林業資料No.12(要旨)

ケヤキ街路樹の植栽環境について

天野孝之

 橿原市内の推定樹齢100年のケヤキ街路樹について、植栽桝の土壌特性および生育現状を観察した。植樹桝の土壌硬度は歩道側が高く、歩行者による踏み堅めの影響と考えられた。pHはバラツキが大きく、砂質壌土でECは100μS/cm以下であった。太い根系から直接細根が桝内に多数出ている個体が多数認められた。過去の強剪定の結果、樹形は大きく崩れ、さらに切り口からの腐朽菌の侵入により、樹幹、根株に達する腐朽が多数生じていた。整枝剪定は熟練した技術を要し、常に正しく行う必要がある。

 

 

奈良県におけるスギ凍裂害の実態(第3報)
被害木の材内部の観察結果

和口美明

 凍裂の発生したスギ5個体を採取し、材内部における割れ、変色および腐朽の状態、被害発生年と割れの繰り返し状況、被害発生前後の肥大成長について観察した。割れは樹幹外周部から中心に向かって発生しており、その周辺には変色や腐朽がみられた。5つの被害木、6つの割れはいずれも被害発生年が異なり、ある年に被害が多発するといった傾向は認められなかった。凍裂の繰り返しによって割れが上下方向へ伸展する現象は1個体に認められた。採取した被害木5個体中、4個体の肥大成長の経過と被害発生年を調べた結果、いずれの被害木においても被害発生前後の肥大成長に顕著な違いは認められなかった。

 

 

奈良県における人工林伐採跡地放置の実態調査

衣田雅人・隅 孝紀

 奈良県吉野郡天川村、野迫川村、大塔村、十津川村、下北山村および上北山村の人工林伐採跡地放置の動向を調査した結果、人工林伐採面積560.72haの10.8%に相当する60.37haが未植栽のまま放置されていた。その背景として(1)権利関係が複雑で係争中の場所である、(2)奥地林で林道が未整備であるため、地上権の入札をしても応札者がいない、(3)所有者が高齢で、かつ後継者がいない、という問題点が拳げられた。

 

 

林業労働力の現状分析(第2報)
御杖村・曽爾村の場合

江口 篤・木南正美・山下俊二

 御杖村、曽爾村を対象に林業労働者の実態を調査した結果、年間20日以上林業に従事した労働者数はそれぞれ173人、153人であり、両村とも労働力の大半を農家林家に依存している。両村ともに労働者の平均年齢は60歳で、60歳以上の人数が占める割合は60%を越えており、高齢化が急速に進んでいる。今後20年間に高齢者の退職に伴い労働者数は激減するが、林分が高齢級に移行することにより、保育作業も減少する。保育作業を農家林家の自家労働で確保できれば、平成27年までに御杖村で15人、曽爾村で10人程度の伐出技術員を養成確保することによって、現在の素材生産量は維持される。

 

 

急傾斜地における高密度路網の事例
集材距離と路体強度について

生澤起一・江口 篤・山下俊二

 上北山村で、清光林業(株)岡橋清元氏により実践されている高密度路網を調査した結果、路網密度は193m/haで、作業道から100m以内の林地は91.8%に達しており、ほとんどグラップルとウインチの組み合わせにより集材が可能である。また開設直後の路体強度は、丸太積工と良質の盛土材を使う事によって、切取部より盛土部の方が高い傾向が見られた。

 

 

ヒラタケ栽培におけるビール粕の添加効果

小畠 靖

 ヒラタケのビン栽培において、ビール粕の栄養添加物としての有効性を試験した。ビール粕の種類および添加量の菌糸蔓延、原基形成、栽培期間および子実体収量に与える影響は試験によって異なり、明確な傾向は認められなかった。しかし、栽培に用いる菌株の性質にあわせ、適正な時期に菌かきをおこなうことで、ビール粕の添加により、子実体増収効果が期待できるものと考えられる。

 

 

コナラ(Quercus serrata)とミズナラ(Quercus mongolica var.grosseserrata)のさし木の試み

河合昌孝

 コナラの3年生実生苗を台切りした後発生した1年生萌芽枝より伸長した当年生枝を、1996年5月に採取しさし木を試みた。タルク10g、IBA0.1g、ピロガロール0.4gおよびカテコール0.3gを混合して作成した発根促進剤に基部を塗布し、ミスト装置のあるガラス室に置いたところ約77%が発根した。今回の結果より、条件がそろえば、効率的なコナラのクローン増殖ができる可能性が示された。ミズナラについても、4年生実生苗を採穂母樹としてさし木を試みたが発根しなかった。

 

 

奈良県林業試験場構内におけるチャタマゴタケ(Amanita hemibapha subsp. similis)の発生調査

河合昌孝

 1993年より林業試験場構内においてチャタマゴタケが発生し始めたので、発生位置を記録し、発生位置図を作成した。子実体に付着した根の顕微鏡観察により、菌糸が根に侵入していたこと、イチイガシの木を中心とした円状にきのこが発生したことにより、イチイガシと菌根を形成しているものと考えられた。

 

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