海本 一・杉本英明・中田欣作
スギ正角材を対象に、ヤング係数の測定および形質調査を行い、曲げ強度性能との関係について検討した。その結果、形質調査に基づく目視等級区分は強度等級区分としての効果が認められなかったが、ヤング係数による機械等級区分は強度等級区分として有効であった。動的ヤング係数と静的ヤング係数の間には非常に高い相関関係が認められ、しかもほぼ等しい数値を示したが、含水率変化に対するヤング係数の増加率には違いが見られた。
杉本英明・中田欣作・海本 一
スギ一般材を利用したゼファーマット2種類の製造方法を、生産性の向上と製造コストの低減を図るため、従来の接着剤による複合からミシンによる縫合に変更し、実用化の為の現地敷設試験を行った。
防草マットは、平地、コウゾ畑およびツバキの周囲に敷設したが、草木の繁茂の季節を経過した4カ月後も十分な抑制効果が得られた。
緑化マットは、平地および山林崩壊地の切り取り部分と盛り土部分の南北斜面に敷設した。平地での効果は十分認められたが、崩壊地での敷設が冬季であったために現段階では生育の確認はできていない。なお、岩石の多い切り取り部分や土の少ない場所への敷設は固定方法が難しく、種子の発芽が望めないことから緑化マットの敷設は不向きである。
久保 健・小野広治・寺西康浩・山田英之
平成3年に施行された針葉樹構造用製材の日本農林規格に基づいて生産された製材品の含水率および寸法の変化に関する品質を明らかにすることを目的として、乾燥基準D25に相当するスギ、ヒノキ正角材の乾燥仕上げ後2年間までの挙動を追跡、分析した。
その結果、ヒノキ材については、含水率計による含水率は3ヶ月経過時に17%を示すまで低下した後安定し、収縮率は6ヶ月経過時に1.4%を示すまで増加しその後安定した。スギ材については、含水率は6ヶ月から9ヶ月経過時に13~14%まで低下した後安定した。収縮率は9ヶ月経過時に天乾材で1.1%、人乾材で0.6%を示すまで増加し、その後漸増し、24ヶ月経過時には天乾材で1.4%、人乾材で1.0%を示した。
坂野三輪子
材の表面仕上げの方法、圧締圧力、および塗布量と、加圧後に接着層内に留まっている接着剤の量(残存量)と接着層厚さの関係について調べた。残存量は表面仕上げ方法によって異なり、塗布量に比例して増加するが、ある塗布量以上では一定である。塗布量300g/m2以上では、圧締圧力が大きいほど残存量は減少し、その後一定値をとる。接着層の厚さは、圧締圧力8kgf/cm2以下では一定であるが、それ以上では薄くなる。
上田正文・和田 博
マイクロ波を照射して、材中に生育する穿孔性虫類の殺虫を試みた。ヒラタキクイムシ、ヨツボシカミキリの穿入が確認されているツル類の材に、マイクロ波を4.5kWの出力で、30秒間、60秒間、90秒間照射した。その結果、マイクロ波の照射を行わなかった材、30秒間照射した材からは穿孔性虫類の羽化脱出があり、材内で死亡した個体は認められなかった。それに対し、マイクロ波を60秒、90秒間照射した材からは羽化脱出せず、材内で死亡した個体が多かった。したがって、マイクロ波を照射することは、材内に生育する穿孔性虫類を殺す方法として有効であると考えられた。
酒井温子
走査型電子顕微鏡により木粉を観察し、樹種の同定および発生原因の推定を試みた。既知の試料として、鋸屑および虫の排出した木粉を観察したところ、樹種の同定は困難であったが、針葉樹か広葉樹かあるいはその他の材料かの区別は可能であった。また、鋸屑と虫の排出物(糞あるいはかじり屑)は、それぞれ異なった形状をしており区別ができた。以上の結果をもとに、未知の木粉の樹種の同定および発生原因の推定を行った。
中村嘉明
環境への影響が懸念される塩素化フェノール(TCP)系薬剤に代わり、最近、市販されている6種類の新規木材防カビ剤について、野外暴露防カビ効力試験を行い、実用適性を検討した。その結果、各々の薬剤について、メーカー指定濃度と効力の関係や、規格に準拠した室内試験からは得難い自然条件下における薬剤の効力が明らかにされた。中でも窒素系薬剤を混合成分とするフロァブル製剤に、腐朽菌が旺盛に生育する顕著な傾向が認められ、それらの木材防カビ剤について、改善を提起する資料が得られた。
伊藤貴文
グリオキザール樹脂処理材の耐久性能を評価する上での基礎的な知見を得るために、煮沸処理による流脱促進試験を行った。樹脂処理の条件、反応温度、触媒添加率、混合するグリコールの種類とその混合率などを変えて、調製した試片について、反応生成物の煮沸処理に伴う流脱量を調べたところ、次のようなことが明らかになった。
(1)樹脂単独処理では、ホルムアルデヒドの配合率、反応温度、触媒添加率が高いほど、流脱は少なくなった。
(2)PEG200などのグリコール類を混合することにより、流脱は著しく減少した。また、反応温度を下げ得ることも判った。