県政だより奈良

タイトル
見出し 生み育てた「名物」
地産地消が活性化の鍵
 ススキの大海原が金銀の輝きを放つ秋の曽爾(そに)高原。活気づく観光シーズンに、かつて多くの村民が頭を抱えていました。原因は、農業をも脅かす車の渋滞とゴミの山。苦境に活路を見出そうと平成11年、曽爾高原ファームガーデンに村内産の新鮮食材を用いた料理と地ビールなどを提供する「すすきの館」がオープンしました。「地産地消」を唱うこのレストランで、農業と観光が初めて手を携えたのです。
 この成功をバネに、次は村内産のコメを粉に挽(ひ)き、パンを焼いてみたところ、しっとり、モチモチとしたお米パンが誕生。一方、新たな味を提案してシーズンオフの客足を伸ばそうと今年、レストランのメニューには鹿肉のシチューや紅茶煮が加わりました。こうした探究心と挑戦が、村を活気づける原動力です。
 努力が実り、今では来村者の2人に1人がファームガーデンに立ち寄り、また村民はいつしか手製の品や農産物を売店に並べ、訪れる人を歓迎するようになりました。施設を運営する(財)曽爾村観光振興公社理事の井上善富(いのうえよしとみ)さんは「曽爾村の出身だと、ようやく自信を持って言えるようになりました」と、村の勢いが郷土愛を深めるのを実感したようです。
 「名物」を生み出しては育てていく。そのパワーと持久力が観光客を味方に引き寄せ、地域の自立を先導しています。
ヤーコン
フォト
30種を超えるお米パンは、焼くのも売るのも村の女性たち。「お米の館」などの施設は、村民の雇用の場にもなっている。
一見、サツマイモのような南米原産のヤーコンは村の新たな特産品で、ナシに似た食感。村特産のホウレンソウを練りこんだお米パンは「第1回奈良県観光みやげもの大賞」に入賞した。  
フォト
「麦の館」で仕込まれる「曽爾高原ビール」(通年3種)はドイツの職人が製法を直伝。県内では近鉄百貨店各店や一部の道の駅などで販売している(330ml・1本525円)。 「お亀の湯」(平日大人・500円、土日祝日・指定日700円)の泉質は、しっとりと肌になじむと定評があり、露天風呂からは鎧岳(よろいだけ)、兜岳(かぶとだけ)、屏風岩(びょうぶいわ)(国指定天然記念物)が一望できる。
 
 



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