自然のもの・地域のものを活かした商品作りで、地方にもっと活気を。
企業基本情報
- 会社名:チアフル株式会社
- 創業:2016年
- 業種:地域特産品の企画・販売、地域産業の開発・調達、その他
- 住所:奈良市六条西3丁目20-4-1
- TEL:0742-42-6268
- URL:https://www.jiwajiwa.jp
チアフル株式会社の特徴を教えてください
チアフル株式会社では、「にっぽんをもっと元気に。地方にもっと活気を。人々をもっと健やかに」をモットーに、私の出身地でもある奈良を拠点に、地域の農林産品に新しい販路を作り出し、障がい者や高齢者といった就労弱者の方々と共にものづくりをして発信していく取り組みを続けています。
現在当社の主軸となっているブランド「jiwajiwa」では、奈良の特産である大和当帰(ヤマトトウキ)を使った「お風呂のハーブ」をはじめ、自然のもの・地域のものを活かした商品作りに励んでいます。
起業のきっかけや思いを教えてください
「地域の資源を活かすことで地方を活性化させ、都会と地方の格差を縮めたい」
「都会暮らしに疲れた人たちに、自分の心と身体に向き合うためのリラックスした“時間”と“余白”をお届けしたい」
と思ったことがきっかけでした。
神戸の大学を卒業後、大手住宅メーカーに就職し、3年間の営業経験を経て宣伝部に配属となりました。
出張のたびに、その地域特有の自然や資源が残っていることに魅力を感じましたが、地方の方々は口を揃えて
「人が来ない」「お金が回らない」と嘆いていました。
ちょうどその頃、私は30歳を目前にキャリアプランを再考していた時期でした。
周りを見渡すと、結婚・出産を経たことでキャリアの継続が難しくなっている人や、定年退職後の再雇用でキャリアがリセットされてしまう人たちが多く目につきました。
しかし、結婚・出産や、年齢を重ねることで、その人自身のスキルや知識、パワーが失われるとは思えません。
それらが足かせとなってしまう社会の制度や風潮に受け身でいていいのだろうか?
無理をせず、自分に素直に、自分の意思で、内から湧き上がってくるものを持たなくてはいけないのかもしれない……、とモヤモヤは募るばかりでした。
また、キャリアプランだけでなく、身体の不調にも悩まされていました。都会に憧れて東京に行ったのに、東京での生活に疲れていたのです。特に冷え性が顕著だったため、少しでも改善したいとの思いで、普段から様々な入浴剤を試し、気がつけばその数はなんと100種類を超えていました。
多くの入浴剤を試すなかで気がかりだったのは、パッケージの裏面に列挙されている化学成分の数々。食べ物や化粧品には自然派やオーガニックのものが増えているのに、なぜ自然派の入浴剤は少ないのだろう? と疑問に思っていました。
そんななか、地元奈良で毎年開催されているグルメイベント「シェフェスタ」で、大和当帰(ヤマトトウキ)に出会いました。
大和当帰はセリ科の植物で滋養強壮や婦人病薬として多用されており、葉はお茶やドレッシング、根は漢方薬として製薬会社が使用していますが、茎の部分は硬く雑味があるため用途が定まっていませんでした。言ってみれば使い道がない茎の部分。それを乾燥させ、不織布のお茶パックに入れた簡素なものでした。
帰ってから早速試してみたところ、それまで試してきたどの入浴剤よりもはるかに身体の芯からポカポカと温まり、
「自然ってこんな力を秘めているのか!」と驚き、ワクワクしました。
大和当帰が教えてくれた自然の力に触れ、「自分の手で、この自然のよさを広めたい!」と決心しました。
事業立ち上げのご苦労はなかったですか?
事業をゼロから立ち上げるということ自体が長く地道な作業。特に商品の販路が確保できないという致命的なことがありました。
その上、モノを作って売る商売である性質上、先にお金が出ていきますが、入念に計画を立てての起業ではなかったため、資金繰りについても分からないことだらけでした。
また、事業計画を立てても、その目標を達成することが思ったほど簡単にはいかず、先の見通しも立てることができませんでした。
どのように事業を軌道にのせていきましたか?
3ヶ月くらいのスパンでPDCAを回していくなかで、奈良県内だけで事業を完結するのではなく、目標を達成するには販路を都会にまで広めなければならないとの考えにいたりました。
そして販路拡大のために資材を完全オーダーできる業者を探したのですが、具体的な実績のない小規模事業者であるため軒並み断られて途方に暮れていたとき、入浴剤の原材料の生産者の方が東大阪の町工場を紹介してくださいました。
意外に身近な人からの情報に救われたわけです。そして近畿圏から販路を広げることができ、今では全国で展開しています。
また、自分一人の作業量に限界を感じ、発送などの事務を委託することにしました。そして、商社と取り引きをするために商品数を増やし、ラインナップの見直しなどを繰り返しました。そうしていく中で、徐々に人との繋がりや信頼性が増したことで融資を受けることもできました。
最初から計画が入念だったわけではないですが、やっていくうちに問題に直面し、その都度悩み、腹をくくれてきたというのが正直なところです。私は元来人に頼るのが苦手で、すべてをひとりで背負ってしまう傾向があるのですが、これらの経験から、身近な人の手を借りること、人と協力し合うことの重要性を感じています。
これまでの成果から見えてきたことは?
これまでの成果として、経済産業省女性起業家応援プロジェクト第5回「LED関西」や「ビジコンNARA2019」などで受賞することができました。また現在「jiwajiwa」の商品は、有名百貨店や有名ホテルでも取り扱いをしていただいています。
今後の目標についてですが、金銭的な面で言えば、創業当初は「早く黒字化したい」と漠然とした思いでした。
企業としては1億円の売り上げを出すことは必達だと考えていますが、創業から3年経った今は「まず丸5年になったときに5千万、できれば7千万円を超えていたい」
と考えています。
また、企業が利益を追求するのは当然のことですが、私は自分だけが利益を得るだけが目的ではなく、自分と関わる人たちに還元していくこと、地域と共生しながら利益を循環させること、を理想としています。
「もっとお客様にメッセージをお届けしたい」
「もっと地域産業の活性化をしたい」
「もっと商品の生産に携わる方々に還元したい」
……と、目標を挙げればキリがありません。
これから金融支援を受け事業拡大を目指すにあたり、パッケージや商品のラインナップは本当にこれでいいのか? 多くの人の手を借り、チームとして同じ方向にスピードもって走るにはどうしたらよいか? など、新たな課題も生まれています。
しかし、無闇に拡大はしないが妥協もしたくないので、今は足元を整える時期なのだと考え、どっしりと構えることにしています。
事業展開を目指す女性へのメッセージをお願いします
事業を立ち上げる上で、マーケティングやリサーチ、ターゲットの設定が必要ですが、モヤモヤを抱えている自分を「ペルソナ」に設定することで、等身大の女性としてお客さまのニーズがある商品・サービスを提供できるのではと思います。
事業として展開していくことで得られるコト、モノは他に多くあります。
関わってくれた人から認められること、関わってくれた人が喜びを感じてくれること、そして応援してくれる人が増えていくことです。
今は事業を前進させていくことが、自分だけではなく多くの人と一緒に幸せになるための手段なのだと感じています。
(9月25日 取材)
印刷用PDF(松本さん記事)(pdf 620KB)