木材加工資料No.31(要旨)

表面処理金属を用いた接着接合によるスギ小径材合わせばり簡易工法(CLCS工法:Coupled Lumber Construction with Surface-treated Steel)の開発(第2報)
収納庫の試作

和田 博・満名香織・増田勝則

 スギの板材(幅10cm、厚さ3cm程度)2枚を用いて合せばりまたは合せ柱とし、一般の人々が小規模の建物を容易に建てることができる工法を開発し、CLCS工法と呼んでいる。日曜大工で小物を作るのに飽き足りない人を対象に、木材の加工はドリルによる孔あけと丸鋸による鋸断のみの簡易な作業に限定し、親と子が一緒に製作することにより木材が家庭内で話題となる環境を目指すものである。今回は畳一畳の広さの収納庫を試作した。

 

 

高周波・蒸気複合乾燥を施したスギ製材品の強度性能

中田欣作・小野広治・寺西康浩・大前善則

 高周波・蒸気複合乾燥したスギ製材品正角材及び平角材の曲げ強度試験を行った。生材状態で曲げ剛性試験を行った後、乾燥材の曲げ破壊試験を行い、曲げヤング係数の変化を検討するとともに、その曲げ強度性能を高温乾燥および中温乾燥した製材品と比較検討した。得られた結果を以下に示す。
 1)高周波・蒸気複合乾燥したスギ製材品の含水率、曲げヤング係数及び曲げ強さの平均値は、正角材ではそれぞれ19.3%、80.6tf/cm2および408kgf/cm2、平角材ではそれぞれ8.6%、81.5tf/cm2および461kgf/cm2であった。含水率等の補正を行った値で比較すると、高周波・蒸気複合乾燥したスギ製材品の曲げヤング係数および曲げ強さは、高温および中温乾燥した製材品のそれらと同等であった。
 2)曲げ試験での中央たわみより求めた静的ヤング係数と打撃音より求めた動的ヤング係数を比較すると、正角材では静的ヤング係数の方が6%高く、平角材では動的ヤング係数の方が10%高くなった。また、生材から乾燥材までの幅広い含水率の範囲で、両者には良好な相関関係が認められた。
 3)ヤング係数は、含水率30%以下において、含水率の低下とともに増加し、含水率が15%の乾燥材のヤング係数は、生材時の値よりも10%高くなった。しかし、曲げ試験における荷重-たわみ曲線の傾きで示される剛性は、含水率が低下してもほぼ一定の値を示した。
 4)製材品の生材時における機械等級区分の範囲はE50~E110等級であったが、乾燥材のそれはE70~E130等級となり、乾燥することにより全体の45%の製材品の等級が1ランクアップした。

 

 

ヒノキひき板の曲げ強度試験

西 雅史・中田欣作・増田勝則・満名香織

 ヒノキひき板の節による曲げヤング係数と曲げ強さの変化を調べるために、あらかじめ節径比を測定したヒノキひき板および無欠点材の曲げ試験を行った。その結果、ひき板の長さ方向における曲げヤング係数の変動は、同一部位の無欠点材の曲げヤング係数のそれとほぼ一致した。また、曲げヤング係数および曲げ強さは節径比の増大とともに低下し、節の影響は曲げ強さの方がやや大きかった。目視等級区分されたひき板では曲げヤング係数および曲げ強さは等級の低下とともに減少した。機械等級区分されたひき板においても曲げ強さは同様の傾向を示した。

 

 

地域産材の低コスト乾燥技術の開発(Ⅲ)
スギ梁材の熱気乾燥と高周波・蒸気複合乾燥による乾燥特性

小野広治・寺西康浩・大前善則

 スギ梁材の熱気乾燥における、乾球温度や蒸煮処理の有無による乾燥経過や割れ発生の差異と熱気乾燥と天然乾燥との効果的な組合せ、ならびに高周波・蒸気複合乾燥による乾燥性について検討した。得られた結果は以下のとおりである。
 1)熱気乾燥における乾球温度60℃と80℃との違いや蒸煮処理の有無による乾燥経過には、大きな差異は認められなかった。
 2)割れの発生に対する影響は、蒸煮処理の有無よりも乾球温度の方が高くなった。すなわち、乾球温度80℃の方が60℃にくらべて割れの発生率は小さくなった。
 3)熱気乾燥後に天然乾燥する場合と天然乾燥後に熱気乾燥する場合では、含水率の減少量は同様であった。しかし、割れは天然乾燥後に熱気乾燥した場合の方が発生しやすかった。
 4)高周波・蒸気複合乾燥は、熱気乾燥の1/3程度の乾燥時間で含水率を20%以下に乾燥することができた。しかし、仕上がり含水率のばらつきを小さくするためには、重量選別してそれぞれに適正な高周波出力を投入することが必要であった。

 

 

風害木の材質調査

杉本英明・中田欣作

 台風の被害を受けたスギ、ヒノキ丸太は風裏側に「もめ」、「目廻り」の損傷を受けており、製材して製品化しても材面にキズとして現れる。これらの材は価値がない上に構造用部材としての利用を図るには強度低下が心配される。このことから、風害木からの製材品について「もめ」の程度と強度の関係について調べた。「もめ」の発生が目視により確認できる製材品(柱材)については、およそ30%の強度の低下が見られた。また、破壊形態も健全材とは異なり、比例限度に達するまでにいきなり破壊するものもあった。風害を受け、「もめ」、「目廻り」の発生した立木は約3年輪ほどで回復するが丸太の風裏側半分は大きな「あて」として成長することから、残存木として生長させるか否かは今後の課題となるものと思われる。

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