リニューアルオープンされた水平社博物館を訪れた。その中に「エピローグ:ことばの『美術館』」というコーナーがある。白い壁に囲まれた空間に、額縁のようなモニターや投影がいくつもあって、そこに一定時間ごとに次々とメッセージが現れる。世界中の作家や詩人などの著作物などからの引用や、身近で大切な人の言葉など出典はいろいろだが、読んでいると、時空を越えてその人が語りかける声や表情までが伝わってくるような気持ちになる。 その中に、ひときわハッとするメッセージがあった。「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ。」フランスの作家サン=テグジュペリの『星の王子さま』の一節だ。この言葉を見て、私はこれまで出会った多くの人たちや自分の人生に思いを巡らせた。年齢・性別や外見、出身地、仕事といった属性だけでなく、その人がどのようなことに喜怒哀楽を感じてこれまで生きてきたのか。それら「目に見えない」全てのことを思い、人に向き合うことができれば、それが「人間を尊敬する」ということなのではないか。そう問われているような気がした。
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