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人権コーナータイトル
祖父の言い訳
 もう随分昔の話だ。夕方のラッシュも過ぎたターミナルの改札口で、2人用バギーに幼い兄妹を乗せて、行きつ戻りつする初老の男性を見かけた。「また乗ってはらへんかったね…」「おじいちゃん、なんでうちだけお母ちゃんいつも遅いの?」責め立てるような孫の問いに、「お母ちゃんはな、難しいお仕事してはるから人より遅いねん」「…ふーん?」なだめるネタも底をついたか、幼児でも首を傾げる苦しい言い訳を、恐らくこの老人はその後も繰り返したことであろう。或いは、自分自身に言い聞かせていたのかもしれない。
 そう言えば、「こんな親でも、親がええか」というのが、私の母の口癖であった。保育園と実家と地域の人のお陰で我が子は育った。恥ずかしい話だが、私は子どものオムツがいつ外れたのかすら記憶にない。それでも玄関先で子どもが真っ先に飛び込むのはいつも母である私の腕の中であったから不思議だ。
 あの夕暮れの駅で、電車から降りてきた母親が、他に何もできなくても、ただギュッと二人を抱きしめてくれていたらと願う。それだけで、彼らは今頃きっと祖父の苦しい言い訳の意味を理解しているに違いない。
今月のポスター
平成21年度人権啓発ポスター優秀作品
今月のポスター
大和高田市立磐園小 5年
稲垣 希旺(まお)さん
 

 

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