河合昌孝
日本きのこ学会誌.20 (4), 209-214 (2013)
ホンシメジ71菌株について、無菌根状態で育成したアカマツ芽生えとともに3ヶ月間共培養して菌根形成率の違いを調べた。共培養終了後の接種源は、内部が白色で緊密で堅いもの(1型)、内部が白色だがもろくて崩れやすいもの(2型)、カビに侵され原形をとどめないもの(3型)などが観察された。総ての接種源が健全な菌株では、菌株ごとに1型であるか2型であるか分かれたが、型による菌根形成率の傾向は見られなかった。また、これらの菌株では、菌根化率が60%を超えるものが多数あったが、10%を切る菌株も見られた。これらの結果から、菌株により菌根形成の能力が異なることが示された。
キーワード:菌根形成能力、接種源の培地組成、ホンシメジ
酒井温子・佐藤敬之*1*2・金沢吉昭*3
木材保存. 38 (3), 111-116(2012)
窒素雰囲気下で熱処理されたスギ辺材杭について、JIS K1571:2010にほぼ準拠した野外防腐性能試験を、奈良県森林技術センター明日香実験林において実施した。
設置後8年の間に、無処理杭、180℃および200℃処理杭については、腐朽とヤマトシロアリの食害により地際部の平均被害度が2.5を超え、耐用年数を迎えた。一方、220℃および240℃処理杭では生物による被害は軽微であり、8年経過時の地際部の平均被害度は1以下であった。また、杭試験体の地際部を光学顕微鏡で観察したところ、200℃処理杭では内部まで担子菌とバクテリアによる分解が進行していたが、220℃および240℃処理杭では、表面付近でバクテリアによる分解が確認されただけであった。
以上より、熱処理によってスギ材の耐久性が向上することが、野外試験においても明らかになった。
キーワード:熱処理、腐朽、ヤマトシロアリ、野外試験、耐久性
*1 江間忠ウッドベース(株)、*2 元、エステックウッド(株)、
*3 (株)江間忠ホールディングス
酒井温子・池上智重*1・民谷浩二*2
木材保存. 39 (1), 24-31(2013)
アセチル化木材(ラジアタパイン辺材、アセチル化度19%以上)と16種の高耐朽性樹種等について、JIS K1571:2010「木材保存剤-性能基準及びその試験方法」5.2.1.1注入処理用に準拠して、室内耐朽性試験を実施した。その結果、腐朽操作前に耐候操作(流水中の浸せきと60℃乾燥の10回繰り返し)を実施しても、今回使用したアセチル化木材は、イペ、ウリン等の一部の高耐朽性樹種とともに、オオウズラタケおよびカワラタケによる質量減少率が3%以下となり、高い耐朽性と耐候性を有すると判断された。また、今回使用したアセチル化木材は、4mの板材の木口端部付近のみならず中央付近においても、同様の高い耐朽性能を示した。これらの結果から、アセチル化木材は、天然林を伐採することでしか入手できない高耐朽性樹種の代替材になりうることが示唆された。
キーワード:アセチル化木材、高耐朽性樹種、耐朽性
*1 池上産業株式会社、 *2 タミヤ株式会社