2022年6月号
|
|
vol.26
東佐味(ひがしさび)の六斎念仏
御所市東佐味で古くから行われてきた伝統行事です。
東佐味六斎講の皆さんにお話を伺いました。
撮影:野本暉房
御所市 東佐味
東佐味の六斎念仏とは
元々六斎念仏は、仏教において在家(出家せず、日常生活の中で仏教を信仰すること)の信者が戒律を守るため、月に6回念仏を唱える行事でした。それがいつの頃からか盆や葬式に、死者の供養のため行われるようになり、現在の六斎念仏が形作られました。
東佐味にはシヘン・ハクマイ・バンド・シンバクマイ・シンコロ・ソオロシの6曲が伝わっており、念仏鉦(ねんぶつがね)を用いた複雑な旋律と全て演奏すると約3時間にもなる長さが特徴です。かつて六斎念仏は多くの地域で伝承されていましたが、昭和30年頃までにはほとんどが途絶え、県内で伝わっているのは東佐味を含む3ヵ所のみとなりました。
地域に根差した伝統行事
東佐味では葬式以外にも盆行事や彼岸といった地域の行事の中で六斎念仏が唱えられていました。中でも最大の行事は8月の盆の「棚経(たなぎょう)参り」です。講員(東佐味の住民で結成された六斎念仏を唱える講のメンバー)は2つの組に分かれ、地区内の檀家や依頼のあった他地区の家を回り念仏を唱えます。
昭和58年に県無形民俗文化財に指定された際、講員は8人いました。しかし高齢化の影響で人数が減少し、伝承者が1人となってからは活動が困難となり、平成3年の盆を最後に行事が休止していました。
念仏鉦と撞木(しゅもく)
奇跡の復活
この状況に危機感を覚えた研究者や文化財関係者などが集まり、令和2年3月に六斎講を再結成しました。最後の伝承者である田中宗治さんから生前伺ったお話や実際に披露していただいた演唱、そして古くより残された録音テープを基に聴き真似から始めました。コロナの影響により皆で集まるのが難しいため、節回しの音高やタイミングを合わせるためにオンライン合奏ツールを利用しています。6曲の中で比較的短い「ハクマイ」の前半部分を選んで練習を重ね、ついに令和3年8月20日、東佐味の弥勒寺の行事で、30年ぶりに六斎念仏を行いました。同日、境内にある田中さんの墓前でも念仏を唱えました。
現在は他演目も唱えられるよう日々練習に励んでいます。また新たな担い手を増やすべく、デジタル教材やパンフレットの作成を行っています。六斎念仏は地域と深く結びついた行事なので、真の復活には地域住民の参加・協力が不可欠です。そのため今後は地域住民も含め、さまざまな人に関心を持ってもらえるよう情報発信や地域行事への参加なども積極的に行っていきたいと思います。
左から弥勒寺金森住職と講員の
相田さん・田鍬さん・出口さん
問
|
無形民俗文化財については、県文化財保存課 |
電話
|
0742-27-8124 |
FAX
|
0742-27-5386 |