奈良祭時記

県民だより奈良 平成31年2月号

奈良祭時記
六県(むつがた)神社の御田植祭(おたうえさい)(子出来(こでき)オンダ)
川西町 六県神社
川西町保田(ほた)の六県神社で行われる、五穀豊穣と子孫繁栄を願う伝統行事。
保田地区自治会長の森本修司(もりもと しゅうじ)さんにお話を伺いました。
子どもたちが御仮屋につられたミニチュア農具を奪い合う
子孫繁栄を願う珍しいオンダ
 田植えの所作を演じて五穀豊穣を願う御田植祭(オンダ祭り)は全国的に行われていますが、六県神社の御田植祭は妊婦が出産する所作があることから「子出来オンダ」とも呼ばれる珍しいものです。
本厄の男性が妊婦を演じる
 祭りは、本厄(42歳)の男性が中心となって8つの所作を演じます。まず、「水見回り」「牛使い」「施肥(せひ)」「土こなげ」「田植」「田螺(たにし)拾い」という6つを、それぞれ2人1組の農夫役が演じます。
 各所作の後に、周囲で見ている子どもたちが農夫に群がります。子どもたちは風雨を表し、農夫はそれに耐える稲穂を表します。毎年20人くらいの子どもが参加します。
 その後、祭りのメインとなる「妊婦の弁当運びと安産」が演じられます。本厄の男性が手ぬぐいを被り、化粧をして、子どもに見立てた太鼓を腹に入れて妊婦に扮(ふん)します。
 妊婦は、神主と対座して問答した後、カエルやヘビをよけるしぐさをしながら拝殿を回って、夫に弁当を運びます。その後、神主の所へ戻ってきた時に妊婦が産気づきます。出産は太鼓を腹から放り出して表現します。
 最後に、烏帽子(えぼし)を被った農夫が拝殿を回って歌いながら米を蒔(ま)く「種蒔き神事」が行われて行事は終了します。
継承のための変化
 子出来オンダは、時代に合わせて形を変えながら継承されてきました。戦前までは同じ敷地内にある富貴寺(国指定重要文化財)の宮座(寺座)で行われていた行事でしたが、戦後、自治会へと行事の主体が代わり、六県神社で行われるようになりました。今でも、行事終了後に稲害避けとして配られる牛玉宝印の護符には「富貴寺」の文字が刷られています。
 行事の日時も以前は2月14日の20時からでしたが、祝日の2月11日に変更し、子どもが参加しやすいように時間も早めました。また、本厄の男性だけでは人が足りないので、地域の若い男性も役を演じてくれています。
 さまざまな工夫を加えていますが、行事の内容やセリフは昔から変わっていません。これからも地区全体で協力しながら継承していきたいです。
自治会長の森本さん
自治会長の森本さん
行ってみよう!
毎年2月11日(祝日)18時~
六県神社
川西町保田30
川西町教育委員会事務局
電話 0745-44-2214
六県神社
無形民俗文化財については、県文化財保存課
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