奈良祭時記


奈良祭時記
田原の祭文(さいもん)・祭文音頭(さいもんおんど)・おかげ踊り
奈良市 田原地区
奈良市田原地区に伝わる無形民俗文化財の継承活動を行う田原地区伝統芸能保存会 顧問 岡井稲郎(おかいいなお)さん、会長 市井康孝(いちいやすたか)さん、副会長 松本多司(まつもとまさじ)さんほか保存会の皆さんにお話を伺いました。
3月のおんだ祭で奉納される祭文
3月のおんだ祭で奉納される祭文
田原地区の伝統芸能とは?
「祭文」は、本来は祭りの時に神仏に対して祈願や祝詞(のりと)として用いられた願文(がんもん)を指しますが、のちに信仰を離れ、説教節などの物語を語る芸能に発展したものです。語り手とはやし手が一組になり、手に錫杖(しゃくじょう)と法螺貝(ほらがい)をもち、語り手が演目を独特な節回しで語り、はやし手は最初や合間に「デロレン」とはやし言葉を入れます。明治期まで伊勢参拝の時に盛んに行われていた「おかげ踊り」と一緒に毎年3月、南田原の天満神社か日笠の今井堂天満神社で行われる「おんだ祭」で奉納しています。

「祭文音頭」は、田原地区各地で8月に行われる夏祭りで踊ります。

境内で御幣を手に踊るおかげ踊り
境内で御幣を手に踊るおかげ踊り

保存会の活動は?
「祭文」も「おかげ踊り」も一度継承が途絶えていたので、できる人が少なくなっていました。唯一地区で覚えていた高齢の人たちが昭和50年代に披露した時、地区でそれを復活し継承しようという動きがおこりました。奈良市無形民俗文化財として指定されたこともあり、昭和58年に「祭文」「祭文音頭」「おかげ踊り」を地域で継承していくため、保存会を結成しました。

今は、田原地区19町の40人ほどで活動し、毎週木曜日に2時間程度練習をしています。

7~8人のグループで「祭文」も「祭文音頭」もできるように練習していますが、「祭文」は声の出し方や節の取り方が難しく、語り手ができるようになるには長年の練習が必要です。今、「祭文」の語り手ができるのは、3人だけです。
継承のための取り組みは?
地域の子どもたちが継承してくれるように、18年前から田原小中学校で教えています。毎年、小学4年生が運動会で「祭文音頭」を練習して、生徒さんや保護者の人たちがその音頭にあわせて踊ります。

現在、「祭文」は日本中で奈良市田原地区でしか継承されていません。活動の成果を披露することは励みにもなります。田原地区の伝統芸能を知ってもらうきっかけに、3月のおんだ祭での奉納を見に来て欲しいです。


お話を伺った保存会の皆さん
お話を伺った保存会の皆さん
行ってみよう!
天満神社へは
JR・近鉄奈良駅から奈良交通バスで「茗荷町」バス停下車東へ約1km
奈良市文化財課
TEL 0742-34-5369
「祭文」と「おかげ踊り」が奉納されるおんだ祭は、天満神社か今井堂天満神社で毎年交互に行われます。今年のおんだ祭は3月上旬に天満神社で行われる予定です。
 
無形民俗文化財については
県文化財保存課
TEL 0742-27-9864
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