令和4年3月2日 知事定例記者会見

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オミクロン株の特性と現在の感染状況に対応した奈良県医療提供体制の再構築(経過報告)  

令和4年3月2日 知事定例記者会見

 

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 奈良県では、ウイルスの特性と感染状況を踏まえ、それに 対応できる医療提供体制の再構築に向けて、医療関係者と検討を重ねてきました。 県では、課題を抽出し、4つの検討チームを設置して、検討を開始しました。

検討体制

 本日は、特に喫緊の課題として医療関係者と認識を共有した以下の事項について、これまでの取組と検討の成果をご報告します。

1救急搬送困難事案が増加しているとの意見について

2死亡者が増加しているとの意見について

3医療機関相互の連携を推進することについて

4宿泊療養施設の利用が少ないことについて

5市町村による生活支援体制について

6自宅待機者・療養者への連絡・支援体制を強化することについて

新型コロナウイルス感染者の状況

図表

新型コロナウイルス療養者の状況

図表

奈良県における重症化率の推移

図表

奈良県における死亡率の推移

図表

 

(1)救急搬送困難事案の分析救急搬送困難事案の分析

 

   令和4年1月以降、救急隊が、患者の受入可能な医療機関を確保するまでに時間を要した「救急搬送困難事案(※1)」が 増加 しています 。

 

 

奈良県における救急搬送件数と救急搬送困難事案数、新型コロナ新規感染者数の推移

   新型コロナ対応病院における令和3年度(R3.12.27.~R4.2.13)の救急搬送件数は、約7,600 件で、新型コロナ前(令和元年度)の同時期とほぼ同数です。

 

 

救急搬送件数
   一方で、新型コロナ対応病院の令和3年度の応需率は63%で、新型コロナ前の77%から、14ポイント低下しています。

 

 

応需率

   感染が急拡大した、令和3年12月27日(月)から令和4年2月13日(日)の間の、救急搬送困難事案件数(*)は518件で、その内訳は37.5度以上の発熱があった患者にかかるもの173件(全体の33%)その他の患者にかかるものが345件(全体の67%)でした。
*救急搬送困難事案とは、救急隊による「医療機関への受入れ照会回数4回以上」かつ「現場滞在時間30分以上」の事案

 

 

救急搬送困難事案の内訳

   令和3年12月27日(月)から令和4年2月13日(日)の間の救急搬送困難事案を症状別に分類すると、中等・軽症が9割近くを占めています。
新型コロナ前(令和元年度)の同時期と比べると、救急搬送困難事案の件数は増加していますが、割合に大きな変化はありません。

 

 

救急搬送困難事案の症状別内訳

   令和3年12月27日(月)から令和4年2月13日(日)の間の、全救急搬送(8,657件)の受入状況は、新型コロナ対応病院(*)での受入が88%、その他の救急病院等での受入が12%で、新型コロナ対応病院が中心となって救急医療を担っています。
新型コロナ前(令和元年度)の同時期と比べて大きな変化はありません。
*新型コロナの感染が判明した患者の入院を受け入れる29病院及び新型コロナの感染が疑われる患者の救急搬送に対応する7病院

 

 

救急搬送件数の内訳

   一方で、救急搬送の受入要請に対して、病院が受入困難と回答(全5,194回)したのは、新型コロナ対応病院(*)が84%、その他の救急病院等が16%となっています。
*新型コロナの感染が判明した患者の入院を受け入れる29病院及び新型コロナの感染が疑われる患者の救急搬送に対応する7病院

 

 

受入困難の回答内訳

 

   新型コロナ対応病院の12%の病床(974床)が、休止しています。

 

 

 

新型コロナ対応病院とその他の救急病院の病床の状況

  36の新型コロナ対応病院のうち、19の新型コロナ対応病院で院内感染(疑いを含む)が発生しました。

 

 

図表

 

 

救急搬送困難事案の増加は、新型コロナ対応病院において、新型コロナ対応に人的資源が集中していることや、一部病床の休止により、救急受入体制がひっ迫していることが要因と推察されます。

また、令和3年12月27日(月)から令和4年2月13日(日)の間には、36の新型コロナ対応病院(*)のうち、19の新型コロナ対応病院で院内感染(疑いを含む)が発生し、救急受入を一時休止せざるを得ない状況になったこと等も要因の一つと考えられます。

*新型コロナの感染が判明した患者の入院を受け入れる29病院及び新型コロナの感染が疑われる患者の救急搬送に対応する7病院

 

 

 

(2)救急搬送困難事案への対策

 

1県ホームページ等で、救急車の適正利用と電話相談(新型コロナ・発熱患者受診相談窓口、奈良県救急安心センター#7119)の活用を呼びかけ

2救急受入の状況や受入不可の理由を、救急受入病院ごとに確認し、受入実績の少ない救急受入病院に対して、受け入れを要請

3新型コロナ患者に限らず、すべての救急患者について、症状が軽快した場合に、後方支援病院で受け入れる後方連携を進めるとともに、新型コロナ患者について、宿泊療養施設が新型コロナ対応病床の後方支援施設となりうるかの検討を進め、新型コロナ対応病院の空き病床を確保

4院内感染による救急受入の一時休止等を防ぐため、医療機関に対して感染対策の徹底を呼び掛けるとともに、感染対策に有効な情報を提供

 

県ホームページ掲載コメント

 

新型コロナへの対応のため、現在、救急受入が可能な病院の空き病床が少なくなっており、救急車を要請(119番)しても、搬送先の医療機関が決まるまでに、時間が必要な事案が発生しています。

発熱などの症状がある方や、新型コロナ感染に不安のある方は、まずは、身近な医療機関に電話相談してください。身近な医療機関がない方は、新型コロナ・発熱患者受診相談窓口(0742-27-1132)に電話相談してください。

発熱などの新型コロナが疑われる症状がない方で、救急車を呼ぶべきかどうかを迷っておられる方は、奈良県救急安心センター(#7119)へ電話で相談してください。

症状が重く、すぐに救急車が必要な場合は、119番通報してください。

 

(1)奈良県の全死亡者数

 

   奈良県の全死亡者数は、増加傾向にあります。

 

 

図表

 

(2)コロナ死亡者の定義

 

   統計上のコロナ死亡者とは、新型コロナウイルス感染症の陽性者であって、入院中や療養中に亡くなった方をいいます。
これには、直接の死因が新型コロナウイルス感染症と認められなかった方も含まれています。

 

 

 

(3)統計上コロナ死亡者に含まれている人の死因

 

  医師の診断で直接の死因が新型コロナ感染症と認められた方は、コロナ死亡者とされている方のうち、6割弱です。

 

 

図表

 

(4) 統計上コロナ死亡者に含まれている人の年代

 

  お亡くなりになった方の9割以上が70歳以上です。

 

 

図表

 

(5)統計上コロナ死亡者に含まれている人の死因

 

  お亡くなりになった方のうち、7割が基礎疾患のあった方です。

 

 

図表

 

 

 

取組を進める項目(1)

   後方支援病院での、新型コロナ症状軽快患者の受入拡大の検討

 

 

 

検討を要する課題

   新型コロナ対応病院の負担軽減のため、後方支援病院に新型コロナ軽快患者の転院を促すための連携体制を構築する必要があります。

 

 

 

県の取組

 

 【これまでの取組】

・後方支援病院の増加を図るため、県、関係団体が協働で医療機関に働きかけています。

 3月1日現在1病院増え、48病院で対応

 

【さらに拡充する取組】

・転院受入件数と具体的な転院困難事例を把握し、県、関係団体が協働で解決策を検討します。

・関係団体を通じて、各病院に新型コロナの退院基準を満たした患者の転院困難事例の有無とその具体的な内容の報告を求めます。

 

 

 

 

取組を進める項目(2)

   分娩を取り扱う全ての新型コロナ対応病院で妊婦を受け入れ

 

 

 

検討を要する課題

   感染者の急増により、新型コロナに感染された妊婦の受入体制を検討する必要があると考えています。

 

 

 

県の取組

 

【これまでの取組】

・新型コロナに感染された妊婦に対応できる病院(2病院)に加え、受入病院の増加を図るため、2病院以外の病院にも、県、関係団体が協働で働きかけています。

 3月1日現在3病院増え、5病院で受入可能

 

【さらに拡充する取組】

・妊婦の状態に応じて、自宅療養も含めた療養方針について医療関係者と検討します。

 

 

 

 

取組を進める項目(3)

   透析治療を行う全ての新型コロナ対応病院で患者を受け入れ

 

 

 

検討を要する課題

   感染者の急増により、新型コロナに感染された透析治療が必要な方の受入体制を検討する必要があると考えています。

 

 

 

県の取組

 

【これまでの取組】

・新型コロナに感染された透析患者に対応できる病院(6病院)に加えて、自宅待機者の外来透析を実施しています。

・新型コロナの症状が軽く自宅で入院をお待ちいただいている方をはじめとして、多くの透析患者を受け入れていただくよう、県、関係団体が協働で医療機関に働きかけています。

 

【さらに拡充する取組】

・受入医療機関の増加に向けて、丁寧に医療機関と協議を進めます。

 

 

 

 

取組を進める項目(4)

   病床のひっ迫への対応策を検討するため、関係機関に協力を依頼

 

 

 

検討を要する課題

   在院日数の短縮を図り、病床の回転をあげる、院内の病床管理体制を構築して運用する、地域の連携病院と協力して紹介患者の受入調整を行うなど、病床稼働についての工夫を行う必要があります。

 

 

 

県の取組

 

【これまでの取組】

・新型コロナ患者受入病床の更なる確保について、県、関係団体が協働で医療機関に働きかけています。

 3月1日現在新型コロナ対応病床を新たに2床追加し、511床を確保

 

【さらに拡充する取組】

・医療機関に新型コロナの退院基準を満たした患者の転院困難事例の有無とその具体的な内容について報告を求めます。

 

 

 

取組を進める項目(5)

   軽症または無症状の新型コロナ感染者の基礎疾患重症化防止策を検討するため、関係機関へ協力を依頼

 

 

 

検討を要する課題

   新型コロナの症状が軽症や無症状の方でも、基礎疾患の重症化等により、対処が必要な患者が多くなっています。

 

 

 

県の取組

 

【これまでの取組】

・新型コロナに対応していない病院を含め、基礎疾患のある方の重症化防止を図るための入院促進を、県、関係団体が協働で医療機関に働きかけています。

・新型コロナの重症化予防のため、医療機関で中和抗体薬や経口治療薬の投与ができる体制を整えています。

・以上のほか、感染者以外の重症化予防を図るため、ワクチン3回目接種を加速化しています。具体的には、市町村の集団接種会場への医師派遣、広域接種会場2か所(奈良市、大和高田市)の設置などを実施しています。

 

【これからの取組】

・往診により、宿泊療養施設で中和抗体薬や経口治療薬を投与します。

 

 

 

取組を進める項目(6)

   新型コロナの感染が疑われる患者に対する診療・検査が可能な医療機関を順次拡充するため、関係機関に協力を依頼

 

 

 

検討を要する課題

   発熱外来認定医療機関の拡充が必要です。

 

 

 

県の取組

 

【これまでの取組】

・疑い患者への診療・検査が可能な医療機関の更なる増加を図るため、県、関係団体が協働で医療機関に働きかけています。

 3月1日現在13医療機関増え、410医療機関で診療・検査が可能

・一部の医療機関は、県のホームページで名称を公表しています。

 

【さらに拡充する取組】

・診療・検査を希望される県民がスムーズに受診できるよう、今後、新たに診療に対応していただける医療機関についても、県ホームページなどで速やかに医療機関名を公開します。

 

 

 

取組を進める項目(7)

   より多くの医療機関に、往診、電話等での診療への協力を依頼

 

 

 

検討を要する課題

   自宅待機者・療養者の健康管理、重症化予防と医療提供の確保が必要です。

 

 

 

県の取組

 

【これまでの取組】

・往診や電話等での診療を行う医療機関の更なる拡充を図るため、県、関係団体が協働で医療機関に働きかけています。

 3月1日現在10医療機関増え、265医療機関で実施

 

【さらに拡充する取組】

・往診や電話等での診療は、かかりつけ患者だけに留まらず、初診患者も含め、広く受診機会を確保していただくよう医療機関に依頼します。

 

 

 

 

 

 

 

(1)宿泊療養施設で医療提供を充実させ、コロナ病床の後方支援施設として利用を進める考え方についての対応策の検討

 

   現在は、重症化率が低い一方で、感染力が強いオミクロン株の特徴を踏まえ、以下のコロナ軽症者に優先入所していただいています。
・基礎疾患による重症化リスクが高い感染者
・本人以外の家族が感染しておらず、家庭内感染抑止のため隔離が必要な感染者 等

 

 

 

   宿泊療養施設では、受け入れ患者の健康観察、重症化予防、体調悪化時の酸素投与、体調急変時の対応をしてきています。

 

 

 

 <宿泊療養施設で実施してきたこと>

・医師・看護師が、電話により診察、健康観察

・施設に常駐する看護師が、1日に2回(朝・夜)、電話で健康状態を確認し、医師と情報を共有

・体調悪化時には酸素を投与
 <実績> R3.8.11~R4.2.28  全施設計 28 回

・医療機関への救急受入依頼など、体調急変(悪化)時の対応を適切に実施

 

   宿泊療養施設では、医師は定期訪問とオンコール対応により、看護師は常駐して、必要な対応をしていただいています。

 

 

宿泊療養施設での医師の業務内容

 

   入所者を宿泊療養施設から病院に搬送し、中和抗体薬を投与しています。

 

 

図表

 

   一方、新型コロナ病床で手間を要する、介護が必要な新型コロナ感染者、認知症患者で新型コロナ感染者の方々を、宿泊療養施設で受け入れ可能かどうかを、医療関係者、介護関係者と協議しました。

 

 

図表

 

 

 【医療関係者、介護関係者との協議結果 】

・ 県内の宿泊療養施設は、ビジネスホテルを転用した個室がほとんどであり、要介護者に対する介護、認知症患者への対応には限界があり、入所者のQOLの低下も懸念される。

・ 入所者のいるレッドゾーンで活動する介護スタッフの確保は困難。

・ そのため、医療スタッフの支援を得ながら、施設・在宅で療養する方が望ましい。

 

 

(2)宿泊療養施設で可能な医療提供を実行するとともに、重症化予防を徹底

 

 

 新たに宿泊療養施設において、中和抗体薬の投与、経口治療薬の投与を行います。

【奈良県病院協会とマニュアル等の詳細を調整後、3月中旬から実施 】

 

 

図表

 

 

 これまでの電話よる診察・健康観察だけでなく、携帯電話の画像送信による入所者の容体の見える化を行い、診察・観察を強化します。

 

 

図表

 

 

 これまでの1日2回の電話での健康状態確認だけでなく、入所者の体調、精神状況も踏まえ、適宜電話回数を増やして微妙な変化も的確に把握し、適時・適切に対応することにより、重症化を防ぎます。

 

 

 

 

(3)要介護者、認知症患者への対応

 

 

○これまで限られた病院で受け入れていた認知症患者を、全ての新型コロナ対応病院(29病院)で2月下旬から入院可能としています。

○ 要介護者・認知症患者への対応として、医療・介護の両面から施設・在宅での療養を支援しています。


<医療>奈良県医師会、奈良県病院協会との連携により、施設・在宅療養を支援

・ 高齢者施設の施設医等により、症状悪化時の診察、重症化リスクのある患者に対する中和抗体薬の点滴、内服薬の処方を実施
・ 地域のかかりつけ医による往診、中和抗体薬の点滴、内服薬の処方を実施

 

<介護>介護施設、訪問介護の事業者が、県による研修等を踏まえ、感染対策に配意しながら安全・適切な介護を実施

 

 

 

 

 

 

これまでは、県から市町村の窓口紹介し 、感染されたご本人が市町村に申し出ることにより、市町村の生活支援につなげてきました。
市町村に聞き取りした結果、令和4 年 1 月 1 日~ 2 月 20 日の間で約 4,000 件の生活支援の実績があります。

市町村による生活支援等実施状況

 

今後は、自宅待機者・療養者への連絡・支援体制を強化し、生活支援の希望を聴取した上で、本人の承諾が得られた場合にその旨を市町村に伝達します。

 

 

(1)保健所の応援態勢の強化

県庁内各部局からの応援職員も投入し、郡山・中和・吉野各保健所において、発生届受理後、入院・入所調整が必要な方から順次連絡し、調査事項の聴取、必要な連絡事項の伝達を実施

応援職員の人数

 

   感染者が急増し、最初の連絡までに時間を要する方が発生していました。

 

 

 

(2)陽性者からの各種相談への対応
陽性者からの各種相談に対し、日中は保健所、夜間(17:15 ~翌 8:30) は委託業者の窓口で対応

 

   日中、保健所に電話がつながりにくい状況が発生していました。

 

 

 

これまでの保健所の体制

 

図表

 

(3)3月中旬を目途 に、民間委託を活用した自宅待機者・療養者への 新たな連絡体制を構築します

図表