木材加工資料No.27(要旨)

ヒノキ柱材の熱気乾燥と修正挽き材の寸法変化

小野広治・寺西康浩・沖中玲子・久保 健

 乾燥温度60~80℃でヒノキ柱材の熱気乾燥試験を実施して乾燥性を検討した。温度が10℃高くなることによる乾燥速度の増加割合は約20%であった。しかし、温度が高くなるほど変色が著しくなるため、ヒノキ特有の材色や光沢を重視する場合、乾燥温度は70℃程度が適当と考えられた。また、仕上がり含水率は乾燥時間により決定された。
 仕上がり含水率約20%、15%に乾燥した材を修正挽きして、実験室内に4ケ月放置して、仕上がり含水率の違いによる放置中の含水率と断面寸法の変化の差異について検討した。仕上がり含水率が高いほど、放置中の含水率の減少は大きかった。しかし、背割り面の断面寸法の変化は、背割りのない3材面にくらべて大きくなる傾向を示したが、3材面の断面寸法は、含水率が変化してもほとんど変化しなかった。

 

 

市販平割り材の材質調査
かもい用材の曲げヤング係数を中心とした調査

和田 博

 市販の未乾燥状態の3種類の等級のかもい用材(カネ上小材、一面上小材、一等材)それぞれ100枚ずつの寸法、両木口面の平均年輪幅、ヤング係数(重錘法と縦振動法)、含水率(高周波含水率計による)を調査した。
 その結果、厚さと長さが不足している材があった。平均年輪幅は2~3mmが多く、どの等級においても差はなく、重錘法によるヤング係数も同様であった。縦振動法による一面上小材の乾燥後のヤング係数は、未乾燥状態での同方法によるヤング係数から高い精度で推定できた。

 

 

明日香実験林、野外杭試験報告(第5報)
2×4工法構造用製材と青森産ヒバ材、能登産アテ材等18樹種の素材の野外耐久性

中村嘉明・藤平真紀子

 野外にばく露した素材の耐久性を知るため、杭試験を実施して、杭の頂部、地際部、地中部の腐朽・蟻害を主な観点とする劣化状況を経年観察した。それによると2×4工法構造用製材のいずれの樹種も著しい短期間に、腐朽・蟻害を被ることや、ヒバ材やアテ材あるいはラオスヒノキ材は優れた野外耐久性があること、さらにサワラやヒノキのように高耐朽性樹種といわれる素材の優れた野外耐久性を明らかにした。それらの結果を、従前からのデータを蓄積してきた「杭試験より求めた素材の耐用年数と室内耐朽性試験より求めた重量減少率との関係」図に追加記入して、室内・外の耐久性の関係も示した。

 

 

変成グリオキザール樹脂処理による木材の寸法安定化(第1報)
触媒添加率が寸法安定性ならびに耐久性に及ぼす影響

伊藤貴文・中川和城

 グリオキザール樹脂処理における最大の欠点は、処理に伴って脆性が付加されることである。脆性の発現は主に架橋の形成が原因であると推察されるので、それを解決するためには、架橋の密度を調整する必要があると考えられる。そこで、木材処理用として特別に調整した2種類の変成グリオキザール樹脂を用いて、樹脂処理を行い、樹脂の組成、触媒添加率およびジプロピレングリコールの添加が、寸法安定性の発現機構に及ぼす影響について検討した。その結果、樹脂の一方のメチロール基を多価アルコールでエーテル化することにより、架橋の形成を抑制できることが示唆された。

 

 

変成グリオキザール樹脂処理による木材の寸法安定化(第2報)
シリコン変成が及ぼす影響

伊藤貴文・中川和城

 グリオキザール樹脂をシリコン変成することにより、木材に付与される性能が、どのように変化するかについて検討した。その結果、樹脂処理によって付与される初期性能には、ほとんど変化は認められなかったが、耐久性を評価するために行った煮沸処理において、樹脂の流脱が抑制され、高い寸法安定性が煮沸処理後も維持されることが明らかになった。

 

 

木材の多色染め(第2報)
実用的な多色染め方法の検討と試作品の製作

酒井温子・杉本英明

 浸透性の異なる2種類の染料を用いて、木材の多色染めを行った。今回はスギの挽板に染色を行い、乾燥後板目表面を薄く切削して、木目に沿った色模様を出現させる方法について、実用化を念頭に製造方法の簡易化を図った。その結果、乾燥時にさん木を用いて積み重ねても、仕上がりの色模様にはほとんど影響が出ないこと等が明らかになった。また、利用分野を検討するために、工芸品を試作した。さらに、黒色とオレンジ色の染料を用いれば、節や変色部分が目立たなったことから、スギの低質材を内装材料に利用する際にも、本方法は有効であると考えられた。

 

 

木材の多色染め(第3報)
クリア塗装による変退色の軽減

酒井温子

 既報で多色染めに使用した8種類の染料を用いて染色木材を作り、耐光性を評価したところ、5種類で明らかな変退色が認められた。そこで、この5種類の染色木材と無染色木材にクリア塗装を行い、再度耐光性を評価した結果、すべての染色木材に高い耐光性を付与できる塗料は見い出せなかったが、染料ごとに適する塗料を選択することで、耐光性を向上させることができた。

 

 

乳化性木材表面処理用防腐剤の耐候性(第1報)
蛍光X線分析法による薬剤成分の分析方法と測定事例

酒井温子

 乳化性木材表面処理用防腐剤の耐候性を評価するために、(社)日本木材保存協会規格第1号に準じて処理を行った木材試験体を用いて耐候操作を行い、試験体に残存する薬剤成分量を蛍光X線分析法により測定した。その際、分析試料として試験体をそのままで供したため、塩素量については試験体のごく表面部分での変化しか明らかにできなかった。しかし、同一試験体の同一位置で繰り返し測定すれば、薬剤の残存量の変化を精度良く確認できると考えられた。また、この方法により2薬剤の耐候性を検討したところ、いずれの薬剤も耐候操作約7回で、1回あたりの溶脱・揮散量が減少し、20回以降では溶脱・揮散がほとんど生じないことが明らかになった。



木材に対する銅の固着性評価(第1報)
キトサンによる銅の固着

岩本頼子・伊藤貴文・中村嘉明

 キトサン銅塩の溶媒として数種の酸を用い、酸の種類による木材への固着性の差について検討した結果、1%酢酸水溶液を溶媒とした場合に、最も良好な固着性が得られ、銅の吸収量が1.2kg/m3のとき、約70%の銅を固着した。また、防腐性能試験を実施した結果、キトサン銅塩ならびにキトサン亜鉛塩は、ともにカワラタケに対して高い防腐効力を示した。

 

 

木材に対する銅の固着性評価(第2報)
アゼライン酸による銅の固着と寸法安定性

岩本頼子・伊藤貴文・中村嘉明

 高い寸法安定性を付与できるアゼライン酸と、防腐効力の発現が期待できる銅を含むアゼライン酸銅溶液を用いてスギ辺材試験片を処理した。その結果、アゼライン酸の存在は銅の固着性を高め、今回設定した実用的な銅濃度0.14~0.28%の範囲においては、アゼライン酸による木材への寸法安定性の付与は銅の影響を受けず、木材に対する銅の固着と寸法安定性の付与を同時に行うことができた。

 

 

寸法安定化木材の吸湿性と寸法安定性

横井和代・伊藤貴文・疋田洋子

   グリオキザール樹脂およびアゼライン酸を用いて寸法安定化処理を施したヒノキ辺材試験片の吸湿性と膨潤特性について検討した。その結果、グリオキザール樹脂処理に伴う吸湿性の低下は小さく、高濃度処理においては未処理時よりも吸湿量が増加した。その寸法安定性の発現機構は、主にバルキングによると考えられるが、高含水率域での膨潤が著しく抑制されていることなどからは、架橋の形成が示唆された。一方、アゼライン酸処理材は、高いバルキングの付与と吸湿性の低下により、広い相対湿度範囲において非常に優れた寸法安定性を発揮した。

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