木材加工資料No.25(要旨)

ココヤシ材の材質

海本 一・小野広治

 ココヤシ材の物理的、強度的性質を明らかにする目的で、ココヤシ1本から得られた試料を供試材として、生材含水率、収縮率、縦圧縮、曲げについての試験を行った。その結果、すべての項目において、幹の中心部と外周部では性質が異なることがわかった。ばらつきも大きく、各性質の出現範囲は、生材含水率は43~349%、平均収縮率は3~7%、密度は0.30~1.04g/cm3、縦圧縮強さは11.27~96.53N/mm2、曲げ強さは14.50~144.94N/mm2、曲げヤング係数は1.63~16.64kN/mm2であった。また強度性能と密度との間には非常に高い正の相関が認められた。地上高が高くなるにつれて密度の高い材は減少したが、地上高6m以下では密度の高い材が幹内に広く分布していた。

スギ・ヒノキ柱材の乾燥後の寸法、含水率変化(第2報)
含水率基準D25とD20の比較

小野広治・久保 健・寺西康浩

 平成3年に施行された針葉樹構造用製材の日本農林規格に基づいて生産された製材品の含水率と寸法変化の関係を明らかにするため、スギ、ヒノキ柱材を天然乾燥と人工乾燥により乾燥基準D25とD20に乾燥した材を室内に放置して、放置期間中の含水率、寸法変化について比較検討した。その結果、放置期間中の寸法変化はスギ柱材では乾燥法により、ヒノキ柱材では乾燥基準により異なった。

ゼファーマットの実用化技術に関する研究(第2報)
現地敷設による実証試験結果と実用化

杉本英明・中田欣作・海本 一

 スギ一般材を利用して製造したゼファーマットの現地敷設試験を行い、発芽生長とマットの経時変化を調べた。その結果、盛り土部分、切り取り部分(急傾面)等、数箇所の敷設地において全て良好な成果を得た。
 一方、製造工程と製造原価の試算では、ラインの省力化を図り、原木と複合資材の価格および製造機械の自動化等について再検討を行った結果、これまでの製造原価に比べ、若干低くおさえることができた。このことにより、スギ一般材を用いた新しい利用技術を確立するとともに、実用化への期待ができる。

Z-S処理鋼と木材の接着性能(第2報)

和田 博・河崎英治・新居稔弘・手束昭一

 Z-S処理鋼とベイマツ材の耐塩水、および減圧・加圧はくり試験における接着性能を改善するために、架橋剤添加率を種々変化させて接着したあと、接着性能試験を行った。その結果、硬化時間やコストの関係を考慮すれば架橋剤添加率は20部、木破率を最大にするためには30部が適していることがわかった。また、木材保存剤で処理した後Z-S処理鋼と接着したベイマツ材は、接着したあと木材保存剤で処理した場合に比べて接着性能は劣った。

4市場で購入したスギ丸太から採取したラミナの特性と強度

柳川靖夫・和田 博・坂野三輪子・田中 茂

 県内外の4市場からスギ丸太(末口直径200~400mm)を購入し、それらからラミナを採取した。市場別に丸太の特性、ラミナの特性を調査した。丸太の動的ヤング係数とラミナの曲げヤング係数との間には、相関関係が認められた。市場によりラミナの特性が一部異なり、県内市場からは比較的曲げヤング係数の高いラミナが得られたものの、それらの節径比は小さいとはいえなかつた。

繊維材料による縦つぎラミナの部分的補強

柳川靖夫

 ラミナの縦つぎ部分の補強を検討した。補強材として、ガラス繊維シートと炭素繊維シートを使用し、それらの長さを変化させて、レゾルシノール樹脂接着剤を使用して縦つぎ部分に接着した。曲げ試験の結果、コントロールと比較して、曲げヤング係数はそれほど向上しなかった。一方曲げ強度は向上した。補強材は、300mmの長さが必要であった。炭素繊維シートとガラス繊維シートの間には、補強効果に差は無かった。

グリオキザール樹脂処理材の耐朽性能

伊藤貴文・中村嘉明・酒井温子・岩本頼子

 グリオキザール樹脂で処理した試験片の耐朽性能について検討するために、JIS A 9201「木材防腐剤の性能基準及び試験方法」に準拠して、培養ビンを用いたカワラタケおよびオオウズラタケによる腐朽試験を実施した。その結果、グリオキザール樹脂処理に伴って、木材にかなりの耐朽性能が付与されることが明らかになった。特に、カワラタケに対する抵抗性は顕著で、設定したいずれの条件でも腐朽試験に伴う重量減少率は2%以下であった。それに対して、オオウズラタケでは、樹脂処理の条件によって重量減少率が異なり、ジプロピレングリコールを混合し、反応生成物の加水分解に対する抵抗性を高めた試験片において、その値は小さくなった。

アゼライン酸充填処理によるラジアタパイン材の寸法安定化処理

伊藤貴文・斎藤泰史

 アゼライン酸の充填処理によるラジアタパイン材の寸法安定化を試みた。ラジアタパイン材は比重のばらつきが大きいために、一定濃度の溶液での処理にもかかわらず、得られる重量増加率は広い範囲に分布した。さらに、重量増加率とASEならびにMEEとの間には、直線関係が得られ、比重が小さく重量増加率が高い試験片ほど、吸湿性は低く、高い寸法安定性が得られた。さらに、木口面をシールして注入性を検討したところ、ラジアタパイン材の注入性は比較的良好で、供試した12体のうち9体でほぼ理論最大注入量に等しい注入量が得られた。また、処理試験片の寸法安定性と注入率との間には直線的な関係が認められ、注入率が低い試験片では、高い寸法安定性が得られなかった。

アゼライン酸充填処理によるスプルス材の寸法安定化処理

伊藤貴文・吉末健治

 アゼライン酸の充填処理によるスプルス材の寸法安定化を試みた。重量増加率は処理溶液の濃度に比例し、また、設定した範囲内では、バルキング、ASEおよびMEEは、処理液の濃度の上昇とともに大きくなった。バルキングとASEとの間には、高い相関のもとで直線関係が成立したが、このことはアゼライン酸処理に伴う木材の寸法安定性の発現は、バルキングによるところが大きいことを示している。さらに、ASEとMEEとの直線的な関係も認められること、上述のバルキングとASEとの回帰直線のy切片が約+10を示すことから、吸湿性の低下も試験片の寸法安定化に寄与していることが示唆された。

阪神・淡路大震災により露呈された木造住宅における腐朽・蟻害の事例

中村嘉明・疋田洋子・東 実千代

 未曾有の人的、建築物の被害を記録した阪神・淡路大震災の被災地、芦屋市における踏査結果から、露呈された木造軸組住宅の腐朽・蟻害について多くの事例を報告する。それらを通じて、腐朽・蟻害対策が木造軸組住宅の安全性の確保にとって重要な課題であることを提唱する。

お問い合わせ

森林技術センター
〒 635-0133 高市郡高取町吉備1

お問い合わせフォームはこちら


総務企画課 TEL : 0744-52-2380 / 
FAX : 0744-52-4400
森林資源課 TEL : 0744-52-2380 / 
FAX : 0744-52-4400
木材利用課 TEL : 0744-52-2380 / 
FAX : 0744-52-4400
森林管理市町村連携課 TEL : 0744-52-2380 / 
FAX : 0744-52-4400