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今月のポスター 平成19年度 人権啓発ポスター優秀作品 |
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休日の電話 |
休日の早朝、電話の音で起こされた。受話器の向こうから、離れて暮らす年老いた母の声。「どうしたんや」思わず大声を出してしまった。何しろ早朝の電話は、これまでろくなことがない。返答を待つ一瞬の間に、翌週の行事予定表やらさまざまな事が頭の中を駆けめぐった。 すると電話の向こうから意外にも、「50歳の誕生日おめでとう」。脱力して座り込む私の姿が見えたのか、「びっくりさせてごめんな。あんた最近は休みの日でも朝早くから出て行ってるし、今日だけは出て行く前に言うておかなあかんと思うたんや。何かと節目やから身体に気をつけてな」。その後も、「あの年は雪が多い年やったけど、やっぱり世の中温暖化やわ」などと、母はひとしきりしゃべっていたが、私は涙があふれるばかりで何も答えることができなかった。 親はおろか子どもの誕生日まで忘れてしばしばひんしゅくをかう私は、恥ずかしながらいまだもって何をやっても自信がなく戸惑ってばかりである。しかしあの日の電話以来、心の底から「生まれてきてよかった」と思えるようになった。そして、わが子が50になる日まで生きて祝ってやることができたら、それだけでもすばらしい自己実現ではないか、と思える今日この頃である。 |