スキルを活かした「仕組み」づくりで奈良の女性に活躍の場を
企業基本情報
- 事業所名:トトリエ洋裁教室
- 創業:2016年
- 業種:洋裁教室運営・作家プロデュース・作品販売
- 住所:奈良市富雄元町2-5-20トミオプラザ306
- TEL:090-7757-1948
- URL:https://totorier.com
トトリエ洋裁教室の特徴を教えてください
「いつかはちゃんと 習いたかった」という人たちに向けて、富雄で洋裁教室を開校しています。趣味で終わらせるのではなく作家として一人立ちできるまでに指導させていただき、さらに、育った生徒さんたちの商品プロデュースを行い、生徒さんのネットワークでその商品を量産・販売するところまでを手掛けています。
トトリエで仕事を創出し、収入を得ていただくことで、豊かさを生み出し、社会で循環させていく ところまでを見据えているのが、普通の洋裁教室とは違うところです。
起業のきっかけや思いを教えてください
独身時代、編み物をしながらテレビを見ていたところ、海外の貧困格差の問題が取り上げられており、先進国から送られてきた古着を着る人たちが映し出されていました。
しかし、貧しい国の人が待っているものを送るだけでは貧しさのループはなくならない。このとき、 「飢えている人がいれば、魚を与えるのではなく釣り方を教えなさい」という言葉を思い出し、自分の知識やノウハウを使って、誰かに生きる力を身につけてもらうようなことを仕事にしたいと考え始めたのです。
それからしばらくして結婚し、一人目の子を出産したのですが、これが思っていた以上にもどかしさ を強いられるものでした。いくら頑張っても達成感が少なく、孤独な生活で、 自己肯定感がどんどん下がっていきました。
そんな中 でも、隙を見ては自作の洋服などを作ってネット販売を細々とやり始めたのですが、これが思いのほかよく売れたのです。過去、有名アパレルブランドに勤務し、営業やブランディング、マーケティングなどを行ってきた経験があるため、 ある程度売れるのは想定内だったのですが、それでも、満たされない生活の中で高評価のレビューがたくさんついているのを見たときには、嬉しくて活力が湧いてきました。
そのときに、あの独身時代の思いがよみがえりました。子育てをしているお母さんたちに、私が技術やノウハウを提供して、楽しみながらそれらを身につけてもらいたい。技術やノウハウがあればきっと、何かあってもまた一歩踏み出せるし、得意なことで収入を得ることができれば、心が潤い満たされ、その人がいる場所には豊かで満たされた空気が流れていくはず。そんな豊かさの循環を生み出したい。
この思いがトトリエ洋裁教室の原点となっています。
事業立ち上げのご苦労はなかったですか?
今年の3月に第二子 出産のために教室を一時的に閉め、産休・育休に入りましたが、教室を開けることができなければ収入も減ってしまいます。 夫の家事分担や、親の協力もあったものの、 やはり頼みの綱は保育所です。
しかし、仕事を再開し上の子を保育所に預けるには、二人目の子も生後8週には預けなければいけないといわれました。まだ首もすわっていない、3時間おきに授乳させる必要がある息子を預けることに抵抗がありましたが、そうも言ってはいられませんでした。
自営業をやると自分で選んだとはいえ、産休・育休中に保障がなく、金銭的にも肉体的にもとてもしんどい時期でした。
どのように事業を軌道にのせていきましたか?
元々、ただ洋裁を教えるだけの教室にするのではなく、技術やノウハウを教えることで豊かさを循環させる仕組みづくりをしたいと考えていたことが功を奏しました 。
特に産休・育休という自分の思い通りに動けない状況が迫り、事業のメインだった洋裁教室をこれまで通りに維持するのは難しくなることは明白でした。そのため、生徒さんが成長する中で、生徒さんの作品を「製品」として販売できるまでにコンサルしていくことを事業のメインとなるよう、徐々にシフトしてきていたのです 。
まずは作品の完成までプロ目線でテコ入れをしていきます。そして完成した作品を量産する仕事もすべてうちの生徒さんたちに委託します。生徒さんにも様々な人がいて、作家として活躍したい人もいれば、ただただ縫う作業を好む人もいますから、関わる人たちにとって無理のない形で協力していただくことで、トトリエがひとつの「仕組み」として機能していきました。
実際に産休に入ったときには、それらがうまく循環し、私も「仕組み」から発生したコンサル料などを得ることができたお陰で、教室の存続が難しくなるような 事態は免れました。
妊娠・出産という、なかば強制的に人に頼らざるを得ない状況になったことで 、この「仕組み」が完成し、次のステップに進めたのだと感じています。
これまでの成果と今後の目標について教えてください。
育休中に「仕組み」がうまく回り、いよいよ復帰する段階になったとき、私がいない間に動き回ってくれていた生徒さんと面談をしました。そのとき、「もう無理です」と言われると思っていたのですが、意外にも「こんな感じなら続けられますよ、大丈夫です!」と言ってもらい、とても安心しましたし、いいカタチが出来ているなと感じました。将来的にトトリエは、ハンドメイド商品だけでなく、この「仕組み」を売っていくことを目標にしています。
また、私が育休の間に商品を作ってくれていた生徒さんたちには、相場よりも高い賃金を支払っていました。安い時給で決められたことをするのではなく、自分の得意なことを仕事にしてお金を得ていただく。すると、働いてくれている人たちのプライドや自己肯定感が高まったのです。
商品の金額設定は、安ければ買い手は「納得」するかもしれませんが「満足」 はしない可能性もあります。高い金額設定をすれば、作る側にそれだけの責任も生まれますし、買い手も「いいものを買った」という満足感を得られます。そういった物事は 全て循環しているように思うのです。何かが うまくいかないときって、その循環がどこかで途切れているのでは?という気がします。
今は、豊かさが豊かさを生むような循環的なアプローチがとてもうまく回っているように感じ、楽しくて幸せです。
どんよりした ネガティブと違い、ハッピーは軽いのですぐに飛んでいってしまいます。だから循環させなければならないのです。
私はこの仕事を通じて、幸せに「してもらった」のではなく、自分でハッピーを掴んだという実感があります。そんな幸せをほかの人につなげるために、これからもなるべく多くの人を巻き込んでいければと思っています。
事業展開を目指す女性へのメッセージをお願いします
本来自分がすべきこと・やりたいこと をきちんと選別してほしいと思います。
人から求められて、とりあえず出来るからやってしまい、思いがけず好評であれば 無理してでも続けてしまいがちです 。だけど、「それってしっかり自分軸で動けているの?」と振り返れば、受け身になって仕事をしているので、心が消耗してしまいます。
とりあえずやってみることは悪いことではないのですが、常に振り返りは必要で、自分の気持ちを素直にジャッジしてみてほしいです。起業において ルールは自分しかないので、自分をきちんと保てるルールをしっかり決めておく必要があります。
そもそも自分以外のところに軸を置くサラリーマン的な働き方に納得がいかないから起業を選択しているはずなので、もっとわがままになってもいいと思います!
(10月17日 取材)
印刷用PDF(碓氷さん記事)(pdf 664KB)