木材加工資料No.28(要旨)

熱ロールプレスを用いた木材の圧密とグリオキザール樹脂による変形回復の抑制

伊藤貴文

 表面硬さの改善を主な目的として、連続した作業が可能な熱ロールプレスによる表面圧密処理を行った。
 13mm厚さのスギ辺材板目板を供試木材として用い、浸漬処理によってその表面付近にグリオキザール樹脂を含浸後、熱ロールプレスによる10~20%の圧縮処理を実施し、その仕上がり状況や変形の回復について検討した。
 樹脂水溶液への浸漬前に実施した前圧縮処理によって、樹脂の吸収量は増加し、変形の回復は著しく抑制されたが、樹脂処理を施したときには、圧縮率が高くなると、表面割れ等の欠点が生じた。
 前圧縮処理での圧縮率を20%、熱ロールプレスによる圧縮率を10%とすることにより、欠点が少なく、かつ変形の回復がほとんどない材料が得られた。

 

 

熱ロールプレスを用いた木材の圧密と水性ポリウレタン樹脂による変形回復の抑制(第1報)
圧縮変形の回復試験

伊藤貴文

 表面硬さの改善を主な目的として、熱可塑性の水性ポリウレタン樹脂をスギ板目板の表面付近に含浸した後、熱ロールプレスにより圧縮変形を与えた。
 得られた表面圧密試験片に対して、吸湿と乾燥、あるいは吸水と乾燥を繰り返す変形の回復試験を実施した。
 その結果、樹脂処理を施すことによって、吸湿と乾燥との繰り返しによる変形の回復は、顕著に抑制されたが、吸水処理によって大きく変形は回復した。
 水性ポリウレタン樹脂による変形回復の抑制は、熱ロールプレスによる圧密時に可塑化した樹脂がホットメルト接着剤のような働きをすることによると思われる。

 

 

熱ロールプレスを用いた木材の圧密と水性ポリウレタン樹脂による変形回復の抑制(第2報)
表面粗さおよび硬さの変化

伊藤貴文

 表面硬さの改善を主な目的として、熱可塑性の水性ポリウレタン樹脂をスギ板目板の表面付近に含浸した後、熱ロールプレスにより圧縮変形を与え、表面圧密試験片を得た。
 ブリネル硬さの測定法では、内部の未圧縮部分の影響により、正確な表面硬さを求めることができなかったので、鉛筆引掻き試験を行い、そのときに生じる傷の深さから、表面圧密試験片の早材部分のブリネル硬さを推測したところ、最大で無処理時の約5倍にまで向上していることが明らかになった。
 また、樹脂処理を併用することにより、表面の平滑度も顕著に改善された。

 

 

熱ロールプレスを用いた木材の圧密と水性ポリウレタン樹脂による変形回復の抑制(第3報)
回復試験後の表面性能

伊藤貴文

 表面硬さの改善を主な目的として、熱ロールプレスによる表面圧密処理が行われているが、変形の回復に伴い表面性能が低下することと、割れの発生頻度が高いことが問題になっている。
 本報では、乾湿繰り返しによる変形回復試験後の表面粗さや硬さなどの表面性能の検討、および割れの発生状況について観察した。
 その結果、水性ポリウレタン処理樹脂への浸漬という簡便な処理によって、割れの発生や表面粗さの増加を顕著に抑制できることが判った。
 しかし、表面硬さの低下を最小限に抑えるためには、樹脂を加圧含浸させる必要があった。

 

 

屋外用クリア塗料の耐候性

伊藤貴文・中村嘉明・倉田公男・森井良一

 屋外で使用に耐え得るクリア塗料を求めて、調査を行った結果、唯一その可能性があると思われた一液性の水性ウレタン塗料「ウッドスキンコート(WSC)」について、南面45度の台上での屋外暴露試験およびベンチ等への試験的な塗布を行った。
 WSC塗布による材色の変化は、屋内用ウレタンクリア塗料とほぼ同程度であった。
 屋外暴露に伴う塗装面の材色変化は、一般的な浸透型の屋外用着色塗料よりも顕著に低く、また、塗膜にもある程度の耐候性が認められた。
 劣化は木口面から発生することがほとんどであったので、木口面からの塗料の吸収量を増加させるなどの工夫を行い、塗膜に連続性を持たせれば、塗膜の耐候性はさらに高くなると思われた。

 

 

アゼライン酸拡散処理による木材の寸法安定化(第1報)

岩本頼子・伊藤貴文

 アゼライン酸溶液を加圧注入することにより、極めて高い寸法安定性の発現が認められた。
 拡散法でもそれと同等の性能を付与できるかどうか検討するため、飽水状態のスギ辺材試験片を、濃度、温度、溶媒、さらには試験片と溶液の体積比が異なる一連のアゼライン酸溶液中に、所定時間浸せきした。
 その結果、拡散処理では、加圧注入よりも重量増加率は低かったが、例えば浸せき時間24時間、温度60℃、体積比1:10という条件では、加圧注入と同等の大きなバルキング率および寸法安定性が得られた。

 

 

防腐剤を加圧注入したラミナを用いた集成材の接着性能(第1報)

和田 博・高橋真紀子・藪岡貞治

 2種類の防腐剤をそれぞれ加圧注入したラミナを用いて作製された集成材の接着性能試験を行った。
 防腐剤には、ポストCCAとして今後の使用が予想される、銅・アルキルアンモニウム化合物系(ACQ)、およびアゾール・プロペタンホス系薬剤(AZP)を用いた。
 これらの防腐剤が加圧注入されたスギ、オウシュウアカマツ、ラジアータパインラミナを用いて5プライの集成材を作製し、集成材の日本農林規格(JAS規格)に基づくブロックせん断試験、および3種類のはくり試験(浸せきはくり試験、煮沸はくり試験、減圧加圧試験)を行い、接着性能を評価した。
 はくり試験の回数はいずれもJAS規格より多い5サイクルとした。その結果、
 ブロックせん断試験では、無処理の集成材、防腐処理集成材ともに、すべての試験片がJAS規格に適合していた。
 浸せきはくり試験では、2サイクル終了後にすべての試験片がJAS規格に適合していた。
 5サイクル終了後、一部の試験片にやや大きなはくりが生じたが、JAS基準よりもわずかに大きい値であった。
 煮沸はくり試験では、1試験片を除いて、試験片に発生したはくりのすべては5サイクル終了後においてもJAS基準値以下であった。
 減圧加圧試験では、浸せきはくり試験や煮沸はくり試験より大きなはくりが発生したが、無処理の集成材でははくりは少なく、2サイクル終了後にはJAS規格に適合していた。
 ラジアータパイン材には最もはくりが少なく、オウシュウアカマツ材にははくりが多かった。
 ACQよりAZPで処理した試験片のほうがはくりの発生が少ない傾向が認められた。
 3つのはくり試験で発生したはくり率の相関は明確でなかった。
 減圧加圧試験では1サイクルと2サイクル終了後のはくり率に大きな差が出現した。

 

 

スギ単板とガラス繊維クロスの接着性能

増田勝則・和田 博

 フェノール樹脂接着剤を使用して、スギ単板の間にガラス繊維クロスを挿入・接着して合板を製造した。
 その後、引張りせん断試験を行い、接着強さを求めた。
 合板製造時に、圧締時の温度、圧力、時間について接着条件を変化させ、各種接着条件がスギ単板とガラス繊維クロスの接着強さに及ぼす影響を求めた。その結果、接着強さはJAS規格を上回り、圧締圧力9kgf/cm2、圧締温度120℃、圧締時間10分の条件において最も高い値を示した。

 

 

川上村産スギ製材品の曲げ強度試験

中田欣作・杉本英明

 奈良県産スギ材の構造用の製材品としての用途拡大を目的として、川上村産の高樹齢のスギ材から得られた正角材22本、平角材28本の実大曲げ試験を行った。
 その曲げ強度性能を検討するとともに、針葉樹の構造用製材の日本農林規格に基づく強度等級区分について検討した。
 得られた結果を以下に示す。
1)正角材の曲げヤング係数は109tf/cm2、曲げ強さは538kgf/cm2、平角材の曲げヤング係数は82tf/cm2、曲げ強さは358kgf/cm2であった。
2)破壊形態は、引っ張り側の最外層から年輪に沿って順次剥がれる特異的な形態であり、粘り強い変形破壊特性を有していた。
3)目視等級区分した製材品は、正角材では乙種1級、平角材では甲種1、2級が多く、それらの曲げ強さは材料強度を大きく上回っていた。
4)機械等級区分した製材品は、正角材および平角材ともにE90、E110等級が多く、それらの曲げ強さは材料強度をほぼ満足していた。

 

 

スギラミナの厚さ別乾燥試験

小野広治・寺西康浩・沖中玲子

 厚さ27mm、33mm、42mmのスギラミナの木取りと厚さの違いによる乾燥性について、同一乾燥条件で含水率10%まで乾燥して比較した。
 天然乾燥により初期含水率が35~45%程度に乾燥された材では、木取りによる乾燥経過の顕著な差はみられなかった。また、乾燥時間はラミナの厚さに比例した。
 標準的な乾燥スケジュールと温度80℃一定で段階的に相対湿度を低下させていく修正スケジュールとの乾燥時間を比較した結果、修正スケジュールでは乾燥時間を約1~2割短縮することができた。

 

 

吉野林業地帯におけるスギの葉枯らし乾燥試験

沖中玲子・小野広治・寺西康浩・松山將壯

 吉野林業地帯で行われているスギの葉枯らしの効果を調べるため、樹齢70~90年のスギ36本を用いて葉枯らし乾燥試験を行った。
 その結果、葉枯らし開始から約60日間で辺材含水率は低下するが、心材含水率はほとんど低下しないことが明らかとなった。
 また、心材色の変化は地区によって様々な特徴があり、全体として一定の傾向は認められなかった。

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