「おやじ、俺、理学療法士になろうと思うねん」と、大学受験を控えた息子が、突然自分の将来について話し始めた。一瞬の驚きのあと、その言葉を裏付ける出来事が脳裏に浮かんできた。
小学校低学年の頃のこと。祖父が脳梗塞で倒れたあと、食事の介助を率先してやってくれた。排泄や寝返りの世話をしているときや機能回復訓練をしているときも、その傍らで見守ってくれていた。
高校球児となってからのこと。「いつもT君にお世話になって」と、チームの保護者からお礼の一言。仲間の調子が悪くなるとマッサージやフォーム矯正のアドバイスをしていたことを初めて知らされた。レギュラーとしては活躍できなかったけれど、自分の居場所をつくり、かけがえのない仲間と過ごせたことを喜んでいた。
決してこれだけが進路決定をさせた要因ではないだろう。多くの人との出会い、さまざまな関わりの中で、自分の将来像を描きながら歩んできたに違いない。出会った人とどんな向き合い方をしてきたか、それが生き方の羅針盤となる。
出会いという人と人をつなげる架け橋を宝物にしながら、これからも息子を見守り続けたい。 |