奈良祭時記

県民だより奈良
2020年9月号

奈良祭事記
吐山(はやま)の太鼓踊り
吐山の太鼓踊り
奈良市都祁(つげ)吐山町にある下部(おりべ)神社で毎年11月23日に行われる伝統行事です。吐山太鼓踊り保存会のみなさんにお話を伺いました。
奈良市 都祁吐山町
吐山の太鼓踊りとは
 毎年11月23日に下部神社の秋祭りで奉納される伝統行事です。江戸時代の写本が残っており、雨乞いを祈願する「雨乞い祈願の踊り」や、祈願が成就した御礼として行う「雨乞い満願の踊り」の奉納が起源とされています。
各地区から大太鼓が集結
 当日の午後、参加者は3つの組に分かれて、別々の場所から恵比須(えびす)神社を目指します。7つの地区(垣内(かいと))の幟(のぼり)を先頭に、大太鼓、踊り手、紙垂(しで)振りが続き、大太鼓を打ち鳴らしながら練り歩きます。
 恵比須神社前で隊列を整えてお祓(はら)いを受け、「辻太鼓」を演奏します。その後、下部神社へ向かい、「打ち込み踊」で各太鼓の調子をそろえながら境内に整列します。「打ち込み踊」は「干田(ひんだ)踊」へと続き、さらに「松虫踊」「宝踊」「長崎踊」「鎌倉踊」「糸屋踊」「家方(やかた)踊」のうち2~3曲を踊り、最後に「おさめ踊」を奉納します。
 踊り手は踊りながら太鼓を打ち、背面打ちなどの技を交えつつ、3人が交代して1つの太鼓を打ちます。歌、鉦(かね)、太鼓のテンポをそろえることが難しく、練習を繰り返して本番に臨んでいます。
 伝統をつなぎながら、新しい挑戦もしています。最も古い元禄6(1693)年の歌本には、現在奉納されていない曲も含めた18曲が記され、そのうち数曲を復活させました。また、多くの人に知ってもらうため、伝統行事を披露するイベントにも積極的に参加しています。
大太鼓
若い力で伝統をつなぐ
 水不足が解消したことで、雨乞いのための太鼓踊りは昭和42年を最後に終了しました。しかし、「地域に残る伝統行事を後世に伝えたい」との思いから隔年で奉納を続け、平成6年からは吐山小学校での郷土学習や、放課後のクラブ活動に取り入れられるようになり、今では毎年奉納されるようになりました。小学校の統廃合後も地域の垣根を越えて参加者を募集し、多くの生徒が参加してくれています。
 親、子、孫の3代が一緒に参加することもあり、大人と子どもが一緒になって、にぎやかな雰囲気のなかで奉納しています。小学校の卒業生が太鼓踊りを教える側にまわり、伝統を引き継いでくれています。若い力に期待しながら、この地に伝わる伝統をつないでいきたいです。
中島さん、小西さん、廣嶋さん、草尾さん
保存会の
中島さん、小西さん、廣嶋さん、草尾さん
行ってみよう!
下部神社
奈良市都祁吐山町3957
※令和2年の太鼓踊り奉納は中止となりました。
下部神社
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