木材加工資料No.29(要旨)

川上村産ヒノキ製材品の曲げ強度試験

中田欣作・杉本英明

 奈良県産ヒノキ製材品の用途拡大を目的として、川上村産の75および90年生のヒノキ材から得られた心持ち正角材51本の実大曲げ試験を行った。その曲げ強度性能を検討するとともに、針葉樹の構造用製材の日本農林規格に基づく強度等級区分について検討した。得られた結果を以下に示す。
1)ヒノキ正角材の強度性能の平均値は、曲げヤング係数が103tf/cm2、曲げ強さが520kgf/cm2であり、昨年度行った川上村産スギ正角材の強度性能よりやや低い値であった。これは、ヒノキ正角材の含水率の平均値が24.0%であり、スギ正角材よりも含水率が高かったことが影響していると考えられる。
2)含水率の補正を行った値で比較すると、ヒノキ正角材の曲げヤング係数および曲げ強さは、スギ正角材のそれらよりも14%および28%高くなった。
3)目視等級区分した製材品は、大部分が乙種1級であり、その曲げ強さの平均値は材料強度の2.1倍であるとともに、5%下限値は材料強度を満足していた。
4)機械等級区分した製材品は、E110、E130等級が多く、それらの曲げ強さの平均値は材料強度の1.5倍であるとともに、5%下限値は材料強度を満足していた。

 

 

化粧ばり集成材に発生したヤニの2、3の観察事例
滲出経路の推定

酒井温子・和田 博

 化粧ばり集成材の化粧単板の表面に滲出したヤニについて、3事例を取り上げ、ヤニの滲出経路を観察した。その結果、ヤニが芯材から発生したと推定されたのが2例、化粧単板から発生したと推定されたのが1例であった。このようなヤニの発生を軽減するためには、芯材および化粧単板の両方に対して、それぞれに適したヤニの除去方法を検討する必要がある。また、芯材からのヤニの発生防止については、ヤニが接着層を通過できないように、接着工程の改良により、接着層の空隙をなくす方法も検討する価値がある。

 

 

供試材の寸法形状に合わせた防かび効力試験

岩本頼子

 現行の木材用防かび剤の防かび効力試験では、培養容器としてシャーレを使用するために、厚みの大きい供試材を用いることができない。そこで、供試材の厚みが制限されないよう、シャーレに代えてマヨネーズ瓶を用い、厚さが18mmの試験片で防かび効力試験を実施し、規格に定められた方法と比較した。その結果、菌糸が試験片の上面に到達する日数は規格法に比べて明らかに遅延したが、培養期間4週間後には、ほぼ同一の試験結果が得られた。

 

 

造膜タイプの屋外用クリア塗料による防腐効果

岩本頼子・酒井温子・伊藤貴文

 造膜タイプの塗料を木材に塗布することによって、木材腐朽菌の侵入を防止することが可能であるかを検討した。(社)日本木材保存協会規格第1号に基づく防腐効力試験を実施し、試験前後の塗膜の状態を走査型電子顕微鏡を使用して観察した。その結果、塗膜の耐候性が優れており、かつ塗膜自体に防腐成分を含むものでは、重量減少率が3%以下という同規格の防腐性能基準を満たすことができた。しかし、塗膜の耐候性が低い場合、欠損部から木材中へ菌糸が侵入し、同規格の性能基準を満たすような防腐効果は得られなかった。

 

 

グリオキザール樹脂処理木の接地暴露試験

伊藤貴文

 グリオキザール樹脂処理木材の耐朽性について評価するため、屋外での5年間に及ぶ接地暴露試験を実施した。反応温度やジプロピレングリコール(DPG)の混合比を変えて調整した繊維方向の厚さが5mmのヒノキ辺材試験片を用い、その一方の木口面が直接地面に接触するように設置した。その結果、反応温度が低いときには、暴露初期に未反応物の流脱によると考えられる顕著な重量減少が見られたほか、5年経過時には微生物による劣化が観察されたが、反応温度が高く十分に反応が進んでいるときには、そのような劣化はみられず、高い耐朽性が確性できた。また、DPGの混合は、初期の寸法安定性および熱水による加水分解抵抗性を高めるが、5年経過後の重量減少率や寸法安定性には、そのようなDPG混合の効果は認められなかった。

 

 

カルボキシエチルチオコハク酸処理木材の耐朽性

伊藤貴文・加藤賢二・岩本頼子・西村眞人

 スギ辺材を供試木材として、カルボキシエチルチオコハク酸(CETSA)処理によって付与される耐朽性能をJIS K 1571-1998に準拠して評価した。その濃度を10、20%に調製し、触媒にリン酸2水素ナトリウムを用い、反応温度70~140℃、反応時間6~48時間としてCETSA処理を行った。CETSAの濃度が20%、反応温度が110℃以上であれば、腐朽に伴う重量減少率は3%かそれ以下となり、高い耐朽性が付与されることが明らかになった。また、CETSA処理に伴う重量増加率と腐朽試験による重量減少率との間には一定の関係があり、オオウズラタケに対しては重量増加率が30%以上、カワラタケに対しては20%以上であれば、腐朽現象はほとんど認められなかった。

 

 

防腐薬剤を加圧注入したラミナを用いた集成材の土台としての適性評価(第1報)
3、4、5プライ防腐処理集成材の材質と接着性能

満名香織・和田 博・増田勝則・高橋真紀子・籔岡貞治

 スギ材を土台として使用することを目的として、ラミナに防腐薬剤を注入して作製した防腐集成材の、土台としての適性を検討するため、吉野産スギラミナを用い、ラミナの材質、注入性、接着性能について調査した。節径比、曲げヤング係数ともに土台として適しており、含水率は全乾法で求めた測定値でJASに適合していた。誘電式および抵抗式含水率計で求めた含水率は全乾法の数値よりやや低く、相関も低かった。防腐処理がラミナの含水率測定にどう影響するかは今後の検討を要する。注入量および浸潤度はラミナによってばらつきが大きく、非常に良く注入されているものから少ししか注入できていないものまであった。接着性能は、使用した接着剤により異なった。

 

 

防腐薬剤を加圧注入したラミナを用いた集成材の土台としての適性評価(第2報)
3、4、5プライ防腐処理集成材の強度性能

和田 博・満名香織・増田勝則・高橋真紀子・薮岡貞治

 防腐剤を加圧注入したスギラミナを用いて3、4、5プライの防腐処理集成材を作製し曲げ試験および部分圧縮試験を行い、防腐土台としての適性を検討した。その結果、いずれの積層数の防腐処理集成材も曲げ強度に関してはほとんど差がなく、土台としての曲げ性能は十分であった。部分圧縮試験では、5プライの防腐処理集成材の平使い(荷重方向を積層面に垂直になるようにしたもの)での強度性能は、5プライの防腐処理集成材の縦使い(荷重方向を積層面に平行になるようにしたもの)より劣っていた。5プライ平使いを除く防腐処理集成材の圧縮比例限強さは、長期許容応力度の1.7~2.1であり、土台として、十分な強度性能であると思われた。これに対して高含水率であったためにヒノキ製材では1.3、ベイツガ製材では1.2など、圧縮比例限強さは長期許容応力度と同程度であった。

 

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