我が家は全くと言っていいほど地域に貢献していない。生活に追われ、いつも不義理の連続だ。そんな我が家が自治会の班長になった。半ば言訳を連ねるつもりで初回の役員会に臨んだ。
私鉄沿線のいわゆる新興住宅地。駅と自宅を行き来するだけの生活はうちに限った話ではない。自治会則により、入会は任意で役員の再選はなし。「互いの負担軽減のために何もせず、金も使わない」という不思議な不文律が伝承されてきたらしい。
集まった役員は、20代から80代。行政OBの民生委員、添乗員、教師、出産間近の人から、孫の子育て真っ最中の人までの12名。そこは、何のしがらみも強制もない空間で、自由闊達(かったつ)な意見が飛び交った。次第に、自分たちの子や孫の故郷がこれでよいのか、伝統を覆(くつがえ)して自治会で何かやろうという話になった。最初抵抗を示した人をもいつしか巻き込んでいた。
それ以来、毎週末は大忙し。運動会に防災バスツアー。仕事帰りに集会所へ急ぎ、話し合いが4時間に及ぶこともある。それでもここには、人を惹(ひ)きつける何かがある。まず地縁、血縁ありきの人間関係ではなく、人の輪で地縁を創っていく。私たちの新しき伝統づくりは、今、始まったばかりだ。
|