斎藤治蔵・大前善則
比較的保育の明らかな20年生代のスギ実生林分の林木の形質、主に幹の曲りについて調査した。
1.林分の幹長4mの最大矢高は0.8~3.3cm。
2.最大矢高2.5cm以下の本数は疎植・粗放になるほど少なくなる。
3.最大矢高2.5cm以下の林木の分布は粗植・粗放になるほど均一性をかく。
4.完満度・真円度の植栽本数密度による差はなかった。
和口美明・上田富茂・西口陽康・岩田せんごく
5年間にわたってキハダ人工林についての成長調査、試験を土壌、植栽密度、施肥の3要因について行った。その結果は以下の通りである。
1)土壌はキハダの成長に大きく影響すると思われた。キハダは肥沃地を好み、適地の判定は重要である。
2)植栽密度は各個体の大きさに影響を与え、高密度区が最も各個体の大きさが揃っているようであった。平均の大きさを考えると植 栽密度はha当たり3000本が適当であるように思われた。
3)林齢8年のキハダ人工林において施肥効果は認められ、施肥量の多い試験区ほどその効果は大きく現れた。
片山紀一・柴田叡弌・和口美明
奈良県上北山村西原にある広葉樹二次林で林分構造調査をおこなった。林分内に2区画を設定して調査した。両区に出現した樹種は約30種類にのぼり、ヘクタールあたりの密度は1,253本と1,108本、材質は172m3と763m3、または胸高断面積合計は27.22m2と15.17m2であった。主要な上層木はオニグルミ、サワグルミ、キハダおよびミズキであった。これら上層木の平均胸高直径は27.6cmと21.0cm、平均樹高は16.7mと11.6mであった。また、今後二段林を造成するうえで必要な林内照度と立木の位置図を記録した。
柴田叡弌・和口美明
ノウサギによって樹幹を剥皮された11、15および19年生のヒノキ材内の変色と腐朽の状態を観察した。材内に変色が発生していた高さは80cmまてであり、腐朽が発生していた高さは60cmまてであった。
小船武司・柴田叡弌
過去約60年間に、狩猟によって捕獲された哺乳類の種類とその頭数から、奈良県の山野に生息する動物の生息動向を明らかにしようとした。クマとノウサギの捕獲数は近年減少した。シカの捕獲数は増加傾向に、また、タヌキ、キツネ、テンなどの毛皮獣の捕獲数は減少傾向にあった。
酒谷昌孝
ハナノキ(カエデ科、カエデ属)の新梢の節切片をBAPを含む培地へ置床することにより、腋芽を伸長させることが出来た。この伸長した腋芽を節ごとに切り取り、新しい培地へ置床することにより再び腋芽が伸長した。伸長した腋芽はIAAを含む培地に置床して、4日間の暗黒処理を行うことにより発根し、得られた植物体は容易に馴化出来た。
天野孝之・大富正男・酒谷昌孝
キイチゴ類の一種であるナガバモミジイチゴ(Rubus palmatus Thunb.)の冬芽を用いた組織培養による増殖を行った。
M.S培地中のNH4NO3は葉色に大きく影響をおよぼした。またNO3塩の量によって地上部の成長と発根誘導とがある程度制御できるものと思われた。
渡辺和夫
シイタケのおが屑栽培を、ビン栽培でシイタケの菌糸体を培養し、菌糸体が蔓延後掻き出して袋に詰め、袋栽培で熟成を行う方法で実施した。本方法では、袋詰め時の培地の大きさは、850g~1,500gで培地重量に対する発生率は、31%~34%で有意な差はなかった。また、袋詰め時の栄養剤の添加は、効果が見られなかった。本方法は、従来の袋栽培に比べて、子実体は集中発生型となり、小型化したが、発生率は上回った。
衣田雅人
ハタケシメジ栽培の実用化にむけて、菌糸生育の速い菌株の選抜と効率の良い培地組成および添加養分の検討を行い、次の知見を得た。
(1)奈良県林試保存6菌株のうち、菌糸生育の速い菌株はNLD-003であった。
(2)土、もみ殻と米ぬかを5:5:2(容積比)の割合で混合した培地で菌糸生育が良好であった。