柳川靖夫
木材学会誌.59 (5), 255-260 (2013)
ラミナに薬剤を注入して作製したスギ集成材を10年間の屋外曝露試験に供し、接着剤の種類、木材保護塗料の塗布、試験片採取位置、および集成材密度が接着耐久性に及ぼす影響を調べた。ACQで処理した集成材の接着耐久性はAZP処理および無処理の集成材よりも低く、せん断強度および木部破断率は低下し、木材保護塗料を塗布しても顕著に改善されることはなかった。AZP処理では接着耐久性の低下は小さく、また、木材保護塗料の塗布効果が認められた。薬剤無処理では、木材腐朽によりせん断強度平均値は低下したものの、腐朽した試験片を除外するとせん断強度は低下しておらず、また、木材保護塗料の塗布効果は顕著で、塗布により接着強度の低下および木材腐朽が抑止された。密度が高い集成材は、曝露前および曝露後とも密度の低い集成材より高いせん断強度を示した。
キーワード:屋外曝露試験、接着耐久性、集成材、スギ、木材保存剤
柳川靖夫・満名香織*1・和田 博*2
木材学会誌. 60 (1), 28-34(2014)
ラミナに木材保存剤を注入してスギ集成材を作製し、それらから採取したブロックせん断試験片を繰り返しの減圧加圧試験および最長2年間の屋外曝露試験に供するとともに、実大集成材を10年間の屋外曝露試験に供した。劣化後のせん断強度の分布は、促進劣化試験では正規分布に適合する傾向が見られ、劣化条件がより緩やかな曝露試験では、劣化が相対的に大きい場合は2母数もしくは3母数ワイブル分布に適合する傾向が見られた。せん断強度の低下速度に及ぼす要因として、木材保存剤と接着剤との組み合わせは重要であり、この組み合わせが適切であり、木材腐朽が発生しないならば、屋外環境下でも集成材の接着強度は長期間維持される可能性が示唆された。
キーワード:屋外曝露試験、集成材、スギ、せん断強度、木材保存剤
*1 元奈良県森林技術センター
*2 トリスミ集成材株式会社
柳川靖夫・林 知行*1・宮武 敦*2
木材工業. 68 (8), 342-346(2013)
屋外環境下で使用される木質材料の接合部周辺の含水率を調べ、含水率増加を抑制することを試みた。接合部周辺の木口面での含水率の増加を抑制する上において、同木口面のシールは被覆よりも有効であった。部材を垂直方向に曝露した場合と水平方向に曝露した場合とを比較すると、垂直方向に曝露した方がより高い含水率を示した。ピンやボルト周辺の防水処理により含水率の増加は抑制され、接合具周辺の隙間を充填する必要性が示唆された。FRPを接合部に接着した場合は接合具の防水処理を行う必要があり、これら対策により接合部周辺の含水率の増加を抑制できることが示唆された。
キーワード:屋外曝露、集成材、接合部、ポリビニルアルコール
*1:(独)森林総合研究所
寺西康浩・酒井温子・南本明弘*1
木材工業. 68 (7), 301-304(2013)
スギ正角材を2分割し、一方に蒸気高周波複合乾燥を、もう一方に天然乾燥を施した後、心材部の生物劣化抵抗性を調べた。その結果、室内耐朽性試験において蒸気高周波複合乾燥によるスギ心材の耐朽性の低下が認められた。これに対し野外耐朽性試験においては、蒸気高周波複合乾燥した材の耐用年数が天然乾燥した材のそれよりも明らかに低かったのは4個体中だ1個体だけであった。また野外耐蟻性試験においては、乾燥方法の間に耐久性に関する明らかな差は認められなかった。
キーワード:蒸気高周波複合乾燥、スギ心材、耐久性
*1:川上産吉野材販売促進協同組合
酒井温子・服部 力*1・和田朋子*2*3、鮫島正浩*2
木材保存. 39 (5), 226-232(2013)
日本国内の木橋、風呂および遊具の木柱で採集された子実体および腐朽木材から分離された菌株は、ITS-5.8S rDNAの塩基配列よりオオウズラタケと同定された。また、培養ビン内で形成された子実体の特徴も、オオウズラタケに一致した。これらの分離菌株の生育適温は35℃であった。スギ辺材およびブナ辺材の腐朽速度は、JIS Z 2101や K 1571で供試菌と指定されている FFPRI 0507株と同程度に速かった。
キーワード:オオウズラタケ、子実体、分離、同定、腐朽木材
*1:(独)森林総合研究所
*2:東京大学
*3:東京文化財研究所