佐藤薬品工業株式会社(橿原市)
製品への信頼は「ヒトづくり」を大事にする風土から
「大和売薬(やまとばいやく)」発祥の地・御所市で1947年に創業した佐藤薬品工業株式会社。県営球場の名称としても知られている佐藤薬品工業は、医薬品の受託加工の分野では業界屈指だそうです。
佐藤薬品工業がリーディングカンパニーとなった理由は、どこにあるのでしょうか。
「信頼に応える」ことの積み重ねが会社を支える
まずは佐藤薬品工業の事業について、総務部係長の坂口真喜子(さかぐちまきこ)さんにお話を伺いました。
「佐藤薬品工業が順調に事業を拡大してきた理由は、第一に機器設備を整えてきたこと、そして技術力を磨き続けてきたことです。せっかく製造の依頼を受けても、『機器もないし、技術もないのでできません』では話にならないですよね。委託元の様々なニーズに応える、その積み重ねで信頼を得ているんだと思います。」
医薬品受託加工メーカーとして製剤技術の向上に力を入れてきた佐藤薬品工業は「機器の種類の多さ」と「技術力」で、医薬品の委託元からは厚い「信頼」を得ています。
その「信頼」から、東日本大震災で東北地方の製薬会社が被災した際、「代わりに製造してほしい」と佐藤薬品工業に依頼があったそうです。
「今まで作ったことのない薬を急遽作ることになったので、とにかく大変でした。でも、『せっかく佐藤薬品工業を頼ってくれたお得意様の期待に応えたい』という気持ちで生産を引き受けさせていただきました。それも機器と技術力が揃っていたからできたことですね。」
1964年導入の全自動カプセル充填機。
当時業界で稀少だった機器を、佐藤薬品工業はいちはやく導入した
「モノづくり」は「ヒトづくり」から
佐藤薬品工業を支える「強み」をつくるのは、「機器の種類の多さ」「技術力」だけではありません。
「モノづくりはヒトづくりから」という経営者の考えから、佐藤薬品工業は社員教育の一環として「モラロジー教育」を採用しています。
「モラロジー教育」とは「モラル(道徳)」と「ロジー(学問)」を組み合わせた新しい学問分野の名称で、「感謝」の心、「自立」の心、「思いやり」の心を育てることを目的として行っています。毎月1,2時間程度の座学、そして数年に一度の宿泊講習があります。
「座学では講師の方の経験談なども聞くことができますが、落ち込んでいる時など、『そういう考え方もあるんだ』『もう少し頑張ってみようかな』と思えます。製剤と直接関係があるわけではありませんが、自分に足りない部分を補ってくれるのでとてもありがたいです。」
(坂口真喜子さん)
また、佐藤薬品工業には「提案表彰」という制度があり、これが社員の意識を刺激しているそう。仕事の中で「こうしたら無駄がなくなるのでは?」というアイデアを社員それぞれが年間4、5件提案し、優れたアイデアを出した社員を表彰する制度です。
「『ファイルで整理したら見やすくなった』というような小さなことでよくて、コツコツと改善しています。この制度のおかげで常に何かを考えて仕事をしています。製造工程の些細なムダでも、改善すれば利益になるかもしれません。社員の気づく力・考える力を養い、佐藤薬品工業の発展につながる制度だと思います。」
地域貢献が、新たな開発につながる
佐藤薬品工業は毎年夏に「さとう納涼感謝祭」を開催しており、お得意様や地域の方が1400名近く訪れるそうです。地域にすっかり浸透したこのお祭りなどを通して地域の方々との親交を深めています。そして、近隣の地域の方から休耕田をお借りし、薬効植物を育てているところだそうです。
現在、佐藤薬品工業はサプリメントをはじめとした健康食品の企画開発にも力を入れており、その原料の一部として、自社栽培により収穫した薬効植物が使われています。
「その試作に使う薬効植物は地域の方に貸してもらった休耕田で育てています。佐藤薬品工業は受託加工が売上の7割を占めていますが、ゆくゆくは自社製品と受託加工の売上を半々にしていけたらなと。そして自社製品の売上を伸ばす一端を担うべく立ち上げられたのが『SGI(Sato Girls Item)』で、文字通り女性だけのチーム。月に一回、いろいろな部署からメンバーが集まって『女性目線の商品企画』のための情報交換をしています。」
「SGI」発の商品として、一日分の鉄分を摂ることができるクッキー「Fe Chocobi(フェチョコビ)」や化粧品などを販売しており、今も新たな健康食品を開発中だそうです。
(SGI発の商品「Fe Chocobi」)
(「スパークリングムース」)
支えてくれる会社だから、働き続けたい 女性ロールモデル松本美也子(まつもとみやこ)さん
次に、品質管理部主任の松本美也子さんに働く女性としてのお話を伺いました。
- 松本さんにとって、この会社の良さはなんですか。
「とにかく人がいいところです。入社当初は製造部に所属していて、そこでは錠剤の目視検査を行っていました。集中力がいる作業で疲れるのですが、周りの親切さで乗り切れましたね。上司からの接し方が分け隔てなく、休憩時間に一緒にお茶をしていました。『大丈夫か』『仕事しててどうや』と、毎日気遣いの声をかけてくれたのもありがたかったです。」
-
今は品質管理部所属ということですが、キャリアを重ねてからはどうですか。
「昔と違って今は自分が上司の立場なので、過去に自分が嬉しかった経験と照らして、声掛けを意識しています。『おはようございます』と自分から率先して言ったり、社長もよく言っていますが、とにかく挨拶を大切にしています。一緒に働いているメンバーに助けられているので、忙しい中でも楽しく仕事ができるよう自分なりに工夫しています。」
(松本美也子)
女性の頑張りを会社がサポート
- 働く上での、佐藤薬品工業ならではの取り組みなどはありますか。
「佐藤薬品工業は、会社のすぐ近くに『にこにこ園』という託児所を設置・運営しています。急な残業や子どもの発熱なども、会社とつながった託児所が融通を利いてくれるので、安心して預けられます。また、他の保育所に預けている他の社員も、短期で預けることができます。女性の活躍推進支援を目的に、育休取得後に職場復帰しやすい環境を整えるために運営されています。」
佐藤薬品工業では女性社員の育休取得率がほぼ100%、ここ数年はみな職場に復帰しているそうで、子育てをしながら働くのが当たり前の環境となっています。そのため育児休暇はもちろんのこと、時短勤務や子供の看護休暇も取得しやすい制度が整えられているとのこと。
「復帰して頑張っている女性社員が多いので男性社員もみな理解がある、という面もあります。子供がらみの休暇・早退で職場の雰囲気が悪くなる…なんてこともないですね。」
(「にこにこ園」の外観と内観)
- これから就職する後輩へのメッセージをお願いします。
「働きに出ると、自分にオンオフを付けることができます。家で嫌なことがあったとしても、会社に来ていろいろな人と接していると、忘れるではないけれど、切り替えができるんです。仕事で人と接して、家に帰って家族と接してという形が自分には合っています。もちろん大変ですが、皆が支えてくれるのでうちに来ればきっと大丈夫ですよ。」
編集後記
-大学生プロジェクトメンバーより-
佐藤薬品工業には、働き続きやすい環境、社員同士の温かいコミュニケーションが当たり前のようにありました。その背景には、にこにこ園の設置、休暇・勤務制度の充実など、会社が社員の生活のための努力を怠らず、よりよい仕組み作りを徹底していることがあるのだと思います。
また、製薬会社には男性が多そうなイメージがありましたが、佐藤薬品工業には女性も多く、製造部・品質管理部・開発部だと女性のほうが多くなっています。「SGI」の活動についてもお伺いして、女性の活躍を実感できる会社でした。
「健康」はいつの時代も変わらない人間のテーマですが、その「健康」を生み出すことができ、自分自身も「健康」に生活できる会社です。人の「健康」に貢献したい、バリバリ活躍したい!という方は、ぜひEXPO会場にお越しください。
佐藤薬品工業株式会社
所在地 橿原市観音寺町9-2
従業員数 569人
事業内容 医薬品の受託加工、製造、販売
HP http://www.sato-yakuhin.co.jp/
取材担当 奈良女子大学3年生 岡田さくら、岡本夏美
記事作成:平成30年10月25日