研究報告No.31(要旨)

強度枝打ちと夏期の相互作用によって引き起こされるヒノキの枯死

上田正文・隅 孝紀・天野孝之

 強度に枝打ちを実施したヒノキ林分において、1991年秋に集団枯死が発生した。この原因を明らかにする目的で、異なる年に強度の枝打ちを実施したヒノキ5林分において、枝打ち実施年、枝打ち強度(枝打ち長率)および枯死率を調査した。さらに1991年から過去5年間における夏期の降水量を調査した。その結果、枯死率は、枝打ち長率の増加にともなって増加する傾向を示した。また1991年夏期は、過去5年間で最も乾燥していたことが明らかになった。したがって、ヒノキの枯死は強度枝打ちと夏期乾燥の相互作用によって引き起こされたと考察された。

 

 

組織培養由来の鱗茎を用いたササユリの林地栽培化試験
ヒノキ幼齢林における生育段階の推移

田中正臣・天野孝之

 林地を利用したササユリの栽培化を目的に、鱗片培養によって増殖した鱗茎をヒノキ幼齢林に植栽し、その後3年間、ササユリの生育段階の推移について調査した。着花率は年々増加し、また複輪咲きする鱗茎も植栽後3年目から出現し、ヒノキ幼齢林でのササユリ栽培が可能であることがわかった。一方、未出葉となった鱗茎も年々増加する傾向が見られた。未出葉の原因は、球根の消滅や地上部の食害・枯損も考えられるが、休眠によるところが大きいことが確認された。ササユリが成育するのに良い環境へ植栽された鱗茎は、肥大し着花の方向へ成育段階が推移するが、成育環境が悪化すると休眠不発芽となり、消滅していくものと考えられた。

 

 

表面処理金属を用いた接着接合によるスギ合せばり簡易工法(CLCS工法:Coupled Lumber Construction with Surface-treated Steel)の開発(第1報)
合わせばり接合部の引張および曲げ強さ

和田 博・満名香織・増田勝則・河崎英治・石谷和之

 小径材を利用するために、幅10cm、厚さ3cmの板材2枚をペアーにして柱または梁の部材とし、それらの接合部には表面処理した鋼板(Z-S処理鋼)を挿入・接着する簡易な工法を開発し、CLCS工法(Coupled Lumber Construction with Surface-treated Steel)と呼ぶことにした。
 接合部の強度を調べるためにスギ板材2枚の間に、長さ方向の両側から幅10cm、厚さ9mm、長さ50cmのZ-S処理鋼をそれぞれ10cm挿入し、ウレタン樹脂系接着剤を用いて接着した後、2面引張せん断試験を行った。接着時にはボルトを用いた簡易な圧締によるものであったにも拘わらず、30kgf/cm2以上の接着強さが得られ、実用に十分耐えられることがわかった。また、長さ120cmスギ板材2枚をそれぞれ60cmずつに切断し、厚さ3.2mmのZ-S処理鋼により再び接着・接合し、スパン100cmで曲げ試験を行った。その結果、接合部を有しない材と比較して、長さ10cmの鋼板で接合した場合には曲げヤング係数、曲げ強さともに低かったが、長さ20cmの鋼板で接合した試験体は、曲げヤング係数はほぼ同等で曲げ強さは約70%であった。

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