研究報告No.44再録

屋外遊具の木製支柱の腐朽と折損

酒井温子・小原光博*1・村上茂之*2・和田朋子*3*4・鮫島正浩*3

木材保存.41(1),18-25(2015)

 屋外に設置されていた遊具の木製支柱が折損した。この支柱は電柱の再利用材で、遊具として約18年間使用されていた。支柱の根元には古タイヤが12個連続して被されており、折損はタイヤ被覆部における曲げ破壊が原因であった。タイヤ被覆部とその上部では腐朽が進行しており、著しい強度低下が予想された。また、支柱表面の6カ所からワタグサレタケが、折損部の断面の1カ所からオオウズラタケが分離された。これらの菌が支柱の腐朽に関与したと考えられた。

キーワード:木製支柱、腐朽、強度低下

*1 岐阜大学教育学部
*2 岐阜大学総合情報メディアセンター
*3 東京大学
*4 東京文化財研究所

Rapid copper transfer and precipitation by wood-rotting fungi can effect copper removal from copper sulfate-treated wood blocks during solid-state fungal treatment

木材腐朽菌による迅速な銅の移動と集積が、硫酸銅で処理された木材試験体から銅の除去を引き起こした

服部武文*1・久森弘道*2・鈴木史朗*2・梅澤俊明*2・吉村 剛*2・酒井温子

International Biodeterioration & Biodegradation, 97, 195-201( 2015)

 硫酸銅を含浸させたスギ試験体に対して、銅耐性木材腐朽菌であるオオウズラタケとチョークアナタケによる2週間の培養処理を行ったところ、木材の質量減少は確認されなかったが、含有させた銅の43%あるいは35%が木材中から除去された。これらの菌は、木材表面にシュウ酸銅の形で銅を集積させるとともに、木材外へも銅を移動させた。この迅速な菌による銅の運搬システムは、銅を含む廃材を廃棄する場面で、銅と木材の分離作業に活用できる可能性がある。

キーワード:銅除去、木材腐朽菌、オオウズラタケ、チョークアナタケ、シュウ酸銅

*1 徳島大学
*2 京都大学生存圏研究所

大断面スギ心材の乾燥と薬剤注入(第2報)
-高温セット法で乾燥した正角材への薬剤浸潤と注入後の割れ-

寺西康浩・酒井温子・海本 一・増田勝則・田中陽子・伊藤貴文・桃原郁夫*1・矢田茂樹*2・藤本登留*3・蒔田 章*4・茂山知己*5・山口秋生*6・手塚大介*7

木材学会誌.60(3),177-185(2014)

 適切に保存処理されたスギ心持ち正角材の製造技術の開発を目的として,注入前の乾燥方法が薬剤浸潤度と注入後の寸歩変化や割れに及ぼす影響について検討した。天然乾燥、中温乾燥、および高温セット法を用いた乾燥を行ったスギ正角材試験体への木材保存剤の浸透性および注入処理後の寸法変化を調べた結果、天然乾燥材や中温乾燥材に比べると高温セット法で乾燥したスギ心材は注入量が少なかった。また、高温セット法で乾燥した無背割り材において、注入後の乾燥工程や養生時に表面割れとそれに伴う顕著な寸法変化が生じた。そのため、これらの材は所定の寸法に仕上げると、インサイジングを行っても製材の日本農林規格(JAS)に定められる浸潤度の基準を満たさない場合があることが明らかになった。

キーワード:スギ心材、薬剤注入、薬剤浸潤、乾燥方法、表面割れ

*1 (国)森林総合研究所
*2 元 横浜国立大学
*3 九州大学大学院農学研究院
*4 大日本木材防腐株式会社
*5 株式会社ザイエンス
*6 越井木材工業株式会社
*7 兼松日産農林株式会社

たわみ振動法による木材のヤング係数の測定

中田欣作、梶谷俊郎*1、竹村嘉城*2、三田厚志*3

木材工業.69(10),430-435( 2014)

 製材、丸太、厚板および集成材について、縦およびたわみ振動ヤング係数と曲げヤング係数を測定した。
 製材、丸太および集成材の縦振動ヤング係数は曲げヤング係数の1.1倍となり、両者の比のばらつきは大きかった。スギ製材では、両者はほぼ一致したが、これはスギ材のみにみられる特徴的な傾向であった。製材においては、樹種毎に曲げヤング係数と縦振動ヤング係数の回帰式を求めて補正することにより、縦振動ヤング係数を曲げヤング係数の指標とすることが可能であった。集成材においては、内部のヤング係数の配置は製造条件により一様ではないので、縦振動ヤング係数を曲げヤング係数の指標とすることは難しい。
 製材、厚板および集成材のたわみ振動ヤング係数は曲げヤング係数とほぼ一致し、両者の比のばらつきは小さかった。また、集成材の長さを変化させた場合には、縦振動ヤング係数は変化しなかったが、たわみ振動ヤング係数は曲げヤング係数と同様に長さの減少に伴って低下した。以上より、たわみ振動法では長さの変化および内外層の材質の変化に伴うヤング係数の変化に関して曲げヤング係数と同等の測定が行えることが分かった。
 実用的な装置により測定したたわみ振動ヤング係数は実験室で測定したそれとほぼ同一であり、曲げヤング係数と良く一致した。工場内で集成材のヤング係数を測定する方法としては、たわみ振動法は優れた方法であるといえる。

キーワード:ヤング係数、たわみ振動、縦振動、製材、厚板、集成材、丸太

*1 (株)トータル・ビルダーズ・システム
*2 (株)エーティーエー
*3 内外工業(株)

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