木材加工資料No.23(要旨)

木材と繊維材料の接着

柳川靖夫

 強度のばらつきが小さく、しかも高い強度を有する集成材を開発するため、繊維材料による補強を試み、木材(スギ、ベイマツ)と繊維材料(ガラス繊維、炭素繊維)との接着について検討した。その結果、木材と繊維材料との接着にはレゾルシノール樹脂接着剤が適していることが判明した。水性高分子イソシアネート系木材接着剤は、ガラス繊維と木材との接着には使用可能だが、炭素繊維と木材との接着には適さなかった。

 

 

レーザ式変位計によるヒノキラミナの表面に出現する節の検出

和田 博

 2種類のレーザー式変位計を用いて、ヒノキラミナ上に出現する節の検出を行った。死節は、いずれの変位計によってもほぼ検出可能であったが生節は困難であった。とくに、表面の色や材質によらず一定の出力値が得られるように改良された変位計のほうが、今回の目的には適していないと思われた。

 

 

電気抵抗式木材水分計によるログハウス丸太材内部の含水率測定

藤本春美・杉本英明・中村嘉明・疋田洋子

 ログハウスの丸太内部の水分変化を測定するため、電気抵抗式木材水分計を用いて、定期的にしかも非破壊的に測定する方法を試みた。その結果、測定器の性質上、含水率の絶対値ではないものの、水分変化の傾向を明らかに示す結果が得られた。この方法は、センサーのセットが比較的容易で、しかも深さを自由に設定することができることなどから、木材内部の含水率を測定する方法として有効な方法であると考えられる。

 

 

高周波容量式木材水分計の比重補正値による含水率の差異

山田英之・久保 健・小林好紀

 針葉樹構造用製材の日本農林規格(JAS)の木材水分計として高周波容量式木材水分計が認定されている。そのうちのデルター5は、比重補正値の変更がメーカーからユーザーへ完全には周知されていないため、未だ旧補正値使用例が見られ、生産現場で混乱が生じている。そこで、新旧それぞれの比重補正値による含水率を調べ、両者に無視できない差異が見られることが明らかになり、正しい比重補正値の設定の重要性を指摘した。

 

 

腐朽木材の軟X線観察

藤平眞紀子・中村嘉明・疋田洋子

 強制腐朽操作を行った針葉樹6樹種(北米産のS-P-F材2種、米国産のベイツガとベイマツ、国産のスギおよびヒノキ)について、腐朽部位、腐朽の程度を観察するため、腐朽部分から採取した材の木口面の薄い切片の軟X線写真観察を行った。その結果、腐朽は材の周囲から次第に内部へ進行していき、腐朽がある程度進むと、ヒノキ以外の各樹種では、材の深部にも腐朽が及び、腐朽部分と未腐朽部分が混在している様子が観察された。

 

 

青森ヒバ・能登アテ・ラオスヒノキの耐朽性

藤平眞紀子・中村嘉明・疋田洋子

 青森県産ヒバ(青森ヒバ)と能登半島産アテ(マアテ、スズアテ)およびラオス産大径針葉樹(いわゆるラオスヒノキ)について、常法に従って室内耐朽性試験を行い、3樹種の相違について耐朽性の面から検討した。その結果、マアテとスズアテは共に、心材は耐朽性が大きいが、辺材は耐朽性が小さく、青森ヒバとラオスヒノキは心材のみ試験を行ったが、マアテおよびスズアテの心材と同様に耐朽性が大きいことを明らかにした。

 

 

接着剤混入法による桐つき板化粧合板の防カビ処理

中村嘉明・牧野耕三

 気密性が高い住宅においては、箱物家具にカビ被害が発生しやすく、特に和箪笥(タンス)等の高級家具製造業者は対策に苦慮している。その予防処理法として、桐つき板の接着工程に組み込む接着剤混入防カビ処理方法とそれに適した防カビ剤を検討した。供試した3種の低毒性防カビ剤はいずれも有効で、接着剤混入方法による防カビ処理が可能であることを明らかにした。

 

 

出土木製品の水中保管時の腐朽と薬剤による防腐

酒井温子・今津節生

 遺跡から発掘された出土木製品は、小型容器内で数カ月から数年間、水中で保管される。しかし、この間にさらに劣化が進行し、木材表面が著しく軟化したり、加工痕が不鮮明になるといった問題が生じている。そこで、走査電子顕微鏡により水中保管後の木材を観察し、劣化を引き起こす主原因である微生物を確認した。また、防腐剤を加えることで、少なくとも3カ月間は、劣化を防止あるいは軽減させることができた。

 

 

ヒノキさび丸太のカビ発生誘導の試み

中村嘉明・酒井温子・吉田 靖

 林地内において、ヒノキ丸太表面に天然に付着するカビを利用して生産するさび(錆)丸太を、人工的にカビを誘導して創出する方法を試みた。丸太を剥(はく)皮した直後から付着する菌類の発育を、増進、抑制の両面から検討したところ、散布した薬剤に応じて、様々な反応が認められ、発生誘導の可能性が示唆された。

 

 

ベイツガ正角材の曲げ強度性能

海本 一・中田欣作・杉本英明

 ベイツガ正角材の強度性能および新JAS等級と強度性能の関係を明らかにするため、実大曲げ強度試験を実施した。その結果、曲げ強度性能の平均値は、規定された強度性能の基準値を上回ったが、曲げ破壊係数の95%下限値は建築基準法施行令に規定された材料強度には及ばなかった。しかし試験材を新JASに基づいて強度等級区分することにより、上級材は高い強度性能を持つことが明らかになり、強度等級区分の有効性が確認できた。

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