奈良県林試研報No.24(要旨)

ヒラタケ数品種の生産過程における菌体外酵素活性と子実体収量の相関

小畠 靖

 ヒラタケの多収性菌株の効率的な選抜方法を見いだすことを目的に、15菌株を用いてスギおがくず・米ぬか培地における生育過程の培地乾燥重量減少率、菌体外酵素活性、子実体収量を調べ、これらの形質間の相関について検討した。結果は次のとおりである。
1)発生処理をおこなった培養20日目までの培地重量減少率と子実体収量の間には相関関係は見られなかった。培養20日目(子実体発生処理)から収穫までの培地重量減少速度と子実体収量の間には正の相関関係がみられ、子実体の生育に子実体形成期における培地内容物の減少が関係すると思われた。
2)α-グルコシダーゼ、β-グルコシダーゼおよびキシラナーゼの活性は子実体収穫時に増加した。ラッカーゼ、パーオキシダーゼおよびマンガンパーオキシダーゼの活性は培養20日目に高く、収穫時には低下した。これら3種の菌体外酵素の収穫時における活性はいずれも発生区において低かった。測定した6種類の菌体外酵素の単独の活性と子実体収量の間には相関関係は見られず、これらの酵素活性の測定により多収性菌株を選抜することは困難であると考えられる。

 

 

スギ中径材を対象とした構造用製材の木取りシステム(第1報)
レーザ式変位計による丸太の立体形状の計測

中田欣作・海本 一・杉本英明

 材長400cmのスギ丸太の両木口の樹心を軸として9sで1回転させ、レーザ式変位計を用いて材長方向の5個の横断面における丸太半径を測定した。半径は回転角度1度毎に測定し、これを10度毎に平均した半径を用いて、丸太の各部分の断面積および丸太体積を計算した。丸太半径の測定誤差および丸太体積の計算方法の影響について検討した。得られた結果は以下のとおりである。
1)機械(リングバーカ)により平滑に剥皮された丸太では、半径の測定誤差は1mm、粗く剥皮された丸太でのそれは2mmであった。手剥きされた丸太での誤差は、機械剥きされたそれよりも小さかった。
2)回転角度1度毎で測定した半径では、丸太表面の割れや節等を敏感に拾い出すため、測定の際には、これらの影響を取り除く必要があった。
3)各々の断面でのすべての平均半径を用いることにより、丸太体積を正確に計算することができた。手計測が可能な3種類の計算方法の中では、末口、材中央および元口での3断面の円周により得られた断面積を用いると、計算誤差が最も小さくなった。材中央の断面積のみを用いた場合でも、十分正確な計算が可能であった。

 

 

ラミナの接着能に及ぼす諸因子について
圧締時の温度・圧締時間・材温・樹種・接着剤塗布量・接着剤のレゾルシノール含有量の影響

上田正文・坂野三輪子・和田 博

 ヒノキおよびエゾマツ集成材をフェノール・レゾルシノール共縮合樹脂接着剤を用いて製造し、接着能に及ぼすラミナの材温、接着剤塗布量、圧締温度・時間およびレゾルシノール含有量の影響を浸せきはく離試験より明らかにした。結果は以下のとおり。
1)ラミナの材温および圧締温度は接着能に大きく影響を及ぼす。
2)十分な接着能が得られる圧締条件では、レゾルシノール含有量(30.3%、38.5%)塗布量および樹種(ヒノキ、エゾマツ)は接着能に差異は認められなかった。

 

 

スギ材を用いた2、3、4プライ集成材の曲げ性能

和田 博・上田正文・柳川靖夫・田中 茂

 4プライ以下のスギ集成材の強度性能を明らかにするために、スギ中目材から採材したラミナをグレーディングマシンにより等級区分し、ラミナを縦使いと平使いで使用したときの曲げ性能を求めた。その後、3つの等級に対して2、3、4プライの集成材をそれぞれ作製して曲げ試験を行った。曲げ試験は各等級ごとに縦使いと平使いについて行った。その結果、ラミナの曲げ試験において縦使いした場合には、平使いした場合よりも曲げヤング係数が高くなる傾向が認められた。
 現行の集成材の日本農林規格による、集成材1級の曲げに関する強度性能を満足するには、グレーディングマシンにより選別した、曲げヤング係数90(×103kgf/cm2)未満のラミナではやや不満足であった。
 積層数に関しては、2プライの平使いでは強度は不安定であったが、それ以外すなわち、2プライ縦使い、3、4プライ平使い、縦使いでは比較的良好な結果であった。

 

 

圧縮法による難浸透性木材への液体注入(第4報)
水と温度の影響

酒井温子

 難浸透性木材への薬剤注入量を増加させるために、注入操作前に木材を横方向に圧縮させることを試みている。今回は、圧縮時、注入時および注入後の、水と温度の影響について検討を行った。得られた結果は以下の通りである。
1)含水率が低い材は、圧縮処理に高い加圧力が必要であるが、加圧注入処理により高い注入量が得られ、注入操作後に残留する変形も少ない。
2)含水率が高い材は、含水率が低い材に比べて、圧縮処理に必要な加圧力はやや少ないが、加圧注入量はやや少なく、注入操作後に残留する変形もやや多い。
3)加湿・加熱状態の木材は、圧縮処理に必要な加圧力は低いが、加圧注入処理でも煮沸処理でも高い注入量が得られないので、本方法には適さない。
4)いずれの状態の木材を圧縮処理した場合でも、注入操作として加圧注入処理を行うよりも煮沸処理を行う方が、圧縮変形の回復は大きかったが、注入量は少なかった。
これらの現象は、2つの要因によって説明が可能である。1つは、注入量と壁孔の破壊の間には密接な関係があること、もう1つは、圧縮変形と変形の回復が、材の軟化状態に影響されることである。すなわち、軟化していない材は、圧縮処理に高い加圧力が必要であるが、細胞壁中で最も弱い部分である壁孔の破壊が起こりやすい。また加圧注入処理では、材内部との圧力差により壁孔の破壊が起こる。したがって、高い注入量を得るためには、軟化状態の低い乾燥材を圧縮することと、注入操作として加圧注入をおこなうことが有効である。また、加圧注入後に残留する変形は、水と熱によりさらに回復するので、様々な使用環境を考えると、注入操作後に後処理として水熱処理を行い、材を軟化させることで、あらかじめ変形をできる限り回復させておくことが望ましい。

 

 

グリオキザール系樹脂処理材の強度性能(第2報)
DPGの混合比と処理材の強度性能について

伊藤貴文

 グリオキザール樹脂(ジヒドロキシジメチロールエチレン尿素)単独で処理した木材の強度性能については既に報告したが、本報では、処理材の寸法安定性能、耐熱水性能などの改善に顕著な効果が認められた樹脂へのDGP(ジプロピレングリコール)の混合が処理材の強度性能に及ぼす影響について検討した。
 二方柾目木取りの気乾状態のヒノキおよびスギ辺材試験片を、種々の混合比(樹脂/DPG)、濃度に調整した薬液で処理した後、JIS Z 2101に準拠して、曲げ試験および圧縮試験を実施した。得られた結果は、次のとおりであった。
(1)DPGの混合比が増加するに従って、曲げヤング係数は低下した。樹脂/DPG=40/60では、処理液の濃度(重量増加率)に関係なく、曲げヤング係数の改善はほとんど認められなかった。
(2)曲げ強さは、DPGの混合比に関係なくほぼ一定で、曲げ比例限度は混合比が40/60の試料で若干低下した。一方、DPGの混合比によって、試験片の破壊形態に差が認められ、混合比の増加とともに比例限度内で、荷重点下において分断される破壊形態を示す割合が減少し、せん断破壊形態を示す割合が増加した。
(3)圧縮性能は、DPGの混合比が増加するに従って低下した。しかし、低濃度(9.0%)の処理に限ると、DPGを混合することによって、圧縮性能の向上が認められた。
(4)これら、DPGの混合による強度性能の変化は、バルキング率の変化と遊離のDPGによるところが大きいと考えられた。
(5)反応温度を下げることによって、曲げ強さおよび曲げ比例限度は上昇した。破壊形態の変化も顕著で、反応温度の低下と共に荷重点下で分断される脆性的な破壊は認められなくなり、最大たわみ量は増加した。一方、圧縮強さは反応温度の低下と共に低下した。これら一連の現象は、木材中で生成するポリマーの構造が反応温度によって変化することによると考えられた。.

 

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