さんという人がフードの校長先生ですけども、平松さんがもう勢い込んで、「これからこれに人生かける」とまで言って校長先生になっていただきましたが、外国のシェフと交際のある方ですけども、外国のシェフは調理だけじゃないですね。「経営全体、カルチャーも一緒にしてシェフだ。日本のシェフのレベルを上げたい」ということが養成の基本でありました。だからそのような新しい学校の試みがまだ理解されてないのかなと思っておりますけども、ありきたりじゃない、ということを私からは申し上げたいと思います。

 このような学校をつくったとき、できたときに、当時の森山農林水産大臣とか農林水産省の人が見に来られて、「これは良い試みだ」ということを現実に言っていただいております。今もそのための様々なサポートをいただいておりますので、その発想と試みはそのような認識をしていただいているように思います。

 定員割れというのが、冗談になるかもしれませんが、定員15名にしといたほうがよかったのかなというふうに思うところもあるのですけどね。すると15名、そこそこですねというふうに言っていただいたかもしれません。それは20名でやってて15名しか来ないという、こういうシェフの養成のマーケットだったということがわかってきているという面でありますので、定員割れは定員割れで事実でありますけど、失敗したかどうかというのは、私はそういう評価ではないと思います。これだけ良い試みをして、外国からも応援しよう、中央の農林水産省からも応援しようというのが、20名と決めた定員が15名、13名になっているから失敗したということではないと思います。

 

NHK:
 では、このフード学科については、何をもったら成功だというふうに考えたらいいんでしょうか。

知事:
 フードクリエイティブ学科は、育った卒業生を随分見ていただくと、ああ、こういう人を輩出したのかということがわかってくると思います。人材育成機関でありますので、ここで授業料を稼げという学校ではないのです。このような人が育ってきたよと。これは時間がかかると思いますけれども、先ほどご紹介申し上げました曽爾村の芝田さんというのは、クラス長もして活躍されてました。卒業生とかインタビューされたことありますか。

 

NHK:
 今のところありませんけれども、今後、させていただきたいと思います。

知事:
 お勧めしますよ。最初の1回生は、63歳のおばあさんが2年間通われて、下市町でカフェを開業されました、丹生川上神社の。これは狙い目の一つです。ぜひそういう現場の取材を。得意でしょう、現場取材するの。高畑だけなく、下市も取材されて、曽爾村も取材されて、放送していただくと嬉しいなと思います。現場が何よりですね。そのような人が育っているのは嬉しいなと私は思っていますということですので、様々な人、第1期の卒業生にもお会いしましたが、とってもすばらしい人が育ち始めています。そのカンテサンスに行った人だけでなく、田舎で飲食を提供していただくというのは奈良の願いですので、野迫川村でも、もう一つオーベルジュをつくって。中央卸売市場でフードコート、イータリーのコートをつくろうといったときに、あそこの卸売市場の西川理事長がね、この「NAFICの卒業生をぜひ来てほしい、ここで活躍してほしい」というような引き合いも既にありますし、そのような人がどんどん育つようにと願って、そういうレベルの人が奈良で育成をして、調達をして活躍してもらうというのが願いでありますので、そういう意味では、引き合いの面からいえば、着々と色々な引き合いがあるというふうに申し上げたいと思います。これも取材情報の一つであります。ぜひそのようなところもご取材していただけたらと思います。

 

NHK:
 このメリットが、今までの整備費に見合うだけの人材養成ができているという、そういう理解でよろしいでしょうか。

知事:
 あると思います。今の志を理解していただく人にはよくやってるねと言っていただいておりますので、あると思います。

 

NHK:
 今の関連ですけれども、私の勉強不足かもしれませんが、NAFICのあたりでダボス会議みたいな話、初めて聞きました。アスペン会議に至っては、私は知りませんでした。こうしたことは、もうちょっと丁寧に県民にも説明いただけたほうが、議会へ説明していただけたほうがいいかなと思いますので、これは意見です。

 もう一つ、今回の予算についてですが、何か骨格ですけれども、こういうふうに名づけたい、こういうふうに言い回したいというキャッチフレーズのようなことがもしあれば教えてください。

知事:
 ダボスみたいに、私が言っても夢みたいに思われて、さっきも笑われたみたいな感じがしますけども。固まってないのをやたらに言うのは、そういう政治家じゃないと思ったりして、こういう機会で「意味がないのではないか」と言われたときに、思わず言ってしまう。何か攻めたから言ったということでありますので、またいつものように攻めていただくと、またいろんな思いがぼろっと出るかもしれません、というようなやりとりでありました。それも貴重だと思っております、そのやりとりも、そのようなことを、やりとりの上での話ですので、貴重だと思っております。

 その上で、骨格の予算をどのように表現するのか。先ほど奈良テレビの方が、「骨格といってもそんなに量が減ってないのではないか」というので、ちょっと言いわけぎみに言わなきゃいけないような感じだったのですが、骨格という名前、ネーミングがおかしいのかなという感じもいたしました。従来から継続して、工事が続いているのは、「コンベンションセンターの工事費は計上しなきゃいけないでしょう」というようなのが積み重ねになると、「全くの新規は6月補正に回しますよ」というだけで、継続案件がとても多いなという結果になってるというふうに思います。それだけ県政の継続要素、継続性というのが大きいなというふうに、改めてそういうふうにも思うところです。

 その上で、来年度当初予算、選挙のある年の当初予算の性格というのは、その特色を出すのは難しいのですが、本来の骨格という維持、量的には、骨ばっかりの予算だったわけですが、いつもうまく言えないかもしれませんが、私の主観的な気持ちということでありますと、これだけ投資についても継続している案件が積み重なってきている。最初から発想して取りかかろうというのは、遠慮して6月補正にしようと。新規は6月補正、小さくても6月補正にしようという気持ちでありますので、私の新しい気持ちは反映しておりません。それだけは確かです。だから6月補正で新しいアイデアが出たら反映する、小さい予算でも反映させてもらったらと思いますけど、それは4月以降の話です。

 その上で、この当初の予算というふうに思いますと、今までずっと続けてきた予算なので、ちょっときれいに言い過ぎるかもしれませんが、「県勢発展継続予算」というような程度かなと、これ、主観的には思います。「そのくらいはぜひお認めください」というふうに、今まで積み重ねて来ておりますから。それに対して「どうか、効果があったのか」というご意見ありますけど、これは言い合いでありますので、どう見るかによって判断はいろいろ違っておりますが、私のほうからは継続してきた意味があったと、こう思います。本当に思いますのは、それを尊重されるかどうかは別ですけども、できるだけ様々な多角的な取材で放送、報道していただければと願う次第です。それが県勢発展の次につながるというふうに私は思っています。一面的だとなかなか発展しないというふうには思っております。多角的な取材、放送、報道を歓迎する所以です。ちょっと余計なことでありますけども。当初の予算の性格、ちょっと主観的になりますけども、「県勢発展継続予算」かなと思います。

 

司会:
 それでは、これをもちまして終了させていただきます。
 本日はどうもありがとうございました。

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(発言内容については、読みやすくするために、広報広聴課で編集しています。)

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