渡辺和夫
ヒラタケのビン栽培における子実体収量を高めるため、キャップの通気性と培養期間中の湿度条件の影響を調べた。
(1)通気性の大きいキャップを用いると、培地内の酸素濃度は高く維持され、培地の分解が促進されて菌糸体量は増大した。しかし、培地表層部の含水率の上昇は抑制された。
(2)子実体の発生量は培養過程における培地表層部の含水率の増加および培地重量減少率とそれぞれ有意な正および負の相関を示した。
(3)湿度を定めた栽培室で蒸留水を満たしたビンからキャップを通した蒸発量を測り、子実体発生量と比較すると、蒸発量が4gを越える湿度条件では、培地表層部の含水率は低下し、子実体発生量も低下した。
以上の結果から、子実体の発生箇所が培地表層部に限定されるビン栽培では、この部分の乾燥をできる限り抑制して菌糸体量を増大することが子実体の効率的な生産につながると考えられた。また、培養期間中のビンからの蒸発量は、培養室の湿度条件を表す有効な方法と考えられた。
河合昌孝
土壌培地に培養したホンシメジ菌糸体を、アカマツ林地に埋設することにより、シロの形成、子実体原基および幼子実体の形成を確認した。シロから分離しPDAプレート上で培養した菌叢は接種菌株のそれと酷似していること、シロが接種源直上部に形成されていたこと、対峙培養で帯線ができなかったことなどの結果により、菌根形成とシロ形成は接種した菌株によるものと考えられた。菌根を顕微鏡観察したところ、菌糸が表層に侵入し、ハルティヒネットが形成されていた。しかし、中心柱におけるデンプン粒の蓄積は確認できなかった。
田中正臣・藤平拓志・小畠 靖
スギ人工林内における立木密度の異なる、疎植区と密植区の調査区を設定し、「径級のそろった通直で完満な材を多く生産する保育形式」という視点から林齢12と18、23年時に調査を行い、成長と形質の推移について比較・検討した。その結果は、以下のとおりである。
(1)平均胸高直径と定期平均直径生長量は常に疎植区の方が密植区より大きかった。また、密植区では、直径・樹高に優劣がおこりやすく、個体間競争は密植区の方が強かった。
(2)haあたりの幹材積と収量比数は常に密植区で大きかったが、林齢が高くなるにつれて疎植区との差は縮まった。
(3)平均最大矢高は疎植区の方が大きく、疎植区の幹曲がりの回復は困難であると考えられた。
(4)地上高5.3mの平均直径率は、12年時で密植区の方が疎植区より大きかったが、23年時で差はなくなった。この原因は枝打ち効果とその後の直径成長によると考えられた。
(5)各調査区において、胸高直径が中径級(モード)以上かつ形状比が90以上の立木は密植区に多く存在し、冠雪害のおこりやすい林分となる傾向がみられた。
以上のことから径級が均一で通直・完満な材を多く生産するには、密植が有利であると考えられた。
小野広治・寺西康浩・沖中玲子・久保 健
蒸気加熱式によるスギ柱材の熱気乾燥試験を実施してその乾燥性について検討した。
仕上がり含水率は初期含水率に左右され、初期含水率が高い材の仕上がり含水率は高くなった。したがって、初期含水率に大きなばらつきがある場合には仕上がり含水率のばらつきも大きくなり、被乾燥材全体を一定の乾燥時間で同程度の仕上がり含水率に乾燥することは困難であった。
したがって、仕上がり含水率のばらつきを小さくするためには、初期含水率のばらつきを小さくする必要があり、そのためには、乾燥前に重量区分等の方法で初期含水率別に柱材を選別して乾燥する必要性が認められた。
また、乾燥基準の違いによる寸法変化の差異を検討するため、種々の仕上がり含水率の材を修正挽きして、1年間室内に放置して、含水率と収縮率の変化を測定した。その結果、日本農林規格の乾燥基準に示される15%、20%、25%と基準外の50%の各材の放置中の収縮率の変化は、乾燥基準に比例して小さくなった。また、含水率の低下にともなう収縮率の変化量は、平均収縮率から計算した収縮率よりも小さく、仕上がり含水率が高い場合でも、いったん乾燥処理された材の寸法変化は生材からのそれに比較して小さいと考えられた。