誕生日の電話 |
朝の6時1分。家の電話が鳴った。こんな早くにどこから?緊張して電話に出ると母の声。
「おはようさん」
まただ。いつも出勤前に電話をかけてくる。電話は携帯にしてくれとあれだけ言っているのに…。
しかし、次の瞬間そのイライラは、自責の念に変わった。「用事やないんやけど…お誕生日おめでとう」。あっ、今日か!
「あんたが生まれたんは8時17分や。あの時はほんとに楽なお産やったよ。そやけど、あんたも節目の時やから身体に注意しなさいよ。それだけ」。礼を言う間もなく電話は切れた。
子を一人産むのに、楽な出産などあるはずはない。どんな場合も母子とも命がけだ。子の誕生日に一番祝うべきは親の方であろう。
最近めっきり弱ってきた母に、もしもの時に備えて携帯電話を買って渡した。家族は無料だからと何度言っても、家の電話にかけてくる。所在を確かめて安心したいのだろうと思う。高齢者の安否確認とはよくいうが、子の安否をこまめに知らせることが一番の親孝行なのかも。
そういえば、昨年の今日も同じ事を考えたっけ。来年こそはひとこと言えるようにしたい。
「ありがとう、産んでくれて」 |
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