上田正文・山村忠夫
回収の必要がない下刈り省力ネットを実用化することを目指し、生分解ポリエチレン樹脂製モノフィラメントの紫外線照射による促進劣化試験を行うとともに、その有効性について調査した。生分解ポリエチレン樹脂製モノフィラメントは、従来より下刈りを省力化するために敷設しているラッセルネットの材料となるポリエチレン樹脂製モノフィラメントと比較し、紫外線照射に対する劣化速度は遅かった。また林地に敷設後、10年が経過したポリエチレン樹脂製ラッセルネットには、明確な劣化が生じていなかった。したがって、生分解ポリエチレン樹脂製ラッセルネットは、下刈りを省力化するためのネットとして十分な性能を持つと考えられた。
小畠 靖・山本八郎
現行のビン栽培法に適合するエリンギ優良品種の開発を目的として、交配によって菌株を作出し、その49菌株について栽培試験による特性調査をおこなった。この結果、子実体収量と子実体の形態から3菌株を選抜した。
小畠 靖・葛本弘義
綿実油製造過程で生産される副産物を材料としたきのこ栽培用栄養添加物、アップランと綿実ミートを、ヒマラヤヒラタケ、ヒラタケおよびエリンギの菌床栽培に用いた時の効果について検討した。ヒマラヤヒラタケでは、両栄養添加物とも菌糸蔓延日数の短縮が見られたが、子実体収量の増収効果は認められなかった。ヒラタケとエリンギにおいてはアップランの添加が、栽培日数の短縮と子実体収量の増収に効果が認められた。
田中正臣
奈良県東吉野村指定の天然記念物のシダレザクラの後継樹を得るため、組織培養によって培養苗を得た。その際、発根培地の検討を行い、そして培養苗の、馴化中の枯損と発根量の関係や育苗中の成長経程を調べた。発根率の向上を目的に、発根培地の窒素成分量や植物成長調節物質、培地支持体を変えて培養を行い検討したが、いずれも発根率は小さく、培養中の苗条枯損率は大きかった。馴化中の培養苗の枯損を少なくするには、発根培養段階でなるべく多く発根させることが重要であった。苗高および根元直径の成長の比較、また経済的な面から、馴化は春から始め、なるべく馴化期間を長くして、夏に育苗を開始するのがよいと考えられた。
衣田雅人
吉野町入野の町道沿いのサクラ並木および大和高田市大中の県道河合大和高田線沿いのサクラ並木と大中公園のサクラ並木の樹幹流水のpHとECを調べた。その結果、1999年5月から11月までの7カ月間のpHの平均値は、吉野町の町道で5.8、大和高田市の県道沿いで5.5、そして大中公園で5.1であり、交通量の少ない吉野町のpHは交通量の多い大和高田市のpHに比べてわずかに高かった。また、3箇所のECは、吉野町で47μs/cm、そして県道沿いで153μs/cm、大中公園で115μs/cmwであり、交通量の少ない地点と多い地点で差が認められた。一方、各調査地の1999年11月2日に回収した樹幹流水のイオン成分濃度を調べた結果、吉野町の調査地に比べて大和高田市の2箇所の樹幹流水ではNO3-、SO42-、NH4+、Cl-、Na+およびCa2+のイオン濃度が高く、その原因として車の排気ガスや融雪剤等による影響と推察される。また、3地点の桜並木はいずれも健全であった。