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ふるさと奈良への便り
 
   私の家は紀寺の寺域の片隅にあり、近くには桓武天皇の弟・早良親王を祀った崇道天皇社の深い森が、古代の佇まいを残していた。非業の死を遂げた親王の怨霊を鎮める神社だが、そんな歴史など気にもとめず、小さい頃は境内で草野球をしては、神主から叱られたものである。
 10歳になった頃、父はサラリーマン生活を捨て、小さな会社を始めた。母と従業員1人のまさに零細ベンチャーである。創業資金の調達や販路の拡大など、当時の私には理解出来ないことばかりだったが、起業がどれほどの苦難と家族の犠牲を伴うものか、子供心にもおぼろげながら感じ、骨身に沁みていた。こうした体験とDNAが、40歳になってNTTを飛び出し、第二電電(現KDDI)を創業、その後のイー・アクセスやイー・モバイルといった巨大ベンチャーの立ち上げに繋がっている。
 奈良で高校を卒業してから、京都、アメリカで学び、その後の人生の大半は東京で過ごしているが、私の心の奥底には常に奈良の原風景がある。平城遷都1300年祭は、奈良という古代国家の中心都市が、世界国家・中国に独立の気概を持って見事に対峙したことを記念する行事であろう。今こそ超大国アメリカと大中華圏との狭間で、日本がリスクを負ってでも担うべき役割を果たす絶好の機会だと考える。このお祭が、そのスタートを象徴する歴史的イベントとなるよう、成功を心より祈るものである。
 
 

 

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