聖徳太子ゆかり地ファイル

県民だより奈良
2021年10月号

はじめての万葉集
【vol.3】
平群町
聖徳太子の名脇役
 聖徳太子には、名脇役というべき頼れる臣下たちがいました。太子前半生の一大事件である、物部守屋の討伐において活躍した舎人(とねり)・跡見赤梼(とみのいちい)もその一人です。
 『日本書紀』にみえる赤梼は、仏教受容を進める蘇我馬子の意を受けて、排仏派の豪族・中臣勝海(なかとみのかつみ)を手にかけるなど、懐刀のような役回りで描かれています。
 河内国における守屋との最終決戦で、大木の上から矢を射かけてくる守屋に太子軍は苦戦します。このとき、樹上の守屋を射落とす起死回生の一矢を放ったのが赤梼でした。戦後、赤梼は論功行賞として田地一万代(しろ)(約十四町)を賜っています。
 そんな赤梼ゆかりの寺が、平群町椿井の椿井春日神社周辺にありました。椿井寺(つばいでら)と呼ばれ、江戸時代の地誌『大和名勝志(やまとめいしょうし)』には、守屋討伐の折、戦勝の暁に十一面観音の造立と伽藍の建立を誓った赤梼によって、推古天皇2(594)年に創建されたとあります。
 明治時代の神仏分離の際に廃寺となり、建物は残っていませんが、江戸時代の絵図には、春日神社の境内に観音堂、境内南方に南之坊が描かれており、往時の姿を偲(しの)ぶことができます。また、椿井寺でまつられていた仏像は、現在も地元で大切に守り伝えられています(非公開)。さらに、南之坊跡近くにある椿井井戸は、江戸時代に大和国三十三所観音巡礼寺院となった椿井寺の御詠歌(ごえいか)(「いさぎよきつはひ(椿井)の水をむすびてハ五よく(欲)のあか(垢)をすすぐ成けり」)に詠みこまれ、今でもこんこんと水が湧き出しています。
椿井寺旧蔵十一面観音菩薩立像〔室町時代 個人蔵〕
椿井寺旧蔵十一面観音菩薩立像〔室町時代 個人蔵〕
大和名勝志(部分)〔江戸時代 県立図書情報館寄託〕
大和名勝志(部分)〔江戸時代 県立図書情報館寄託〕
椿井春日神社付近絵図〔江戸時代 平群町立図書館蔵〕
椿井春日神社付近絵図〔江戸時代 平群町立図書館蔵〕
椿井春日神社
 椿井春日神社は大字椿井の鎮守社です。境内には、江戸時代の絵図に「観音山」としてみえる宮山塚古墳(県指定史跡、五世紀後半)があります。
 また、境内南方の椿井井戸脇にある「椿井」の石碑は、文政4(1821)年、椿井村周辺に領地があった楽人(がくにん)(雅楽演奏者)たちによって建てられたものです。
椿井春日神社
椿井春日神社本殿
椿井春日神社
椿井井戸
椿井春日神社地図
平群町経済建設課
電話 0745-45-1017
FAX 0745-45-0211
「芸能絵巻~和の心と美を世界に」
日本の芸能の源泉地である奈良。その源泉を拓いた聖徳太子。2021年に聖徳太子没後1400年を迎えるにあたり、世界遺産法隆寺を舞台に、千年の時を超えて現在に受け継がれる古代芸能の姿とともに、その後日本に開花した芸能の躍動を世界に発信するイベントを開催!詳しくは下記HPへ。
11月6日(土)・7日(日) ※要事前申込
法隆寺中門特設会場(斑鳩町)
芸能絵巻事務局(ラオックス・メディアソリューションズ(株)内)
電話 03-6912-0945(平日10時~18時)
URL www.laox-mediasoln.co.jp/events/wanokokoro
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