はじめての万葉集


はじめての万葉集
石(いは)ばしる 垂水(たるみ)の上(うへ)の さ蕨(わらび)の
萌(も)え出(い)づる春に なりにけるかも
志貴皇子(しきのみこ)
巻八 一四一八番歌
岩の上をほとばしる滝のほとりのさ蕨が萌え出る春に、ああなったことだ。
春のよろこび
 寒い冬が終わり、日差しが暖かく感じられるようになると、人間だけでなく動植物たちもどこかほっとしているような気がします。冬眠から目覚めたり、新芽が出たりすることから、そう感じるのかもしれません。
 この歌は、そんな春の訪れを祝福するような歌です。滝のほとりでワラビを見つけ、ああ、もう春になったんだなあ、と実感し感動したようです。
 ワラビはシダ植物の一種で、まだ葉が開く前の若芽を摘んで、春の山菜として食用にします。わらびもちも、もともとはワラビの根から採ったデンプンで作ったことからその名が付きました。ただし、ワラビのデンプンは精製に手間がかかり原料も少ないことから、現代では本ワラビ粉を使ったわらびもちはなかなか味わえない高級品といえます。
 この歌の題には「志貴皇子の懽(よろこ)びの御歌」とあります。「懽」という文字は、平安時代の辞書である『類聚名義抄(るいじゅうみょうぎしょう)』にヨロコフとよまれていて、春の到来を喜ぶ歌であったとみられます。歌を詠んだ時の状況はよく分かっていませんが、新春を祝う宴席で詠まれたのではないかともいわれています。
 志貴皇子は、天智天皇の皇子の一人で、政治的な面では目立った活躍はしませんでしたが、そのぶん歌の名手として高く評価されていたといわれます。七七〇年に六男の白壁王(しらかべのおおきみ)が天皇(光仁(こうにん)天皇)になったことから、死後五十年以上たって※春日宮御宇天皇と追尊されました。
 この歌が巻八の冒頭に位置しているのは、『万葉集』が編さんされた奈良時代から見て古い時代の春の名歌だからというだけでなく、そんな時代背景も影響を及ぼしていたのかもしれません。
※「かすがのみやにあめのしたしらしめししすめらみこと」と読みます
(本文 万葉文化館 井上さやか)
万葉ちゃんのつぶやき
春の若草山
 若草山は全体が芝生で覆われており、三つの笠を重ねたようなので三笠山ともいいます。桜の名所としても有名で、4月になるとソメイヨシノやヤマザクラが咲き誇り、春の訪れを感じさせてくれます。冬季は閉山していますが、毎年3月第3土曜日から開山されますので、穏やかなこの季節、ぜひ足を運んでみませんか。
(要入山料)
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