木材加工資料No.21(要旨)

製材工場における針葉樹構造用製材の含水率実態調査

山田英之・久保 健・小林好紀

 流通過程にある製材品の水分管理の状態を把握するため、林野庁の大型プロジェクト研究として、本県を含む16道県において製材工場、製品市場、建築現場における含水率が調査された。そのうち製材工場から出荷される直前のスギ製材品の含水率について、(1)製材後日数が長いほど含水率は低く、正角材よりも平割材のほうが低い。(2)地方別にみると、東北地方の含水率が、他地方のそれよりも比較的低いなどの結果が得られた。

 

 

加熱処理したスギ並材からのロータリー単板の性質

中田欣作・杉本英明・海本 一

 スギ並材から良質な単板を得る目的で、加熱等の前処理を行った丸太から単板を製造し、その品質を検討した。歩留まりは、定尺単板65.7%、乱尺単板16.7%で合計82.4%、むき心8.3%ですべてを合計すると90.8%と高い値を示した。単板の裏割れ率および裏割れ密度は、水中浸せき処理、温水過熱処理、煮沸加熱処理の順に小さくなるが、煮沸処理では単板厚さが厚く、厚さむらも大きくなるので、温水加熱処理が最適な条件であると考えられる。

 

 

スギ並材のLVL化と強度性能(第1報)

杉本英明・中田欣作・海本 一

 県内産スギ並材およびヒノキ間伐材をLVL化して利用を図る目的で、スギ単板からLVLを製造し、その強度性能を調べた。
 その結果、構造用単板積層材の日本農林規格(昭和63年9月14日農林水産省告示第1443号)の試験項目に適合させることができた。
 また、単板の縦つぎ技術が強度性能に影響することから、ラップジョントを3種類に分けて作製し、バットジョイントおよびコントロール材と曲げ、引っ張り強度の比較をした。しかし、コントロール材にくらべジョイント材の接合効率は低く、バットジョイントとラップジョイントとの差異もあまりなかった。

 

 

工場で製造された縦継ぎラミナの引張強さ

和田 博

 県内2社で製造されているベイマツ縦継ぎラミナを用いて、実大の引張試験を行った。
 グレーディングを行っている1社のラミナは、他社に比べて曲げヤング係数、引張強さともにまとまった分布をしていたが、両社とも引張強さの大きいものは少なかった。曲げヤング係数と引張ヤング係数の相関は高かったが、いずれも引張強さとの相関は高くなかった。

 

 

冬期(低温時)のヒノキの接着性能

柳川靖夫

 冬期に接着したヒノキの化粧ばり構造用集成材の芯材において、JASの浸せきはくり試験に合格しない製品が多数発生したことがある。エゾマツでは、従来そのような問題は発生していない。そこでヒノキとエゾマツの冬期の接着性能を比較した。浸せきはくり試験では、ヒノキはエゾマツよりはくりが発生しやすく、はくり率もエゾマツより大きかった。ブロックせん断試験では、ヒノキの木部破断率はエゾマツより低かった。

 

 

グリオキザール樹脂処理材を用いたバスタブの試作

伊藤貴文・当麻 毅

 ヒノキ樹脂処理材の接着性能試験、およびそれを用いたバスタブの壁体の吸水試験を行った。浸せきはくり試験の結果、グリオキザール樹脂処理材の接着は素材に比べて難しく、水性高分子-イソシアネート系接着剤を用いる場合は、接着面のサンダー仕上げ、素材よりも高い圧締圧、触媒添加率が必要であることが判った。また、吸水試験の結果、グリオキザール樹脂処理材の吸水性は高いが、それに伴う寸法変化は極めて少なかった。これは、材料を直交方向に積層したことに加えて、樹脂処理に伴い表層材の寸法安定性能が向上したことによると考えられる。

 

 

表面処理用木材防腐剤の浸せき処理による吸収量

中村嘉明

 表面処理用薬剤の浸せき処理において、薬液の吸収量が増加する経時変化は、クレオソート油や油剤では小さく、水溶液や乳剤では大きかった。また、木材の粗面と滑面では、剤形にかかわらず粗面の方が常に大きかった。さらに、難注入性木材でも、水溶液や乳剤は1~3時間の浸せき処理により、著しく吸収量が増加する傾向が明らかにされた。

 

 

防腐処理木材に見られる薬剤難浸透部の組織構造

酒井温子・中村嘉明

 防腐薬剤を加圧注入した木材試料の顕微鏡観察を行なった。その結果、薬剤の浸透が良好であった辺材部分の仮道管の壁孔では、マルゴが薄く、亀裂が生じやすく、また、トールスの編目は明瞭に観察された。仮道管内壁には沈着物は少なかった。一方、薬剤の浸透が不良であった心材部分では、マルゴ、トールスともに、沈着物によって覆われ、補強されている様子が観察された。また、仮道管内壁にも沈着物が多く、壁孔を覆っていた。以上から、加圧式注入法による薬剤の浸透においては、仮道管内壁にみられる沈着物が、浸透性の良否に大きく影響していると考えられた。

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