|
||||||
|
||||||
世界遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道(さんけいみち)」。その一部である大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)では、古くから修験者(しゅげんじゃ)が苦行を重ねてきました。そんな行者(ぎょうじゃ)たちを癒(いや)した出湯(いでゆ)の里・天川村洞川地区には「行者仕込みのもてなし」が息づいている、と「洞川温泉ほのぼのまちづくり協議会」会長の紀埜弘道(きのひろみち)さんは話します。「宿では夜中に到着する行者さんの一行を迎えたり『ご来光(らいこう)を拝みたいので朝3時に起こしてほしい』という求めにも応じてきました。宿泊客のあらゆる望みを受け止める懐の深さが、培われてきた地区の伝統です」。 そんな行者の宿泊も、今では減少傾向に。逆に温泉街に浸透しているこまやかな心配(こころくば)りは、一般宿泊客の心をとらえ、宿泊者数も増えてきていた矢先、洞川温泉の湧出量(ゆうしゅつりょう)に陰りが見え始めました。危機を乗り切ろうと、地元の旅館なども資金を出し合い、源泉を掘削。湧出量、成分濃度とも従来の5倍近いという新たな温泉を掘り当て、近く良質の湯が行き渡ります。紀埜会長は「霊場の神秘と豊かな自然に抱かれた洞川の良さを、全国に広めたい」と意気込みます。 温泉街ではここ数年、玄関先に手水鉢(ちょうずばち)を置く旅館や店が増えています。家ごとにこだわりの意匠(いしょう)で一軒、また一軒…。大峯山脈を源とする清らかな水を守ってきた住民が、その誇りを静かに発信し始めました。 |
||||||
|
||||||
|
||||||