岡崎 旦
スギ天然出絞クローンのうち「中源3号」及び「雲外」の2クローンについて、板目面の放射組織の特徴を観察した。その結果次のことがわかった。
(1)両クローンとも、自然には出絞形態を示さない普通のスギ「シバハラ」に比べ、単位面積あたりの放射組織分布数が多く、とくに随付近ででその傾向が明確である。
(2)両クローンとも、同一生長期に形成された早材部の単位面積あたりの放射組織分布数は、丸太の地上高の高い部分で多く、低い部分で少ない。
(3)同一地上高における半径方向の放射組織分布数は、随付近で多く外部へ向かうにつれ減少し、丸太表面付近では少なくなる。
(4)両クローンとも普通のスギ「シバハラ」に比べ、放射組織細胞高が低い傾向がある。
(5)両クローンの放射組織の特徴は近似している。
和口美明・柴田叡弌・米田吉宏
1987年から1990年にかけて、奈良県内におけるスギ凍裂害を、被害林分の標高別、斜面方位別、林齢別の分布と、被害木の胸高直径、幹割れの方向、高さおよび長さについて調査した。被害林分は標高190mから1,100mまでの広い範囲で出現していた。8方向に分けた被害林分の斜面方位には、一定の傾向は認められなかった。被害林分は最も若い林でⅣ齢級であった。被害木の胸高直径は最も小さいもので12cmであった。幹割れの発生する方向は、傾斜地では斜面の谷側に多く認められたが、平坦地においては一定の傾向は認められなかった。幹割れは最も価値の高い元玉に被害を与えることがわかった。幹割れの長さは最も短いもので0.6m、最も長いもので5.6mでぁった。
河合昌孝
培養中のシラカンバの節部をBAP0.8mg/リットルとIBA0.1mg/リットル、GA35.0mg/リットルを組み合わして添加した1/2N-MS培地(MS培地の硝酸塩を1/2に希釈)に置床し培養すると、緑色のもろい塊を形成した。この塊を同組成の新しい培地に移植すると旺盛に成育した。緑色の塊の誘導、増殖はBAP0.1mg/リットル、GA35.0mg/リットルを添加した培地でも認められた。この塊を分割してBAP0.1mg/リットル、GA35.0mg/リットルを添加した培地で培養した場合、1カ月で置床時の約20倍の重量になった。顕微鏡観察から、この塊は苗条原基を一部にもつ早生分枝として増殖していると考えられた。増殖した塊を分割して、1/2N-MS培地を1/2に希釈し、BAP0.4mg/リットル添加した培地に移植すると多数のシュートを生じた。シュートは約0.2~0.6gの塊から約100~200本生じた。シュートを生じた塊をBAPを除いた培地に移植すると発根し、シュートの発達が見られた。発根した植物体はバーミキュライトに植え馴化した。
海本 一・江口 篤
ベイマツ平角材曲げ強度試験を実施した結果、次のことが明らかになった。
1)試験に供したベイマツ材の曲げ破壊係数の95%下限値は281kgf/cm2であり、建築基準法に定められた材料強度(285kgf/cm2)に達しなかった。
2)形質調査、欠点調査の結果、節径比、気乾比重、平均年輪幅と曲げ破壊係数の間には、1%水準で相関(r=0.4~0.5)が認められた。しかし、いずれもヤング係数と曲げ破壊係数の間の相関(r=0.7)には及ばなかった。
3)解析試験の結果、圧縮強度比に比べて曲げ強度比の低いことが確認された。
4)無欠点材や小試験体と同様に、平角材のような大断面材についても、動的ヤング係数は、曲げ破壊係数推定因子として、曲げヤング係数と同等の精度を持つことが明らかになった。
5)生材と気乾材の曲げ強度性能を比較した結果、曲げヤング係数と曲げ破壊係数については、無欠点材において明らかにされている結果と異なり、生材と気乾材の間に有意差は認められなかった。ただし曲げ比例限係数には有意差が認められたことから、生材の方が気乾材に比べて塑性的性質が早く現れることを確認した。
伊藤貴文
スギ、ヒノキ材をホルムアルデヒド含有率の異なる4種のグリオキザール樹脂で処理し、水に不溶な樹脂への転化率、バルキング率、寸法安定性能、吸湿性能等について検討した。
(1)転化率は樹脂のホルムアルデヒド含有率に大きく依存し、その含有率が高いほど、大きな転化率を示した。さらに、転化率は触媒添加率の影響を受けたが、注入した樹脂液の濃度には関係なく一定値を示した。また、樹種間での相違もほとんど認められなかった。
(2)ASEは、ホルムアルデヒド含有率が高い樹脂ほど大きな値を示した。また触媒添加率が多くなると低下する傾向が認められた。これは、触媒添加率の増加に伴ってバルキング率が小さくなること、MEEが極端に低下することなどによると考えられる。触媒添加率が少ない試料については、ASEおよびMEEは注入液濃度に関係なく、一定値を示した。一方、触媒添加率が多くなると、ASEおよびMEEは注入液濃度の上昇と共に減少した。
酒井温子
木材への液体浸透性を向上させるために、加圧注入処理の前処理として、半径方向への圧縮を試みた。浸透性の悪いラジアタパイン心材を中心に、気乾材および加湿や加熱を行った材を供試した。また、圧縮後は、加圧注入あるいは液体浸せきを行った。結果を以下にまとめる。
1)難浸透性の気乾材に対して圧縮処理を施してから加圧注入することで、浸透性は著しく向上した。半径方向に60から70%の圧縮により、小試験片(繊維方向70~200mm)に対して早晩材部にほぼ均一な注入が認められた。また、早材部のみへの浸透の場合は、40から50%の圧縮で良好な結果が得られた。
2)気乾材に半径60%の圧縮を加えても、加圧注入により前処理の90%程度まで、変形は回復した。
3)圧縮後、液体に浸せきさせた場合も、浸透性の向上がみられた。
4)加湿や加熱を行うことで、圧縮に要する加圧力を低減することができたが、加湿と加熱の両方を行うと圧縮後液体を注入しても変形の回復が不良で、浸透性の向上がみられなかった。 以上から、少なくとも小試験片に対しては、加圧注入処理の前に気乾状態で圧縮を行うことが、浸透性の向上に有効であることが明らかになった。