はじめての万葉集


はじめての万葉集
国栖(くにす)らが 春菜(はるな)摘(つ)むらむ 司馬(しま)の野の
しばしば君を 思ふこのころ
作者未詳
巻十一九一九番歌
国栖たちが春の菜をつむという司馬の野ではないが、しばしばあなたを思うこの頃よ。
司馬の野の春菜摘み
 「春」というと、日差しが暖かくなる三月や桜の花咲く四月が思い浮かぶのではないでしょうか。一方で「新春」等の言葉は一月に使います。でも、一月はまだまだ寒くて、あまり「春」らしい感覚がありません。
 古代日本に中国式の暦が導入されたとき、一年を四つに分ける考え方も入ってきました。一月~三月が春、四月~六月が夏、七月~九月が秋、十月~十二月が冬というもので、新しい一年が始まる一月に「新春」というのもうなずけます。もともと月の運行と中国大陸の季節感から作られた暦でしたので、日本列島での体感とは異なる部分もあったようです。さらに、現在は太陽の運行をもとにした暦を使っており、旧暦とは約一カ月のずれがあります。一月は現代の暦でいうと二月頃にあたりますから、古代の一月は体感としては梅の花咲く「早春」と考えられます。
 そんな古代の「春」には、女性たちが菜摘みを行いました。一年の最初に芽吹いた「春菜」はいわば植物の生命力の象徴であり、それを摘んで食べることで、生命力を体内に取り込むことができると考えていたようです。現代の日本でも、一月七日に春の七草を摘んで粥にして食べる風習が残っています。
 この歌では、とくに吉野の「国栖」が菜摘みをする場面が表現されています。彼らは『日本書紀』に独特の風俗を持つ人々として描かれていますが、司馬という地が現在のどこにあたるかはよくわかっていません。
 この歌の主意は、しばしばあなたを思う、という部分にこそあります。「しばしば」を導き出すたとえとして、「司馬」での春菜摘みが詠まれています。一心に菜摘みする女性のイメージと重なりながら、相手への思いが伝わってくるように思います。
(本文 万葉文化館 井上 さやか)
万葉ちゃんのつぶやき
国栖奏(くずそう)
 吉野町南国栖の浄見原神社(きよみはらじんじゃ)で古式ゆかしく行われる年中行事です。応神天皇が吉野行幸の折、国栖人(くずびと)が一夜酒を献上し、歌舞を奏したことが始まりとされます。舞や笛、歌の奏者が神官に導かれて舞殿に登場し、朗々とした奏者の歌声とともに、鈴の音が冷えきった空気にこだまして、参拝者の胸に古代の息吹をよみがえらせてくれます。
国栖奏のようす
国栖奏のようす

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2月10日(金曜日)(旧暦1月14日)13時~
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