(1) 相談
(2) PCR検査
(3) 感染経路の推定
(4) 物資の確保・配付
(5) 県民・事業者への要請
① 相談件数
〇奈良県では、県内第1例目感染者発生の翌日(1月29日)に医療政策局健康推進課内に一般相談窓口を設置、また2月5日に医療政策局健康推進課内に「帰国者・接触者相談センター」
を奈良市と合同で設置し、県民等からの電話相談に対応するとともに、県の保健所(郡山・中和・吉野・内吉野)及び奈良市保健所の計5つの保健所において、相談に対応してきました。
〇相談件数の増加に伴い、「帰国者・接触者相談センター」においては、2月15日から回線の増加(1→2回線)、2月25日から夜間受付(17:15~21:00)、5月1日から24時間受付と回線の増加(2→6回線)と体制を順次拡充してきました。
〇新規感染者の増加に伴い4月上旬から相談件数が急増し、5月上旬までの間は、一般相談窓口及び「帰国者・接触者相談センター」では多いときで1日260件前後、人員1人当たりの受付件数は、多い日には日中61.3件、夜間には23.5件に上りました。
〇「帰国者・接触者相談センター」の回線の待ち時間等を測定できないため、混雑度等を検証することは困難ですが、センターに繋がらないために保健所へ電話相談したとの声が聞かれることから、相談急増期には回線数が充分とは言いがたい状況であったと思われます。
② 相談結果
〇「帰国者・接触者相談センター」において相談を受け、新型コロナウイルス感染症にかかる受診調整に繋がった件数は、全体の約7%であり、特に多かった時期や少なかった時期などの特徴はありません。
〇相談結果で最も多いのは一般医療機関への受診指導ですが、一般医療機関で受診を拒否されたため再度の相談があったケースや、複数回の相談を経て受診調整に繋がりPCR検査の結果感染が判明したケースが見受けられました。
〇 これは、当初国のガイドラインに従った相談対応を行っていたことが要因と考えられますが、このようなケースではPCR検査結果判明までの間に他人に感染させてしまう可能性を否定できないことから、感染が疑われる方から相談があった場合は、速やかに受診につなぐ必要があります。
〇 このため、奈良県では4月中旬以降、「帰国者・接触者相談センター」で受けた感染が疑われる方からの相談は必ず外来診察に接続するという方針の下、診察体制の拡充を図ってきました。また、5月23日からは、相談者の主訴を聞き取り、検査を希望される方のうち症状の有無にかかわらず感染リスクのある方については必ずPCR検査を受けていただくために受診調整を行うこととしています。
引き続きこの方針を相談や診察の現場に徹底するとともに、保健師等の専門職を確保し、相談者の状況に応じたきめ細かな相談ができる体制を整える必要があります。
〇4月上旬~5月上旬に相談件数が急増しています。
〇受診調整へつながった件数は、最も多い日が1日13件でした。
〇5月23日以降は、PCR検査を希望する方については、受診調整の上、概ね検査につないでいます。
① PCR検査の検体採取
〇 ドライブスルー方式の導入等の検体採取能力の強化により、迅速に検体採取を行うことが可能になりました。
② PCR検査の判定
〇 PCR検査判定機関の拡大、各機関の判定能力の強化により、検体採取から判定までの日数が短縮されました。
【参考】全国及び近畿府県の人口10万人あたりのPCR検査数、感染者数、陽性率
➣ 3月下旬からの感染者増加よりも1カ月以上早い2月中旬から相談件数は増えており、こうした相談件数増加の兆しをいち早く察知し、相談内容にきめ細かに対応できる相談員と電話回線の確保、相談受付時間の延長等、十分な体制を整えることが必要。
➣ 発熱などの症状がある方や感染の疑いがある方から相談があった場合は、必ず診察につなぐ、速やかにPCR検査を実施する、この徹底が重要。
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〇奈良県では、感染経路を特定し、その経路を遮断することが感染拡大防止に効果があるとの考えのもと、保健所の職員による丁寧な聴き取り等により、感染経路の推定に力を注いだ結果、新規感染判明時点では約半数の者が感染経路不明でありましたが、現時点では、感染経路が不明確で推定が困難な者は92人中6人(7%)となりました。
〇 感染経路推定分析からは、奈良県では大阪関連の感染が多いことや、感染者数の推移が大阪府と連動していることが分かってきましたので、今後とも大阪府での感染者の動向を常に注視し、県内での感染拡大の兆しを出来る限り予知して、効果的な域内感染防止策を講じることが必要です。
➣ 現時点で我々が持っている最大の武器は、PCR検査等により感染者を早期発見、入院・隔離して、次の感染を食い止めることと、感染のリスクが高い場所に近寄らない行動を徹底することであり、そのためにも感染経路の追跡は極めて重要。 |
現時点における感染経路の推定分析結果
〇感染経路が不明なものは、6人(7%)にとどまります。
〇勤務先、家族内での感染が多くなっています。
〇 感染経路を場所別にみると、大阪関連の感染が45件で全体の約1/2を占めています。
(勤務地大阪29件+大阪由来の家族感染10件+大阪での食事・集会参加6件)
〇 奈良県と大阪府の感染者数の推移は連動しており、大阪府の感染者の増加は約3~5日後に奈良県の感染者の増加に反映されています。
〇男性においては勤務先での感染(59%)が最も多く、次に家族からの感染でしたが、女性においては家族からの感染(34%)が最も多く、次に勤務先での感染となりました。
〇これは奈良県における女性の就業率の低さを反映していると思われますが、行動様式の違い等が感染のしやすさにどのような影響を及ぼすか、他府県の事例も踏まえて今後分析を進めていく必要があります。
〇居住地では、奈良市、大和郡山市、生駒市等、大阪府に近い北西部に集中しています。
〇人口10万人当たりの感染者数は、大和郡山市が最も多くなっています。
参考
〇大都市と密接な経済関係にある他県でも、大都市と隣接した市町村では感染者が多い傾向がありました。
※兵庫県市町村別感染者分布は兵庫県の公表資料をもとに、奈良県新型コロナウイルス感染症対策本部記録作成班が作成
※埼玉県市町村別感染者分布の出典は次のとおり( 埼玉県HP)
〇 奈良県では、医療従事者が安心して業務が行えるよう必要な医療物資の確保に努めました。
※医療物資:医療用マスク、医療用ガウン、フェイスシールド、防護服、消毒液、スワブ等
〇医療物資の在庫不足に備えて、県内医療機関等に対して医療物資の備蓄量や使用の状況把握を行いました。また、医療物資が枯渇すると予測された場合は、アラート報告として奈良県に届け出るように要請しました。
〇これらの現状把握とアラート報告を受けて、県の備蓄物品の放出、国へ緊急対応の依頼及び医療機関同士の一時融通対応体制の検討を行ってまいりました。また、特に不足する医療用マスク、医療用ガウン(代替品であるビニールカッパ含む)などについては、寄附を募集し確保に努めてまいりました。
〇併せて、医療機関等では限りある医療物資の使用に工夫を行ったことにより、物資が枯渇するといった危機的状況は免れました。
➣ 医療物資が枯渇することはなかったものの、それは民間企業等からの支援と医療現場における代替品の活用などの工夫によるところが大きく、平時から感染症まん延時を見据え、物資の備蓄を進めておくことが必要。
➣ 5月1日に物資調達・配付班が立ち上がったが、感染拡大の兆しを捉えて、早期に体制を整えるべきであった。 |
〇医療物資等の状況
1/31~ 医療物資在庫不足に備え、医療機関や医薬品卸・医療機器卸会社に対し医療物資の在庫状況、使用状況について調査を実施
・医療物資:医療用マスク(N95マスク、サージカルマスク)、医療用ガウン、フェイスシールド、防護服、消毒液、スワブ等
2/18~ 医療機関等に対し7日後にマスク等が枯渇すると予測される場合について、アラート報告を県に届け出るよう要請
・アラート報告:品名、個数(枚数)、枯渇予定日、供給希望数量等の報告
この後、国に対しマスク等の供給を依頼。供給が間に合わない事態に備え県が医療機関同士の物資の融通を調整
2/18 県から国に対し、サージカルマスク4万枚、N95マスク1万枚の供給を要請
2/26 医大からアラート報告(N95マスク1,200枚)再度、県は国に緊急対応を要請したが要請量全ての供給無。総合医療センターと一時融通(3月初旬に国から一部供給有。一時的に枯渇は免れた。)
3/11 中国アリババより寄附(N95マスク。20,000枚)
県内医療機関に配付し、一部を緊急時に備え、県で一時的に備蓄
3/13 厚労省から、2/18に供給要請したN95マスク1万枚が到着。備蓄分として保管
以降、厚労省から順次、供給有。寄附分を含め、医療機関等への配付や備蓄分として保管
4/24 庁内関係課で公募すべき医療物資の把握、選定を実施
日本赤十字社奈良県支部と公募の協力について協議
5/1 奈良県新型コロナウイルス物資調達・配付班設置
5/18~ 不足する医療物資(医療用ガウン、ビニールカッパ、医療用マスク等)の公募を開始
寄附された医療物資を医療機関等へ順次払出
公募以前のものも含み、寄附や県からの要請に基づき国から供給された医療物資を医療機関や社会福祉施設等に配付
医療物資以外にも医療従事者を支援する観点から寄附いただいたドリンク等を医療機関に配付
※ その他、医療従事者への支援物資として、消毒用物品・ヘアキャップ・ドリンク・マスクインナー等のご提供をいただき、配付しております。
※ N95には同等品であるKF94を含む
※ 受付・配付数には、県組織からの提供分も含む
1月17日 県ホームページにて情報提供、咳エチケットや手洗い等の呼びかけを実施
1月29日 第1回本部会議:奈良県初の感染者発生(武漢関連)
・過剰に心配せず、季節性インフルエンザと同様の感染予防
・武漢から帰国・入国された方で症状がある場合は医療機関受診
・奈良県公式ホームページのトップページを緊急版に切り替え
・デジタルサイネージ、ラジオ、SNS等による周知啓発
・商工会議所等に中小企業・小規模事業者を対象とした経営相談窓口を設置
3月2日 知事記者会見
・感染拡大防止を目的とした県主催等イベントの中止状況、県有施設の休館状況を発表
3月9日 第2回本部会議:県内2例目の感染者発生(大阪ライブハウス関連)
・風邪や季節性インフルエンザ対策と同様、一人一人の咳エチケットや手洗いの実施
・相談や受診の流れ(特定の方を除き、まずはかかりつけ医や近隣の医療機関に電話相談)、「帰国者・接触者相談センター」及び各保健所の相談窓口の周知
3月27日 第3回本部会議:新型インフルエンザ等特別措置法に基づく第1回会議
・「うつらないために」、3つの条件が同時に重なる場の徹底的な回避、咳エチケット、手指衛生、部屋の換気の励行
・「うつさないために」、感染者と接触してから2週間の外出自粛
・発熱等の症状がある方はかかりつけ医に、感染の不安がある方は「帰国者・接触者相談センター」に相談するよう周知
・県制度融資における無利子・無保証料での資金繰り支援をはじめ、事業者の相談窓口や各種支援制度を周知
4月9日 知事定例記者会見:4月7日に7都府県を対象とした緊急事態宣言
・大都市・海外への往来自粛
・大阪府、兵庫県から奈良県への通勤者の在宅勤務
・咳エチケット、手指衛生、部屋の換気の励行など「うつらない」「うつさない」取組徹底
・県立学校の「在宅での教育」の実施検討を教育委員会に要請
・介護施設・障害者施設・保育施設における感染予防への最大限の配慮
・イベント等の中止、延期、または規模縮小等の検討
4月16日 知事記者会見:4月16日に緊急事態宣言が全国に拡大(~5/6)
9日定例記者会見での要請に以下の内容を追加
・県内から大都市へ通勤されている方の在宅勤務
・繁華街の接待を伴う飲食店等うつる可能性の高い施設の利用自粛
・緊急事態宣言対象地域の住民に対する休業要請施設の府県境を越えての利用自粛
・症状のある方やうつされた心配のある方の自宅待機
4月17日 第4回本部会議
16日記者会見での要請に以下の内容を追加
・生活の維持に必要な場合を除き、県内も含めた外出自粛
・大型連休期間における不要不急の帰省や旅行など、府県をまたいだ移動の自粛
4月21日 第5回本部会議
・施設の使用制限(休業)等の要請(4/23~)
・新型コロナウイルス感染症拡大防止協力金及び緊急事態措置コールセンターの設置について周知
4月23日 知事定例記者会見:4月臨時県議会に提出する補正予算案の概要説明
・引き続き「うつらない」「うつさない」の徹底にあたり、接触しない、人と人との距離をとることを強調
4月28日 知事記者会見:臨時県議会終了後
・GW後半に向け、外出自粛、接触機会を減らすことについて、具体例を提示
・医療関係者や感染された方等への中傷や差別を行わないよう要請
5月5日 第6回本部会議:5月4日に緊急事態宣言が延長(~5/31まで)
・外出自粛の対象を大都市に限定、やむを得ない場合は、これまでの「うつらない」「うつさない」の徹底に加え、うつりそうな場所への訪問はできるだけ回避、通勤途上、勤務先でのうつらない配慮をするよう注意喚起
・感染予防の2つの徹底(手洗い、接触しない・距離をとる)
・施設使用制限(休業)等の要請の継続
5月13日 第7回本部会議:フェーズ2の判断と出口戦略の検討
・一般的な外出自粛要請の緩和(不要不急の大都市との往来自粛は継続)
・フェーズ2においてお勧めする行動規範を提示
・感染防止策を継続的に実行することを前提に、施設使用制限(休業)等の要請を緩和(5/15~)(クラスター発生事例があり、感染リスクが高い施設は休業要請を継
続)
5月15日 第8回本部会議:出口戦略検討会議委員の意見や近隣府県の状況を踏まえ、第7回本部会議での方針を修正(パチンコ店の使用制限(休業)等の要請を解除)
5月22日 第9回本部会議:5月21日に京都府、大阪府、兵庫県における緊急事態宣言が解除
フェーズ2の認識を示した上で、要請事項を「求められる行動規範」として提示
・不要不急の大都市との往来自粛、働き方のスタイルを見直して出勤するなどのお勧めする行動規範、感染予防のための3つの徹底、事業者における感染防止策の徹底など
5月29日 第10回本部会議:5月25日に全都道府県の緊急事態宣言が解除
・外出自粛の段階的緩和(6/1~)
・感染防止対策の徹底等を前提に、全ての施設に対する使用制限(休業)等の要請を解除(6/1~)
〇当初は国の方針に従い、過剰に心配せず、季節性インフルエンザ同様の感染予防の呼びかけにとどまっていました。しかし、その後の感染拡大を考えれば、本県を含め、全体的に当時は危機感が希薄だったと言わざるを得ないと思います。
➣ 感染拡大が収まっていても、油断せず、「うつらない」「うつさない」の徹底を呼びかけていくことが必要。
〇 これまでの感染経路の推定分析から、大阪関連のものが多いことが判明しています。
➣ 大阪での感染者判明の状況を常に注視し、県内での感染拡大の兆しをできる限り予知して、大阪への通勤者等に注意を促すことや、大阪通勤者のみならず、そこからの家族感染に対する注意喚起も必要。
〇 外出自粛や施設の休業要請等は、その要請への対応による社会経済活動への影響は少なくありません。
➣ 感染拡大防止策の徹底継続を前提として、全面的な要請だけでなく、部分的な要請なども検討すべき。
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