林業資料No.15(要旨)

大型ビンを用いたシイタケ菌床栽培(第3報)
培養日数および培地添加物の種類が子実体の発生に及ぼす影響

渡辺和夫

 大型ビンを用いてシイタケ菌床栽培を行い、培地添加物の種類(フスマ、細粒フスマ、クロレラB総体、セラミックス炭)や培養期間(75日、90日、105日)が培養終了時の菌床重量、培地分解指数(乾燥重量減少率)、子実体発生個数および発生量に及ぼす影響を検討した。培地添加物の種類や培養期間、菌床重量、培地分解指数、子実体の発生個数および発生量に有意な影響を及ぼした。セラミックス炭を添加した培地では、培養期間を長くすると培地分解指数は大きくなり、菌床の重量減少は小さくなった。また、子実体の発生はフスマ区では培養期間が90日で最も良好となり、105日で減少した。一方、セラミックス炭区では、培養期間が75日と90日でフスマ区とそれぞれ差はなかったが、105日で有意に多くなった。

 

 

エリンギ(Pleurotus eryngii)の菌床特性について

小畠 靖

 エリンギ13菌株を収集し、寒天培地上での対峙培養、菌糸成長量の測定およびビン栽培による栽培試験をおこなった。供試した菌株は、すべての子実体を形成し、菌糸成長量、子実体収量および子実体形質について異なる傾向を示した。また、現在流通している栽培品種と同程度の子実体生産能力を有するものや、栽培上有利な形質を持つ菌株もみられ、育種材料としての利用が期待できる。

 

 

ミズメとオオシマザクラの組織培養苗の馴化中の枯損について

田中正臣

 組織培養によるミズメとオオシマザクラの苗木育成について、馴化方法の簡略化を試みるために、馴化開始時期および発根苗条のカルス形成率と馴化中の枯損の関係について検討し、生存苗と枯損苗の馴化前の根長と根端数、茎長を比較した。両樹種とも、馴化開始時期は春~秋が適時であると考えられ、特にオオシマザクラは5、6月に馴化を開始すると枯損率は10%以下になった。馴化前の培養苗の根長と根端数、茎長について、ミズメは、生存苗と枯損苗で差はみられなかったが、オオシマザクラは、生存苗の方が枯損苗より根長、根端数が大きい傾向がみられ、発根培養の段階で、二次根を増やすような培養方法を工夫すれば、馴化中の培養苗の枯損が軽減できることが示唆された。

 

 

カスミザクラの継代培養回数と苗条の増殖および発根の関係について

田中正臣

 カスミザクラの継代培養回数と苗条増殖率および発根率の関係を調べた。苗条増殖率は、第2回継代培養時に最も大きく、以後第5回まで小さくなった。また第4回継代培養からガラス化・多芽体となる苗条が顕著に観察されたので、第5回継代培養で植物成長調節物質を減じたが、効果はみられず、ガラス化・多芽体となる苗条はさらに増加した。また、苗条増殖率は若干小さくなり、枯損率は大きくなった。発根率は、継代培養回数が増えると大きくなった。さらに、根長や根端数も大きくなる傾向がみられた。

 

 

河川敷に植栽された桜(ソメイヨシノ)並木の倒伏原因について

天野孝之・張 公道

 河川堤防に植栽された桜樹(ソメイヨシノ)の強風による倒伏は、樹形や路肩からの距離など単一の要因にはあまり影響を受けなかったと推察された。樹木の強風による倒伏は、これら地上部の要因よりも、地下部すなわち根系および土壌状態の影響が大きく作用するのではないかと推察された。

 

 

奈良県内の社寺林におけるスギの衰退(第2報)

衣田雅人

 1989年から1992年に行った調査に引き続き、1996年から1999年に奈良県内129カ所の社寺で366本のスギを調査した。その結果、前回調査に比べて衰退指数が上がっているのは226本で、平均衰退度指数は3.2であった。先端枯れが見られる衰退度指数4以上のスギがある社寺は65カ所で、その本数は103本であった。調査木周辺の土壌pHは、274カ所のうち4.1~4.5が73カ所と最も多く、ついで4.6~5.0が62カ所であった。スギ樹幹周辺の土壌pHは、樹幹流水の影響を受けていると考えられた。社寺林におけるスギ衰退の原因は、人工構築物の建造や土の踏み固め、土壌条件の不適、落雷などによる被害が多く見られた。

 

 

台風被害林分残存木の樹幹損傷状況調査事例

岡崎 旦・杉本英明

 スギ22年生林分内で、激害地区に隣接した外観形態的には軽度の被害でロープにより木起こし作業で復旧された地区の、残存立木の樹幹損傷の有無を調べた。直立木と木起こし作業木との林分構成要因(樹高、胸高直径、形状比、樹冠長比)には特定の傾向は認められなかった。調査木8本を伐倒し樹幹損傷の有無を見た結果、直立木にももめの発生が確認された。しかし、もめのない個体もあることから、風道などの激害地区から比較的短距離で、樹幹損傷を免れる場合もあることを示唆するとも考えられる。

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