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私は、大学に進むまで御所で生まれ育ちました。子供の頃の思い出をたどると、今や見られなくなった情景が目に浮かびます。正月に家々を回る獅子舞がこわかったことや、大峰山を目指す山伏が軒先でホラ貝を吹き、母が差しだすおコメをそのホラ貝で受け取っていたことなどです。小学校の頃は、昆虫採集に励みました。「テングチョウ」を採ったことと「ジャコウアゲハ」を卵から成虫にまで育てたことが、小さな自慢でした。
高校生になると、外国に憧れ、畝傍高校からアメリカに留学しました。外国で暮らすと、多くの人が経験されることですが、自分が日本人であることを強く意識するようになります。私の場合もそうでした。
外交官になろうと思ったきっかけも高校生時代の留学体験にあります。外務省に入って、北米、南米、欧州、アジアと世界各地に赴任しましたが、東京勤務になると頻繁に奈良に戻ります。
いま振り返ってみると、青少年時代を東京や大阪といった大都会ではなく、日本の歴史が日常生活の中にとけ込んでいて、時間がゆっくりと流れていた御所で過ごせたことが、外交官として仕事をする上でもよかったと思っており、感謝しています。 |
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