林業資料No.11(要旨)

ホンシメジ(Lyophyllum shimeji Hongo)保存菌株の子実体形成能

河合昌孝

 ホンシメジの保存菌株を大麦を主体とした培地で培養し、子実体形成能について調べた。39菌株中23菌株で原基形成が認められ、11菌株で幼子実体の形成が認められた。幼子実体を形成した11菌株のうち5菌株で完全な子実体まで発達した。このうち1菌株のみ発生室に移す低温刺激を与えなくても培養室内で完全な子実体を形成した。今回の結果から、保存菌株に子実体形成能があり、菌株により子実体発生を刺激する温度が異なるものと思われた。

 

 

組織培養技術を用いたミズメの増殖と馴化後の成長について

田中正臣

 ミズメ成木の冬芽を用いて組織培養苗を作り圃場で育苗した。組織培養によるミズメの増殖は比較的容易であり、発根率は90%以上であった。馴化中の枯損も見られず、ミズメの組織培養による繁殖は実用に耐えうるものと思われる。圃場で1年間育苗した結果、成育条件や個体差などがあるが、実生苗と比較して苗高成長や根元直径成長で劣るようである。今後さらに、同一個体由来の実生苗と培養苗を比較する必要がある。

 

 

鱗片培養によるササユリの試験管内増殖および林地植栽試験

田中正臣・天野孝之・岩倉章久

 鱗片培養によってササユリの子球を増殖・肥大成長させ、ヒノキ植林地へ植え付けた。培養は、初代培養で雑菌汚染が多く発生した。しかし母球の個体差はみられるが、一度無菌の鱗片ができれば、増殖し肥大させることは比較的容易であった。林地植栽後、1年目の活着率は約95%で、植栽した球根の大きさによっては開花する個体も観察された。植栽2年目では開花する個体は増加し、2本立ちや3本立ちの個体も確認された。しかし未活着(消滅)個体も1年目に比べ増加した。

 

 

ケヤキとトチノキの接ぎ木について

上田正文

 ケヤキとトチノキの接ぎ木をおこない、活着率について調査した。ケヤキについては、接ぎ手の技術によって活着率に差が認められ、確かな技術を持った接ぎ手が接ぎ木を行えば、接ぎ木が容易であると考えられた。トチノキについては、活着率が低いうえに接ぎ手の技術によって活着率に差が認められず。接ぎ木が困難な樹種であると考えられた。さらに、トチノキは、個体によっては頂芽よりも腋芽を着生する接ぎ穂を用いるほうが活着率が高い場合がある樹種であると考えられた。

 

 

明るさの異なる二段林における雑草木の生重量と下刈り労力の軽減効果

和口美明・米田吉宏

 複層林施業における更新作業時の下刈り労力の軽減効果を調べるため、5年間にわたり県内に造成された二段林6林分で林内相対照度、雑草木の生重量、下刈りの実施状況、下木の樹高成長を調査した。林内相対照度が30%以下で推移した林分の雑草木の量は少なく、簡易な下刈りのみでその作業効果が認められた。一方、林内相対照度が60%以上で推移した明るい林分の雑草木の量は多く、毎年2回、皆伐一斉造林地と同程度の下刈りを行う必要があった。今回の調査結果から、林内相対照度が10~30%程度であれば、下刈り労力の軽減効果が十分に期待できると考えられた。

 

 

ヒノキならたけ病の収束

天野孝之

 10年生ヒノキ林で、ならたけ病の被害調査を行った。この林分の土壌pHはヒノキ最適pH5.0~5.6にくらべ、4.4~5.1の範囲内に偏り、なおかつならたけ病菌の成育最適pHの範囲である。しかし、ヒノキ植栽後10年ほどで、ならたけ病は収束する可能性を示す資料が得られた。

 

 

林業労働力の現状分析(第1報)
川上村の場合

木南正美・江口 篤・山下俊二

 山林労働する山守を事業者と規定し、一般の山林労働者と区分して労働力の需給関係をみるため、労働者237人(うち女性22人)を対象に1995年に全数調査を実施した。ここ10年間の供給はわずか17人に対し、今後10年の間に高齢のための退職希望者数は208人であった。

お問い合わせ

森林技術センター
〒 635-0133 高市郡高取町吉備1

お問い合わせフォームはこちら


総務企画課 TEL : 0744-52-2380 / 
FAX : 0744-52-4400
森林資源課 TEL : 0744-52-2380 / 
FAX : 0744-52-4400
木材利用課 TEL : 0744-52-2380 / 
FAX : 0744-52-4400
森林管理市町村連携課 TEL : 0744-52-2380 / 
FAX : 0744-52-4400