イチジクづくりのポイント


1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
生育過程








発芽

着果・果実肥大期







落葉期

休眠期






新梢伸長期

成熟期



休眠期
管理作業



せん定
挿し木
芽かき 敷わら 誘引

摘心 収穫出荷







土づくり 元肥









追肥







土づくり
病害虫の発生












センチュウ 疫病




























スリップス・カミキリ
カイガラムシ・ハダニ















1.開園・植え付け
(1)品種
 イチジクの品種は夏果専用種と秋果専用種、夏秋兼用種に大きく分けられる。我が国では、イチジクははとんど生食用として消費されていることから、果実が大きく糖度の高い豊産性の桝井ドーフインが広く普及している。近年では、直売や家庭果樹、加工用等色々な面白い品種がたくさん見らますが、ここでは桝井ドーフイン用いての栽培管理について記述します。桝井ドーフインは夏秋兼用種ですが、一般には秋果だけを収穫しています。

(2)苗木の養成
 苗木は、購入苗を用いるか、挿し木により苗木を養成します。穂木は生育の良い圃場から前年に伸びた充実したせん定枝をとり、ビニール袋に密閉し冷蔵庫で保管もしくは冷涼地で砂に埋めて保管します。
 挿し木は3月下句に、穂木を20cm(2~3節)に切断、土中に2/3挿し、土をよく押さえておきます。

(3)圃場の準備
 排水が良好で日当たりの良い圃場を選びます。また、くぼ地や谷筋など冷気の停滞する場所はさけます。長年、畑作利用されている水田では、センチュウなど害虫の影響を回避するために、一度水稲を栽培した後、イチジクを導入することが望ましいです。
 イチジクは酸性土壌を嫌うので、PH7.0を目標に、苦土石灰やようりんを施します。
 イチジクは酸素要求量が高く、過湿に弱いため、できるだけ高畝にし、排水路を整備しておきます。畝幅は盃状で3m~4m、一文字整枝で2.5mとします。

(4)植え付け
 植え付けは厳寒期をさけ、3月中、下旬に行う。畝の中央に盃状形で3~4m(82本/10a)、一文字整枝で、4m(100本/10a)の間隔で植え付けます。
 植え付け1カ月前までに植え穴などの準備しておきます。深さ50cm、直径1~1.5m程度が望ましく、木一本当たり完熟堆肥20kg、ようりん、苦土石灰を各3kg程度、混和し埋め戻しておきます。
 植え付けに際しては、盛り土をしてその上に根を拡げ覆土する。決して深植えにならないように注意します。苗木の先端を切り返し(イチジク紛40cm、ウメ、モモ約50cm)、支柱を立て、敷わら等で乾燥を防止します。
 植え付け後は、適時に化学肥料の施肥と潅水、除草を行います。また、敷きわらや黒マルチをして土壌の乾焼と雑草が生えるのを防ぎます。


2.整枝・せん定
(1)盃状形整枝と一文字整枝の特徴
 本県においては、現在、この2つの整枝法が普及しています。
 盃状形整枝は自然に近い形状であり樹勢が強く、収量が多い、また風害・凍害等を受けにくい長所があるが主枝や結果枝の方向が不定形で、防除・収穫など作業性に難点があります。
 一方、一文字整枝の利点は、最も労力を要する収穫時の作業が早く、風害を受け難く、圃場の立地条件や経営面積の多い農家では有利な整枝法ですが、生育が悪く、凍害を受けやすいのが欠点です。


(2)盃状形の整枝
 主枝は3本仕立てとし、主枝角度は45度にとり、主枝1本当たり亜主枝は2~3本とします。植え付け1年目の夏に、添え木などにより主枝を広げ、樹冠の拡大に努めます。2年目の冬に1m程度の長さに主枝を切り返す。3年目に亜主枝を確保し、樹形は完成します。

(3)一文字整枝
 植え付け1年目の夏に添え木をして5.字に誘引します。2年目の春に水平の支柱に主枝を誘引し、樹形は整う。水平にとった2本の主枝に、結果枝を20cmの千鳥に配置します。主枝の先端は樹勢の低下を防ぐため立てておきます。

(4)せん定
 整枝・せん定は、厳寒期をさけ、2月中~下旬に行う。樹形が完成すれば、基本的には結果母枝を2~3芽残してせん定し、毎年同じ位置で結果枝をつくります。主枝が凍霜害やカミキリの食害などで痛んでくれば、基の方からでた芽を残し、主枝を更新します。


3.結実管理
(1)新梢管理
 盃状形では、1樹当たり総40本の結果枝(新梢)をできるだけ均等な枝の配置になるよう考慮して残し、不必要な芽は早期に取り除きます。一文字整枝では、原則として外芽を残すようにします。


4.施肥・土壌管理
(1)敷きわら・マルチ
 土壌の乾湿の変化を少なくし、雑草が生えるのを抑える目的で、敷きわらや黒ポリマルチを行います。産地では、図のように、わらとポリを併用して利用しています。
 敷きわらは夏季の土壌の昇温を抑えることと、雨の跳ね返りによる疫病の発生抑制に効果があります。また、わらが腐って土壌の有機物補給にもなります。ただ、春先の地温の上昇を図るために、敷きわらは5月以降に行います。

(2)潅水・排水
 土壌が乾燥すれば積極的に潅水を行います。とくに、夏季の果実肥大期には、定期的に潅水します。畝間潅水を行う場合は、長時間水を溜めないよう注意します。できるだけ、潅水チューブを設置し潅水を行うのが良いでしょう。
 イチジクは、葉が大きく蒸散も多いので水が必要ですが耐水性が弱いので、水が停滞することのないよう、充分な排水対策を講じておきます。(水田果樹導入のためにを参照)

(3)施肥
 好適土壌酸度は中性から弱アルカリで、石灰の吸収量も多いことから、土壌改良のため石灰質資材の施用は重要です。苦土石灰100kg/10aを基準に土壌酸度も考慮して施用します。完熟堆肥を2t/10a程度施し、土づくりに努める。施肥は表を基準に土壌条件や樹勢により加減します。元肥は肥効を長く維持させるために、有機質主体の肥料を施用します。追肥も肥効を持続させるため、緩効性肥料を利用すると、施肥の回数が少なくできます。

樹齢 成分 元肥
(1~2月)
追肥
(6月~8月)
合計
2年







3年







4年





10
10
10
成木





16
14
16

5.病害虫防除
(1)疫病
 雨が多いと発病しやすくなります。とくに、雨の跳ね返りにより病原菌が雨滴とともに葉、果実、新梢に伝染するので、敷きわらを行い、下垂枝をせん除するか吊り上げます。また、園の風通しをよくします。梅雨期には、鋼水和剤を散布して予防します。

(2)カミキリ
 6月以降、成虫の発生期に囲場を見て回り捕殺します。産卵場所を見つけて、針金で幼虫をつぶします。成虫の飛来が多い場合は、殺虫剤を樹幹に塗布します。枯死樹は伐採、被害枝は切り取り焼却します。

(3)センチュウ
 長年栽培しているとセンチュウが増加し、樹勢が弱ってきます。園全体に樹の衰弱がひどい場合は、いったん水田に戻した後に、再度、苗木を植え付けます。

(4)鳥害対策
 収穫期には、鳥害が著しいので、防鳥ネットを園全体に設置します。


6.気象害対策
(1)凍霜害
 桝井ドーフインは、在来種である蓬莱柿などに比べて耐凍性が弱く、幼木はとくに弱いです。また、低温障害は厳寒期より樹液が動き出す春先に起こりやすいです。凍霜害の心配のある地域では、労力はかかるが、稲わらを樹全体に巻くと高い防止効果があります。

(2)台風対策
 イチジクは根が浅いので、台風の強い風により、倒木しやすいです。盃状形整枝はとくに風に弱いので、強い風が心配される場合は、杭を打って主幹や主枝を固定しておきます。また、倒木しても、速やかに戻して杭で固定すれば、大抵は問題なく根づきます。大雨により冠水すれば、ポンプなどを利用して速やかに排水します。


7.収穫・出荷
 イチジクは日持ちのしない産物であることから、個人で市場へ出荷しても有利な販売は期待できません。既存の出荷組織に加入するか、仲間を集めてグループ化して販売することが望まれます。また、産直や契約販売など、収穫が始まるまでに充分、売り方を検討しておくことが重要でしょう。


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